名馬であれば馬のうち

読書、映画、ゲーム、その他。


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映画

犬と人(マン)が出会うとき――映画『スーパーマン』におけるクリプトの重要性について

(警告:本記事には2025年公開の映画『スーパーマン』のネタバレがあります。) イヌを飼うっていうのは、イヌを飼うことを夢見た結果だろ。 ――ギャヴィン・オコナー監督『ザ・コンサルタント2』 (クリプト) まえおき イヌの話をしましょう。 なぜなら、こ…

私的年間新作映画ベスト10×10年分(2015年-24年)、全解説

(迷えるように見えてたいして迷っていない若者に助言をくれる謎のおじいさん) 人は年始に餅をつきますが、わたしは年間ベストリストを作ります。 ここ十年、年毎の変わり目に、映画、マンガ、ゲームのリストをこねこねしてきました。大学時代は推理小説研…

二次創作やリメイクを正当化する方法についてーー『たべっ子どうぶつ The Movie』、『白雪姫』、『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』、『ノスフェラトゥ』、『パディントン3』

その90分間、ずっと原作つきの映画について考えていた。 『たべっ子どうぶつ The Movie』(監督:竹清仁) 『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』(監督:寺本幸代) 『白雪姫』(監督:マーク・ウェブ) 『ノスフェラトゥ』(監督:ロバート・エガース) …

2024年に観た新作映画ベスト10+10+犬+コッポラの『メガロポリス』

「それって、味の感想じゃないですよね?」 ーー『悪は存在しない』(濱口竜介監督) 2024年の新作ベスト10 1.『I Saw the TV Glow』(ジェーン・シェーンブルン監督) 2.『ソウルの春』(キム・ソンス監督) 3.『ゴッドランド/GODLAND』(フリーヌル・パル…

幽霊たちの隠れ場所:『Cloud』、『エイリアン:ロムルス』

あいまいなの境界の無い あわいにも揺らいでみる しろねこ堂「反省文~善きもの美しきもの真実なるもの~」 『君の色』を語ることの不可能について 視ることを語るのであれば。 本来ならわれわれは『君の色』について語り、語り合いつづける義務を負っている…

37歳のネコは親でもおじさんでもなくて、まるで天使のようだ――映画『化け猫あんずちゃん』について

さりながら諸君よ、感じやすく、子供のごとく純粋で、おれのように誠実な心の持ち主である諸君よ、いうまでもなく諸君のためなのだ。 ーーE・T・A・ホフマン、石丸静雄・訳『牡猫ムルの人生観』 www.youtube.com 死んだ母親たち、使えない父親たち、外され…

お犬さまが見てる--映画『落下の解剖学』について

(本記事は映画『落下の解剖学』のネタバレを含みます)*1 www.youtube.com ときどき奇妙なカットが挟まりますね。 「母親の裁判をもっと見たい」と裁判官に翌日の傍聴を訴える少年を左下から見上げてみたり、自宅近くの小高い丘から現場検証を見下ろす主人…

2023年の新作映画ベスト20選+α、その夢の年

proxia.hateblo.jp 「自分の夢がなんなのか知りたかったら、それをつきとめる方法は、映画をたくさん見ることだよ」 コニー・ウィリス、大森望・訳『リメイク』(ハヤカワSF文庫) 2023年ベスト10 1.『オオカミの家』(クリストバル・レオン&ホアキン・コシ…

きっと、星のせいじゃない。――映画『ウィッシュ』について

星に願いをかけるときは あなたが誰でも関係ない 心に浮かんだ望みはなんだって きっといつか叶うでしょう ――When You wish upon a Star とすれば、ブルータス、罪は星にあるのではない、われわれ自身にあるのだ。 シェイクスピア、福田恆存・訳『ジュリアス…

2023年上半期に観た新作映画でよかった作品たち

順番は特に順位に対応してはいません。母数となる新作は60本くらいか。今年はシネコンばかりで観ておる。 『ベネデッタ』(ポール・ヴァーホーヴェン監督) 『レッド・ロケット』(ショーン・ベイカー監督) 『フェイブルマンズ』(スティーブン・スピルバー…

声を奪われた魚たちーー実写版『リトル・マーメイド』について

*オリジナル版・実写版両方の『リトル・マーメイド』のネタバレを含みます。 From Ashes to the Ocean 1989年の『リトル・マーメイド』は声の物語であり、歌と音楽の映画だった。 オフ・ブロードウェイでの成功により注目されていた作詞家ハワード・アシュ…

足場から足場へ。:『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』について

「スーパーマリオやろうぜ」エリックがなだめるように言う。 ぼくはかぶりを振る。 「あれはフェイクすぎる」 「裏にバスケのコートがあるじゃんか。ちょっとシュートでもしようぜ」 ぼくはかぶりを振る。 あれはリアルすぎる、とぼくは思う。 ――マイケル・W…

2022年の新作映画ベスト10とその他:第三期ピークTVの時代、あるいは犬の年

前説 新作映画ベスト10 1.『戦争と女の顔』(カンテミール・バラーゴフ監督、ロシア) 2.『アンビュランス』(マイケル・ベイ監督、アメリカ) 3.『ブラック・フォン』(スコット・デリクソン監督、アメリカ) 4.『NOPE』(ジョーダン・ピール監督、アメリカ…

ゲームの夢、映画の魔――『IMMORTALITY』について

(本記事は本ブログに珍しく、あまりネタバレが含まれていない。ちょっとはあります) 君という光が私を見つける 真夜中に 宇多田ヒカル「光」 (本編より) 視覚芸術分野において「見ることと見られることについての作品」というフレーズで評することは若干…

第94回アカデミー作品賞候補作の(ほぼ)全所感。

今年に入ってから映画の感想をブログに残していないことに気づいたのでよくないなーとおもったので、時期も時期もだし、アカデミー賞の作品賞候補になっている十作品のうち、日本で公開済みの九作品についての感想を書いておきます。正直、そこまで興味持て…

2021年の新作映画ベスト10+α

序 新作映画ベスト10 1.『キャッシュトラック』(ガイ・リッチー監督、米英) 2.『偶然と想像』(濱口竜介監督、日) 3.『ライトハウス』(デイヴ・エガーズ監督、米ブラジル) 4.『プロミシング・ヤング・ウーマン』(エメラルド・フェネル監督、米) 5.『…

予告された死は喜劇か悲劇か問題――『100日間生きたワニ』について

映画を観たのだから映画の話をしろ。映画の話をします。 誰が自分自身にこんな誓いに立てるでしょう。「わたしは死を見るにも、喜劇を見ると同じ目で見るだろう……」 ――セネカ「幸福な人生について」 死。所詮然し死といふ奴は、語るべきものではないらしい。…

2020年上半期のベスト映画5作

つってもコロナで数ヶ月くらい新作映画観られなかったんですけどね。いやまあ新作は配信でもありましたが。配信もなんかどん詰まってなかった? そういうわけで例年より新作映画に接する機会が少なかったので、毎年20作くらい挙げる上半期ベストも五作に絞り…

わたしたちは思った以上にゾンビなんだ。ーー『デッド・ドント・ダイ』について

気がふさぐと、いつもゾンビどものせいにするんだから。 ーー『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』 www.youtube.com 大量消費主義の問題、ロメロの映画に織り込まれている問題は悪化しているだけだ。何も変わっちゃいない。僕たちは彼の映画で警告さ…

村に捧げるアリ・アスター全短編レビュー

"In fact, I've described the film as a horror movie about codependency. I guess I hope that people will feel unsettled.”https://refinery29.com/en-us/2019/07/235908/midsommar-hereditary-connection-cult 前回までのあらすじ The Strange Thing A…

縛る手、浮かぶ足、結ぶ手、踊る足――『ジョジョ・ラビット』について

(『ジョジョ・ラビット』のネタバレを含みます) 今日は踊ってください 未来には期待したいし ――「POSITIVE feat. Dream Ami」tofubeats 手 『ジョジョ・ラビット』が靴の映画であり、足の映画であることは観た誰もがわかることだけれど、劇中でまず映るの…

2020年にアメリカで公開され(そうになって)る期待の新作映画リスト

公開日はアメリカ合わせ。調べ方が雑なので合ってないかもですが。(参考サイト) https://editorial.rottentomatoes.com/article/most-anticipated-movies-of-2020/ https://www.slashfilm.com/most-anticipated-movies-of-2020/ https://filmschoolrejects…

まるで天使のようなサム・ロックウェルーー『リチャード・ジュエル』について。

(本記事は『リチャード・ジュエル』の重大なネタバレを含みます) ーーイーストウッドさん、最近のあなたは実際にあったヒーロー的な出来事に惹かれているようですね。なぜこうした物語があなたに芸術的なインスピレーションを与えるのでしょうか?イースト…

2019年の新作映画ベスト25と、その他について

ベスト10 1.『マリッジ・ストーリー』(ノア・バームバック、米) 2.『スパイダーマン:スパイダーバース』(ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン監督、米) 3.『僕たちのラストステージ』(ジョン・S・ベアード、英米カナダ) 4.…

2010年代のTVアニメ/海外アニメ/アニメ映画の年別ベスト

背景 highlandさんが「テン年代のTVアニメベスト10」という企画? をやっていたので便乗していろいろ考えます。考えるうち、海外のやつも映画もやりたいなー分けたいなーとおもったので、全部やることにしました。 わたしはそんなにTVアニメを見る人ではあり…

クリシェじゃないのよ。ーートレイ・エドワード・シュルツ監督『クリシャ』について

(Krisha, トレイ・エドワード・シュルツ監督、2015年、米) 『クリシャ』について Krisha (2015) Official Trailer 最近の、あるいはむかしからそうだったのかもしれないけれど、アメリカのインディー映画は一幕目で出した銃を三幕目で撃つより、銃がなぜそ…

原作をそのままやってもやれなくて。――リメイク版『ライオン・キング』について

(The Lion King, ジョン・ファヴロー監督、2019年、米) ふだんはあんまり愚痴っぽい感想を書かないようにしているんですが、今回だけは思い入れの強さが段違いなので許してください。 原作厨モードなので「オリジナル版」との比較ばかりとなっております。…

東京になる、あるいは少年は如何にして「大丈夫」になったか?――『天気の子』について

注意:本記事は新海誠『天気の子』の重大なネタバレを含みます。(『天気の子』、weathering with you、新海誠監督、日本、2019年) 彼はその海岸で、ひとにぎりの砂をすくう。それが「世界」だ。もちろんそれが現実に広大さをたずさえた世界であるはずがな…

2019年上半期に観た新作映画ベスト20

子供の頃に観たあの映画 あの夢と希望 現実なんて信じないで 私は映画が好き weyes blood, "Movies" こうして上半期の映画ベストをきめるのも死んだ魚を錐でついたときに起こるけいれんじみてきておりますですが、でもまあ、いってみればブログの記事なんて…

魔法の羽根としてのダンボーー実写リメイク版『ダンボ』に関する短い感想

「ダンボ」日本版予告編 ティム・バートン曰く「歪んだウォルト・ディズニー」*1であるところの興行師ヴァンデヴァー(マイケル・キートン)が自身の経営する遊園地〈夢の国〉から偽物のフリークスたち*2を叩き出す。ダンボの属していた弱小サーカスから移籍…