名馬であれば馬のうち

読書、映画、ゲーム、その他。


読書、映画、その他。


2015-01-01から1年間の記事一覧

NETFLIX 限定ドキュメンタリー、アニメ、特番: 『FはFamilyのF』、『The Propaganda Game』、『ビル・マーレイ:クリスマス』

『FはFamilyのF (F is for Family)』 F is for Family - Main Trailer - Netflix [HD] 一話と二話だけ。七十年代*1のアメリカ郊外の五人家族マーフィー一家を描いたコメディアニメ。 パパのフランク(声ビル・バー)は頑固な父権主義的男性で、家では子ども…

No country for Any man――『ビースト・オブ・ノー・ネイション』

原題: Beats of No Nation 監督: キャリー・ジョージ・フクナガ 製作年・国: 2015・米 NETFLIX 製作映画第一弾。 そのまま映画でも使われた原作小説のタイトルの元ネタは、アフロ・ビートのパイオニア、フェラ・クティが一九八九年に発表したアルバム『Beast…

一部機能移行のおしらせ

雑な記事のせいで新刊チェックリストの使い勝手がクソ悪くなったので、ここは新刊チェックリストオンリー用にして、感想文とかそのようなものは今後はてなブログのほうで書くようにします。 http://proxia.hateblo.jp あと十二月は時間ないので十二月分の新…

「不可能」をいつから日本人が使っていたかということに関して

僕は明治大正の本を日々読み漁ってるすごい人ではないので、以下はすべてインターネットで調べたことです。 江戸期 「不可能」という組み合わせ自体は漢籍を輸入する過程で江戸時代にはもう日本人の目に触れていたらしく*1、日本人儒学者の山井崑崙(鼎)が…

シャマラン『ヴィジット』について

『エクソシスト』が(スティーヴン・キング曰く)「親から見た子どもの異物感」なら、『ヴィジット』は「孫から見た曾祖母世代の異物感」だったのかな。

野球で学ぶ『ギリシャ棺』的問題

探偵のほうのエラリー・クイーンの生年は『最後の一撃』に「一九〇五年」とはっきり記述されていて、斯界の議論もおおむねこれに沿っている。かたや、「一九〇五年」説に疑義を呈して新説を築きあげたすごいヒトもネットには存在するわけだけれど、とりあえ…

ミステリについて書かれた評論はミステリのように読まれると良い――門井慶喜『マジカル・ヒストリー・ツアー』

精緻化されていないものについて好き勝手言うのが好きなので、基本的に評論や批評について語る言葉を持っていません。つけくわえておくと、基本を疎かにしがちな人間でもある。困ったものです。 マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代作者:…

2015年11月の新刊チェック

あけましておめでとうございます。 ミシェル・レリスは12月末に延期の模様。ウルフの『ナイト』も今月です。 [from 藤原編集室] エマニュエル・キャレール 『リモノフ』*1中央公論新社 ジーン・ウルフ 『ナイト Ⅰ・Ⅱ』国書刊行会 『シュメール神話集成』ちく…

時代小説のホワイダニット

「剣術者 佐々道休」について 五味康祐という時代小説家がいて、その人に「剣術者佐々道休」という短編があります。 その昔、加賀前田藩に冨田蔵人高定*1という音に聞こえた剣術名人がおりまして、内膳こと佐々道休はその養子です。 父の衣鉢を継いで大阪夏…

『秋津』の各話扉絵の元ネタ。

とってもおもしろいギャグ漫画(雑な紹介)『秋津』が完結してしまいましたね。 供養代わりに各話の扉絵の元ネタ(映画ポスター)を当てるゲームでもしようと思います。 追記: コメント欄の皆様による迅速かつあたたかいご教示により、元ネタタイトルが見事…

なぜアメリカの殺人鬼は説教が好きなのか問題――ドラマ版『ファーゴ』

アマゾン様のプライムビデオでドラマ版『ファーゴ』を全部観ました。これがまた大変にすばらしい。なんてったって人が死ぬんですよ、きみ、人が死ぬんだ。たくさん。たえまなく。ゴミのように。ゴミのような人間たちが。 ビリー・ボブ・ソーントン演じる殺人…

ドラマ版『ファーゴ』のクォート集

ネタバレ防止のため、発言者名は伏せてあります。 こうして抜き出してみると、各喩え話がゆるやかに繋がっていることがわかるようなわからんような。 一話「ワニのジレンマ」 「私たちは友人ではない……つまりですね、いつかはそうなるかもしれない。にしても…

2015年10月の新刊チェックリスト

(from 藤原編集室〉 ☆マーガレット・ミラー『雪の墓標』論創社 スティーヴ・エリクソン『きみを夢見て』ちくま文庫 ミシェル・ウエルベック『プラットフォーム』河出文庫(文庫落ち) ミシェル・ウエルベック『地図と領土』河出文庫(文庫落ち) レアード・…

あなたの人生を物語にする欲望――ミランダ・ジュライ『私を選んでくれるもの』(原2011→訳2015、岸本佐知子・訳)

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)作者: ミランダジュライ,Miranda July,岸本佐知子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/08/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (69件) を見る 『ペニーセイバー』なる名前のロサンゼルス限定小冊子が…

ショートショートに対する印象――リディア・デイヴィス『サミュエル・ジョンソンが怒っている』(原2001→訳2015、岸本佐知子・訳)

サミュエル・ジョンソンが怒っている作者: リディア・デイヴィス,岸本佐知子出版社/メーカー: 作品社発売日: 2015/08/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 蘇格蘭*1には樹というものがまるでない。 p. 58, 「サミュエル・ジョンソンが怒っ…

転校生は狼少女、サーモンピンクな恋心――菊池英也『めぐりあう者ども』(2015)

めぐりあう者ども作者: 菊池英也出版社/メーカー: 幻戯書房発売日: 2015/09/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 女性が動物に変身する譚について アメリカ文学研究者で『人狼伝説』*1や『狼女物語』*2などの訳者としても知られる、いや実…

真剣さについて

そしてこれも真面目な話、文学とはKUSO真面目な精神が敬虔の念をこめてKUSO真面目に言葉を使うことによっては本来成立たないものではないかという気がする。もちろんこれを真面目に主張しても無駄であろうから、冗談ということにしておく。そしてこれも冗談…

ディズニーのトリビュート・アルバム

・たぶんもう五年? 三年? くらい出てなかったディズニー・アレンジ・コンピレーション・シリーズの『ディズニー ロックス』の第三弾らしき『ROCK IN DISNEY』が今年唐突にリリースされていたようで、tricot の「新しい朝(belle)」のアレンジがすばらしい、…

真実の鍵――ルース・レンデル『街への鍵』(山本やよい訳、原1996、訳2015)

2015年度ポケミス全レビュー計画(但し『カルニヴィア』を除く)第一弾にしておそらく最後の弾。 あらすじ 1990年代のロンドン。主な視点人物は三人。*1 メアリ アイリーン・アドラー博物館で働く女性メアリは、婚約者であるアリステアの暴力に耐えかね、あ…

昨日までのあらすじ

・「2015年度ポケミス全レビュー計画(但し『カルニヴィア』を除く)」の第一弾として『街への鍵』のレビューを書く →その前にウエルベック『服従』について何か言っておく、まとめておく必要があるのではないかと思ってあらすじを書き出す →浅田彰の『服従…

犬の力――2015年度8月までのポケミス・ラウンドアップ

これまでのあらすじ 溜まったはてなポイントを amazon ギフト券に換金しようとしたらそういうサービス先月でやめたんすよーと言われて非常にダルい。じゃあこのポイントどうすればいいのかな、そうだ、私たちにははてなプラスとかがあった。 さして意味もな…

2015年9月の新刊

ミュリエル・スパーク祭りだ。 [from 藤原編集室] ◎ミュリエル・スパーク 『死を忘れるな』白水社 ◎ブルース・チャトウィン&ポール・セルー 『パタゴニアふたたび』白水社 ヘレン・マクロイ 『あなたは誰?』ちくま文庫 デイヴィッド・ハルバースタム 『ザ…

The Good, the Bad and the Ugly――トマス・フラナガン『アデスタを吹く冷たい風』

注意 この記事はトマス・フラナガン『アデスタを吹く冷たい風』のネタバレをおおいに含んでいます。未読の人で展開を知りたくないという方は、読まないでください。 未読だけどどうせ読まないし、いいや、という方も、たぶん読んでもわけわかんないだけなん…

昇り龍はかわいい九井の諒子――九井諒子『ダンジョン飯』二巻

注意 本記事は九井諒子『ダンジョン飯』二巻の一部ネタバレを含みます。 『ダンジョン飯』以前の九井諒子認識。 九井諒子は自分の長所と弱点を的確に認識、一作ごとに前者を伸ばし後者を修正していく成長性Sクラスな未完の大器です。十代でデビューした将来…

月毎の新刊チェック一覧を画面右側のフッタに作った。

春先はやるき絶無でしたが、来月からは真面目にチェックしようと思います。

読者による読者への挑戦状――小谷野敦『このミステリーがひどい』(2015)

どういう本か タイトルどおりミステリーぎらいの著者による、歯に衣着せぬミステリー批判が中心となった読書エッセイ本です。タイトルは反語的表現でもなんでもなく、基本的にミステリーファン*1と正反対の価値観の言説がミステリーというフィールドで繰り広…

ロベルト・ボラーニョ、野谷文昭・訳『アメリカ大陸のナチ文学』(1996, 訳2015)

書き出し エデルミラ・トンプソン・デ・メンディルセ 一八九四年ブエノスアイレス生まれ――一九九三年ブエノスアイレス没 十五歳のときに処女詩集『パパへ』を出版、これによりブエノスアイレスの上流社会の並み居る女流詩人のなかでささやかな地位を得た。以…

2015年8月の新刊チェックリスト

盛り上がってまいりました [from 藤原編集室] シェリー・ディクスン・カー*1『ザ・リッパー 切り裂きジャックの秘密 上・下』扶桑社ミステリー ジャック・カーリイ『髑髏の檻』文春文庫 フランク・ブレイディー『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの…

最終試験

何の科目だったかは忘れたがテストを受ける。どうやらジャンプマンガに関わることらしい。学生たちはひとりずつ教官の部屋に呼び出されて最終試験を受けさせられる。僕はその科目の授業に(珍しく)毎回欠かさず出席していたので、パスできる自信を持ってい…

大森望、中村融、柳下毅一郎、磯達雄「殊能将之ができるまで」

ニコニコの映画かなにかに金をはらったことはあってもニコ生に金を払うというのは初めての屈辱でありまして、まあでも殊能だししょうがないよな、これも香典あるいはご焼香みたいなもんだよなと自分をごまかしながら1000円払って観るわけです。 内容は『S-F…