名馬であれば馬のうち

読書、映画、ゲーム、その他。


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2025年のそこそこ良かった新作ゲームたち

 Sweet Thames, run softly, till I end my song.

  ――T・S・エリオット『荒地』


これまでのあらすじ

・毎年このブログで発表してきた年間ベストゲーム記事ですが、今年はJiniさんのInteracrit(旧ゲームゼミ)へ寄稿する形と相成りました。
note.com
・で、上の記事はベスト10までなのね。ここではベスト10から漏れたけれど、良かった新作ゲームたちについて簡単に触れておきたい。
・まじで簡単にね。
・最近、元気がなくてね。
・思い出せるゲームだけなので、思い出せなかったらすいません。
・特にゲームの内容を紹介したりはしない。ごめんね。
・わたしは田舎のネズミが好き。

proxia.hateblo.jp

【そこそこどころではなく良かった枠】

Absolum


・ファンタジー風味のベルトスクロールアクション×ローグライト。今どきベルトスクロールアクションに全力投球なスタジオが作っているだけあって、ちゃんと志とおもしろさが磨かれています。下敷きになった『HADES』の2よりも好きかもしれない。

Ball x Pit


・RPG風ブロック崩しローグライト。ローグライトととして非常によく磨かれています。村作り要素は余計かともおもいましたが、サブのメカニックを並走させて味変しつつプレイヤーをとにかく忙しくさせる昨今のローグライトの潮流にも乗ってるし、まあよいのでは。見た目よりプレイにバリエーションが出るのも楽しいところ。きみのフェイバリットヒーローは誰かな?
・Devolverは25年は『Baby Steps』、『Look Outside』、『Skate Story』とシブくて良い作品を連発しましたね。近年低調との声もありましたが、豊年だとおもいます。『Possessor(s)』? 知らんな、そんなタイトルは……。いやうそ、なんとかHeatMachineには復活してもらいたいですね…‥けど見てると……もうだめそう……。

Type Help

・ベスト10の記事でだいたい言った気もします。『Obra Dinn』から『Golden Idol』へ、『Golden Idol』と『Her Story』から『Roottrees』へ、と下ってきたところをさらに「じゃあ、テキストだけでやるにはどうするか」を達成してのけたところは称賛してもしきるところがありません。おそらく『CLUEDO』から得た「部屋と時間と人物の一致」、さらにシステムを活かすためのトリッキーなメタ演出と『そして誰もいなくなった』的シチュエーション。すべてがガチガチに組み立てられていて、一見シンプルで容易いようでいて、実は上に列記した先行作のどれと比べてももっとも再現がむずかしいゲームなのではないか。
・というところで、今年遊んだ『The Red Pearls of Borneo』なんかは、Type Helpが到達した地点から少し巻き戻すようにビジュアルをつけることでアクセシビリティを上げ、ストーリー部分の物足りなさを補っています。また、先ごろ話題となった『ギルド探求団へようこそ』もビジュアルとキャラの味付けを行うことで愉しい一品にしあがりました。
 ・要するに、『Type Help』くらいガチガチにできないのならビジュアルはあったほうがいい、という感じ。罠ですね。

Eclipsium


・3Dプラットフォーム謎解きアクション。巨女がじっと見つめてくるパート(巨女といえば、『SAEKO』も期待より良かった)ばかり注目されますが、全体的に楽しいウィアードホラー・ウォーキング・アドベンチャーです。
・なんというか、ウォーキングシムのコアのひとつである「見ること」を非常によく転がしており、悪夢巡りがロジカルにできている。近年のウォークシム(パズル要素が多々あるけれども)ではかなり上位に来る一作ではないでしょうか。
・それにしてもロシアの人が考える終末世界ってなんでだだっぴろい海辺に虚無(ヴォイド)の穴が空いてるイメージばっかなんだろな……とおもったらスウェーデンのスタジオだった。まあ、寒い国つながりということで。今年は日本が世界で一番寒いらしいです。
・去年のCritical Reflexパブリッシング作品としてもいちばん良かったですね。去年は『No, I'm not human』もありました。あちらはコンセプトが非常に現代社会への批評として最高だったのですが、肝心のゲームプレイがあまりに淡白すぎたと申しますか、デモで遊んだ感触から一歩も外に出なかったのが惜しい。でも、プレイすべき作品だとおもいます。

黄泉に落ちても麻雀


・昨年は麻雀をローグライト(っていうかBalatroライク)にしたゲームが一挙に三つも出ました。『青天井』、『雀魂』の「青雲の志」、そして本作です。「青雲の志」は24年だった気もしますが、まあいいでしょう。そのなかで中毒性においてベストだったのがこれ。とりあえずすべての牌を風牌にしてみたり、全部白にしてみたりすると、日式なんだかチュンマなんだかよくわからない役がつきまくって点が億を超えます。いちおう計算式で出るはずのスコアの計算が、派手派手演出とインフレの快楽によってどうでもよくなってしまうのがただしくカジノローグライト。主題歌つきだったり、最初中国語しかなかった声がのちに日本語でも吹き替えられたりとやたら開発陣に熱意があるのもよし。

MINDWAVE(デモ版)


・デモ版なのに一生やれる。製品版出たら九生でも足りなくなりそう。
・デモ版でめちゃ良かったのだと、『Mina the Hollower』なんですが、開発元がかなりヤバい状況にあるっぽくて心配。

【そこそこ良かった枠】

HADES 2


・なんかこう、みんながHADESの1のときに言ってたことがわかってきた気がする。
・キャラはあいかわらず良い。わたしのメインヒロインはアルテミスです。キャラたちと会話するために周回していると、なんだかこう、ペルソナ5みたいだなっておもいます。

SHINOBI 復讐の斬撃


・「ステージクリア型のメトロイドヴァニア」という矛盾したジャンル名を当てはめたくなる探索要素アリなスタイリッシュ・プラットフォーム・アクション。細部はよく覚えてないけどカッコいい忍殺をキメまくれる良いゲームでした。
・25年はニンジャの年でしたね。『NINJA GAIDEN: RAGE BOUND』*1? 『NINJA GAIDEN 4』*2? 『忍者明ら』*3? 何をおっしゃいますやら。男は黙って、『忍者ハヤテ HDリマスター』!*4

Promise Mascot Agency


・九州ヤクザマスコット派遣アドベンチャー。見た通りに奇妙奇天烈なゲームであるものの、九州の限界地方都市にここまでポップかつ的確に迫ったゲームを他に知らない。リアリズムのゲームであるところは声優起用にも現れていて、学校で英語を教えているALT(外国語指導助手)が出てくるんですが、そのひとの日本語がアニメでよくある「◯◯デース」みたいなエセ外国訛り日本語ではなく、「母語が日本語ではないひとが喋るめちゃ上手い日本語」のアクセントで喋る。このニュアンスはゲームだとまず見ません。
・キャラとテキストがよく描けている一方で、ゲームのコアとなるマスコット派遣パートはややタルかった。

FaceMiner


・上半期まとめブログ参照。これについてはもう三回くらい書いてる気がする。最近は資本主義についてのコメンタリーが巧みなゲームが多くなってきた印象で、『Pipistrello and the Cursed Yoyo』もその範疇。

Lumines Arise


・期待通りのものを出してくれた印象。水口先生は電子ドラッグディーラーという本分を貫きつづけてるのがエラい。本人がブツをつまんでいるアディクトなだけかもしれませんが……。

ステラーコード


・もう日本の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』はこれで良い気もしてきますが、それはさておき、懐かしい感じの手触りを残しつつちゃんとSFしているのが好印象。
・世間には「頭の良いひとたちが伝導率100%で頭の良い会話をしている小説を読みたい!」と願う層が一定数いて、わたしのほうは頭の良いひとたちの会話って読んでて逆に疲れないか、などとおもうのですが、たまに味わうぶんにはよいものです。

Time flies


・Playablesといえば良い意味でも悪い意味でも「アートゲーム」の代表格だったわけですが、今回はわりと「ゲーム」に寄せてきて、それでいてアート的な手触りとテーマ性をきっちり整えてくるという器用なことをしてきた。やればできるじゃん。
・アートアニメがやりたいんだったらアートアニメをやれ、インタラクティブ・アートやりたいんだったらインタラクティブ・アートやれ、といいたい気持ちはまあわからなくもないのですが、その境界を曖昧にしていくことの利点もあるのだとおもいます。

Keep Driving


・ルックとコンセプトの勝利やね。
・こういう戦闘がRPGっぽいけど厳密には分類不能なローグライトって最近そこそこあって、最近触ったゲームだと『Winnie's Hole』とかもそうだったんですけれど、なんつーか、遠回しにいえば、デザインがむずかしいよね〜、となります。ストレートにいえば、タルい。

He is Coming


・で、RPGっぽいローグライトをやりたければRPGローグライトをやりましょう、という話になるわけです。そこで安心と信頼のHooded Horseの出番になる。
・装備の組み合わせが限定されてるぶん、カスみたいに脳死でプレイしていてもある程度は筋道みたいなのが見えてきて、そこそこのところで死ねる。カスみたいに脳死でプレイできるローグライトはいいローグライトです。まあこれはローグライクといってもいいかもしれない。

ダレカレ


・ストーリーストーリーというわりにはストーリーテリングの方法にあまり気を遣わない本邦において、比較的貴重な一作。
・『ダレカレ』に関しては(『FLORENCE』と違って)ルドナラティブなストーリーテリングに齟齬をきたしてはいないか? というご意見を耳にしました。わたしなどは、え? そうとう出来てるほうでは? と感じたのですが、たぶん比較的チャレンジングでありつつも不出来な『FLORENCE』ライクを触っているからでしょう。今はあんまり触っていません。

『ENDER MAGNOLIA』

『CITIZEN SLEEPER 2』


・どっちも「前作よりはノレないけど悪くない続編」枠です。CS2は物語的に1と変わったところがわかりやすかったといいますか、今度は仲間がいるぞ! というドラクエ1が2になるみたいな正統派の拡張の仕方をしていたんですが、それがサイバーパンク世知辛スペースオペラという枠組みに合致していたかはちょっとどうでしょう。そういえば、CSシリーズを出している一人スタジオJump over the ageのギャレス・ダミアン・マーティンが批評家時代に出していた建築×ゲームというコンセプトの批評同人誌をitch.ioでまとめ買いして読んでるんですが、おもしろいです。こういうアングルの人なのか、とおもうと、CSのやや冗長なまでに書き込まれたテキストもなんとなく受け入れやすくなります。
・マグノリアについてはOKなんだけれど、このノリのまま三作目はちょっとつらいぞ、とおもいます。
・あと『The Outer World 2』に関しては途中でなんとなく違うなってなってギブアップしました。

Dogpile


・2025年のヒドゥン・ジェムはこれ。
・スイカゲームのフルーツをイヌに置き換えてローグライトにしたゲーム。最高なワードしか並んでないな。天国で飼い主を探すゲームをぶっちぎって2025年のイヌゲームオブザイヤーです。天国で飼い主を探すゲームまだ積んでますが。
・「スイカゲームをローグライトにするならどんなバフデバフが考えられるか」について真剣に向き合った稀少なゲームであるともおもうので、別にイヌ好きでなくともオススメしたい。

Birdigo


・昨年はWordleをローグライト(っていうかBalatroライク)にしたゲームが一挙に三つも出ました。『Word Play』、『Wardatro』、その中でも総合的にベストだったのがこれ。
・やはりビジュアルって大事だなっておもうわけです。システム的には他の二作とあまり変わらないわけですが、ローポリのさまざまな鳥さんたちが楽しげに踊り狂っているのを見るのは目に愉しい。まあ、あと強化のバリエーションもこれが一番わかりやすかった気がする。
・たぶん、これ以上発展しようのないジャンルではある。

The Warrior


・最近はみんなゲームでメタフィクションやることに飽きたのかな、といった印象だったところで、こういうパロディとしてのメタフィクエンタメをやってくれるのは嬉しいですね。サイズ感に対して収まりの良い完成度です。もっと気軽にメタフィクションしましょう、みなさん。
・フレンドから勧めてもらったおぼえがある。みんな、ゲム友は大事だぜ!

Ropuka's idle lsland


・Rusty's Retirementに始まったデスクトップアクセサリ式インクリメンタル放置ゲームもすっかり定着しきった昨今ですが、そのなかでもひときわ惹かれるのがこれ。目つきの悪いカエルくんがのんびりくらす。それでいいんです。

Evil egg


・無料ゲームとしては去年の十指に入るのでは。レトロ趣味やるんなら偽史作るくらいには設定には凝らないといけない。

Clical Trial

proxia.hateblo.jp
・「自分が翻訳した作品はベストにいれない」という原則を持っているわけではなく、単にリリースが24年の暮れだったためなんとなく外れてしまった。無料有料関係なくRPGツクール製アドベンチャーでは近年稀に見るクオリティだとおもいます。
・それはそれとして自分はゲーム翻訳にあんまり向いてないな……とおもう点が二点があり、ひとつはアップデート無精なところ(今も直したい部分が数カ所あるのだけれど腰が重すぎてやれない)、もうひとつは実況動画を無限に見てしまうところで、まあ、要するに他にやることが……多い……。
 ・ちなみにCTのあとで『Space Funeral』を翻訳しようとして、RPGツクール2003問題にぶちあたってやめました。

The Alters

proxia.hateblo.jp
・「コンセプトについてはなにか語りたくなるけれど肝心のゲームプレイはタルい」という作品は多々存在し、先に言及した『No, I am not Human』なんかもそのひとつなのですが、まあしかし言い換えれば、なにかをいいたくなるだけの魅力はあるといえる。
・かといって、つまらないわけではないんだよな。
・かといって、おもしろいわけでもないんだよな。
・そういうゲームをやっていける時間がある状態を、「余裕がある」といいます。
・なんかこう、このくらいの温度感の作品って去年だと『文字遊戯』もね……。

Öoo


・解法があまりにカッチリ決まりすぎている気もするけれど、イマーシブ・シム志向のインディー界にあっては良いアクセントなのかもしれない。ああ、でも、倉庫番とかあるか。

ドドトリ


・たまにはこのくらいの小品がいいときもある。ブレイニア要素もあるよ。

StarVaders


・『Into the Breach』を大衆化したのはエラすぎる。
・そのジャンルである時点で自分のなかの得点の上限が決まっているジャンルというのがあって、ローグライトSLGというのはそれなのですが、そのなかでは最高得点。

Discopup


・ローポリ『どうぶつの森』的マスコットホラーの雰囲気をたたえたイマーシブ・シム
・いろんなところが変。

OVIS LOOP


・そこそこ良い感じの高速ローグライトメトロイドヴァニアって年にやまほど出るんで甲乙つけがたく、けっきょく甲乙つけないままでいいかってなりがち。でもそのなかではOVIS LOOPはストーリーをやろうと頑張っているぶん忘れがたかったかも。
・最近は触ってなかったけど、アップデートが不評みたいね。どうなってるのやら。
・ローグライトメトロイドヴァニアだと『Lia: Hacking Destiny』も悪くなかったけど、こっちはほんとダラダラやるかんじ。

【良いかんじだったけれど、十分に遊んでないもの】

Death Howl

・なんでもソウルライクっていえばいいってわけじゃないけれど、いいゲームです。

Look Outside

・RPGツクール製ホラーはあいかわらず元気かつオーバーテクノロジー気味で、本作はその最先端。ツクールのドラクエ式戦闘画面で「敵かどうかわからない不信感」を煽るのはいじわるすぎてよい。

Pipistrello and the Cursed Yoyo

・ヨーヨーでやる見下ろしゼルダライクアクション。とにかく手触りが快適。
・ボンボンです。これはコミックボンボンです。なぜかというと主人公が正義の味方でなくて資本主義の犬だから。

Skate Story

・スケボゲームってあんまり好きじゃないというか、スケボというよりなにかにライドしながらトリックを決めましょう!といったようなゲームがあまり好きじゃない。だってうまくコンボを入力できないもの。のですが、本作に関してはそのへんがけっこうゆるゆるでもかっこよくキメられて、ベリーグッドです。

Scrabdackle

・ゼルダライクといえばいいのか。全体的にウィアードでゆるい世界観で楽しげ。

歴史の終わり

・アップデート待ち。『太閤立志伝』ファンの残党なので、いつまでも待てる。

Easy Delivery Co.

・何度か凍死したのでゲームを味わい尽くしたといえばそうなのかもしれないけれど。

Little Rocket Lab

・工場建設系ってだいたい二時間でやる気がなくなるんだけれど、これはその先に百合のにおいがする。

Dice Gambit

・システムに比べて味付けがピーキーすぎへんか???

【新作ではないもの】

Antimatter Dimension

・去年今年とクリッカー/インクリメンタルの古典をあらかた触りました。クリッカーは外部から見たときと内部に入っていったときの景色がかなり異なるジャンルで、なんというか、なんてことない洞穴だとおもって入ったら古代遺跡の大迷宮だった、みたいなかんじです。古典とされている作品は多く、ジャンル的な議論の蓄積もそこそこあるんですけれども、その99%はジャンル外だと誰も知らない。
・なかでもAntimatter Dimensionはすごい。クッキークリッカーと比肩するレベルにあるのはこれくらいでしょう。
・「シンプルなインクリメンタルにできること」を突き詰めたような代物で、フェーズが変わるごとにゲームそのものも変わる。時にはゲームをオフにすることが最大効率となる。禅問答のようなクリッカーゲーム。

Space Plan

・クリッカー古典探訪その二。元ネタは『lifeline』か『a dark room』あるいはその両方だとおもうのだけれど、ストーリーテリングのなめらかさとウィット効き具合が頭抜けている。

Universal Paperclips

・クリッカー古典探訪その三。クリッカー/インクリメンタルの最高傑作の一つだとおもう。インクリメンタルであることそれ自体をストーリーテリングに取り入れたゲームは多いけれど、これに並ぶものはそうそうないのではないか。ちなみに作者(フランク・ランツ)は25年には『Q-UP』を出していますが、こちらも実質クリッカー……だとおもってたら最終的にバリバリのデッキ構築を要求してきてビビった。

Tiny Rougues

・ちょうどよすぎ!

【めんどくさいので、短編クリッカー/インクリメンタルに関してはここで新旧含めたランキングを出しておきます】

・主に10時間以内で終わるもの。Universal Paperclipもプレイの仕方によっては10時間以内で終わるとおもうんだけれど、初プレイでそれ以上かかった記憶があるので除外しておきました。

1.nodebuster
2.Digseum
3.(The)Gnorp Apologue
4.Feed the Reactor
5.Space Rock Breaker
6.Faceminer
7.Magic Archery
8.Astro Prospector
9.Click and Conquer
10.Lyca
11.Defrag
12.Execute
13.Shelldiver
14.Unfair Flips
15.keep on mining!
16.Clickolding
17.Outhold
18.A Game about feeding a black hole
19.A game about digging a hole
20.This game will end in 205 clicks
21.Fill up the hole
22. Snakremental
23.Pinata Go Boom
24.Duncrush
25.Trainatic


【期待してたけど良くなかったで賞2025】*5

『Wonderstop』。アンチRPGティーハウスコージーアドベンチャー。Davey Wredenに求めていたものではなかった。あと茶摘みがダルい。



ほかにも遊んだり飽きたりしていました。しかし、だいたいそんなところでしょうか。今年もよろしくお願いいたします。

*1:途中で止まってる

*2:買ってない

*3:買ってない

*4:やっぱり買ってない

*5:2023年は『Starfield』、2024年は『Sea of Stars』

2025年にブログの外で書いた主なテキスト



私にはあまり体力がないから、とフラナリーは言う。午前中、三時間書くのに必要な体力しかありません。あとはずっと孔雀を見て過ごすのです。


ジュヌヴィエーヴ・ブリザック、香川由利子・訳『フラナリー・オコナー楽園からの追放』(筑摩書房


(ソウルの川にいたコサギ



ぼんやりと座って川など眺めていると、たまに外から手紙が来る。

昨年は、外で書くことが多かった。世間的には寄稿と呼ばれる行為だ。けれど、寄せている意識はあまりわかない。頼まれて書いたものを川に流すと、海へと吸いこまれていく。そんな感覚。

寄せていないのかもしれない、というのは書く内容もそうで、ブログでのこころがけとさして変わりがない。
たいていブログを読んで寄越された依頼なのだから別にそれでいいのかもしれず、実際アレコレいわれることもすくないのだけれど、わたしだってスペースマウンテンに乗れるくらいはじゅうぶんおとなです。おくびをだした忖度が「もっと寄せたほうがいいぜ」と耳打ちしてくる。といって、寄せすぎると先方も「なんかこういうのじゃないんですよね〜」と期待してたのと違うっぽくなってしまうのかな、と別の悪魔がささやく。
結果的にハワイが日本列島に接近する速度で寄せるくらいの塩梅となり、見た目にはほとんど寄っていないふうに映る。むずかしいね。
しかし、おかげでこのブログの延長線のように読める。なので、ここにいらしているあなたがたにもオススメだということになる。オススメだということにしておく。

というわけで、主だったものを以下にまとめる。ポストモーテムのようだけれど、中身はそんなに説明しない。
分野的には映画、ゲーム、VR、まんが、SF、ブックガイド、ケモ、創作、インタビュー、美味しんぼ、と節操がない。こういう状態を「活動は多岐にわたる」という。多岐は現在の滋賀県と愛知県の境界の地名で、江戸時代に設置された多岐藩は代々譜代である多岐松平氏が治め、交通の要衝である東海道ににらみを効かせていた。東西に対して陰に陽に情報収集の網を張り巡らせた多岐藩。その暗躍を、ひとびとは「多岐の活き動き」と揶揄とおそれを込めて呼び、のちにそれが「活動は多岐にわたる」の語源となった。

『Padograph雑誌 第1号 特集:周縁から内在へ アジア現代美術』(Padograph)

booth.pm

Padograph パドグラフ 파도그래프という日韓の美術展・アートシーン情報に特化したサイトがあり、そこが雑誌を出すというので呼んでいただいた。アートに詳しかったか、おまえ? と問われれる、詳しかぁないですね、と応えるしかないのだけれども、「アートはともかく、VRのことについてのエッセイを書いてほしい」という注文だった。当時はVRChatもだいぶログイン頻度が減っていたので、あんまりこうノリノリなことは書けませんよ、といったらじゃあその気持ちで書いてください的なことをいわれて、そのとおり終わりの子どもだもうきみもぼくもみたいなとふうな内容になった。そもそもVRChatについて自分が書くときは終わりだ全部みたいなことしか書いてないので、いつもの内容だったともいえる。
目次でファンである in the blues shirt のアリムラ氏の隣に来たことを音楽のオタクに自慢したら、「目次で隣だっただけで……」みたいな反応だったので、自分がおもっていた以上にうれしかったらしい。

リアルサウンド

serial experiments lain

realsound.jp
リアルサウンドには一昨年から書いていて、二回ほど寄稿したあとで没交渉になったからもう頼まれることもあるまい、とおもっていたら突然春先に『serial experiments lain』について書きませんか、という依頼が来た。『serial experiments lain』についての原稿を頼まれるということは、「こいつは『serial experiments lain』についての原稿を書く(書ける)ようなやつである」と見なされたということでもある。ひとことでは言い表しきれない微妙なニュアンスを持った立場であるけれども、『serial experiments lain』を好きかどうかでいえばたいへんに好きなので、わりかし光栄に感じた。
というわけで、内容も「『serial experiments lain』についての原稿を書くようなやつが書くもの」に寄っている。どういう空気感かは読んでくれればわかる。口では説明しづらい。
ところでは、lainはみんな好きだ。季節外れでもかなり読まれたっぽく、リアルサウンド・テック*1の記事のなかで歴代一番はてなブックマークがついた。「いちばん読まれた記事」ではなく「いちばんはてなブックマーク」がついたというところが高齢化するインターネットについて色々考えさせられるところではあるけれども、ひとまずはきみたちに感謝を捧げておきたい。あんがとな。

「映画版『8番出口』」

realsound.jp
映画の『8番出口』の記事。話が来た時はなんも書くことなさそうだな、とおもっていたけれど、実際映画を観に行ったら書くことがモリモリ出てきて、その日のうちに提出した記憶がある。ちょうど、ゲームと映画の関係についてちょっと考えていた時期でもあり、タイミングもよかったのかもしれない。
いち観客としてはそんなに好きではないし、自分の趣味から離れた物差しからいってもいろいろつまづきのある映画だけれど、それはそれとして技術的あるいは部分的な達成は認めなければいけない。そういう作品は世の中にたくさんある。評価の軸だっていくつもある。しかし、世間では「いい」か「わるい」でバイナリ的にしか判断されない。まずしいことである……と、嘆いてみてもいいが、我が身を顧みれば自分だって人生の九割九分そんな感じで、だから精読の機会を得るという意味でも外からの依頼はありがたいのかもしれない。

ファイナルファンタジー・タクティクス」

realsound.jp
ファイナルファンタジータクティクス』について。リメイク版リリースのタイミングで出た記事。『ファイナルファンタジータクティクス』は自分の人生でもかなり上位の方に来るゲームなので、なにがなんでもなにかを書きたいという気持ちで引き受けた。で、引き受けてみると、やっぱりなにを書けばいいのかはわからない。
読み直すと奇妙な記事で、まあでも形になっているからいいんじゃないだろうか。歴史叙述について考えていた時期で、『FFT』はその問題意識にあまりマッチした作品とはいえないのだけれど、マッチするように仕立てるのが仕事の妙だ。そういう意味ではこれも寄せてある。寄せると互いに相性の悪そうな材料でもおいしく食べられるものになる。寄せ鍋というやつですね。
あとリアルサウンドではもうひとつ有料読者用のコラムを書いたのだけれど、有料読者用なので有料読者しか読めません。VRChat発のネットミームと『ブレードランナー2049』の話。

美味しんぼエッセイアンソロジー 恋愛編 ZigZagに恋して!』(水色残酷事件)

booth.pm
水町綜さんというヤンキーとSFがうまい作家さんがいる。大戸又さんのところのアンソロに参加したときに打ち上げの焼き肉でたまたま美味しんぼの話題になって、他の参加者そっちのけにしてずっと美味しんぼトークをするものだから、しまいには大戸さんから怒られて店から追い出されそうになった。そこで、水町さんが「待ってください。一週間後にまたここに来てください。最高の『美味しんぼ』エッセイアンソロジーを用意します。もしそれに満足できなかったら、千葉さんと私は一生カツオの刺し身をマヨネーズ抜きで食べます」という約束を勝手にしてしまったものだから、もう、大変! 水町さんたら! なんて勝手な約束をしちゃうの!? 相手はあの大戸又よ。下手な『美味しんぼ』エッセイなんか出したら、わたしたちのほうが刺し身にされちゃうわ! ……と苦言を呈したのだけれど時既に遅し。そのまま、わたしは「究極の『美味しんぼ』エッセイアンソロ」の原稿作りに巻き込まれてしまったのでした……。以上の八割はウソです。
そんなこんなで出たのがが第一弾『Dang Dang 気になる』。『ZigZagに恋して!』はその第二弾。第二弾は恋愛がテーマだったようにおもう。わたしはアイスクリーム居合斬り回について書いた。ちなみに美味しんぼについては一昨年にも別のメディアに書いた美味しんぼエッセイを三つも書いたのだから、いまや押しも押されぬせぬ美味しんぼエッセイストとして斯界からは尊ばれている。斯界?

【遊星歯車機関】

ビデオゲームのおもしろメカニックを中心に扱う同人企画。元インターネットの錬金術師ことxclocheさん a.k.a.かもリバー氏が二、三年前の文フリかSNSかで「ゲームの変なメカニックを扱った同人誌作りたいんですよね。木原善彦の『実験する小説たち』のゲーム版みてえなの」といいだして、そら、おもしろそうッスね、と待機してたらnoteで先出ししながらやるぞ、ということになった。いまのところ、かもリバー氏、murashit氏、わたしが三人で回しながらゲスト寄稿者を随時お呼びしているかんじ。

「ランバックとコープスランについて」

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ジャーゴンとかテクニカルタームみたいなのはないならないでどうにかなったり、むしろ変に導入すると混乱を招いたりする。自前の造語など論外だ。
でも、どっからどうみてもあったほうがいいだろが、という概念もある。ランバックとコープスランはそのひとつ。言われれば「ああ、あれね」となるのだけれど、日本語圏では語ろうとすると曖昧にしか表現されない。
ことばは柵のようなものだ。領域を区切り、対象を指示する。議論とはその柵の中でないと成立しない。
というわけで、輸入した。英語圏ではそれなりの時間をかけて鍛えられた用語*2であり、じゅうぶんに有用性と耐久性を兼ね備えている。有用だからといって広まるかどうか、精緻に運用されていくかどうかはそれぞれ別の問題で、まあしかし、別にAppleStoreでもないのだから、二年間のカスタマーサポートを保証するいわれもない。


「SFゲームとSFインディーゲームについて」

note.com
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京都SFフェスティバルでかもリバー氏と「SFインディーゲームの部屋」企画でしゃべった内容がもとになっている。
ゲームに固有のジャンルはだいたいメカニックを現す。SFやファンタジーなどはゲームの歴史の初期に物語や環境の様式を指し示すために持ち込まれたもので、実はゲームのオーディエンスにとってはあまり重要でなかったりする。では逆になぜ小説や映画などでSFやファンタジーといったタグがより重要に機能しているのかというと、それが物語だけでなく文章やルックのモードを左右するからだ。ゲームは文章やルックだけでは(たいていの場合)動かない。
この点ミステリはおもしろくて、小説や映画におけるミステリはプロットのカタを定める。ゲームでミステリであることはプロットの展開だけでなく、メカニックにも影響する。これはSFゲームにはない特徴だ。
ゲームにおけるジャンルについて考えるのはだからおもしろいのだけれど、むずかしいことでもある。ジャンルという生き物は貪欲で、放っておけば際限なく領域を広げつづける。かといって枷をはめようとすると今度はうまく回らなくなるおそれもある。それらのバランスの調整に腐心したところで、そもそも有用なのかという問題も出てくる。まあ、有用でないからこそ考えるのにちょうどいいのかもしれない。

「プレイ中に不自由な操作を強いてくるゲームについて」

note.com
ジャンル的なものに対する自分の興味はジェンガや将棋崩しに似ている。あるジャンルから「何」を抜けば、そのジャンルはジャンルでなくなってしまうのか。この問題意識はゲームというメディアそのものにも適用される。ゲームから何を抜けばゲームでなくなるのか。ゲームをゲームたらしめているものの正体を知りたい、という学究的な理由ではなくて、むしろゲームがあらゆるパーツを抜かれてもなおゲームでありつづけること、あるメディアが数や要素に還元しえないことを期待しているのかもしれない。魔法がそこに残ることを信じたい。神秘主義者なのだな、とおもう。

『文体の舵の取り方』(フィルムアート社)

www.filmart.co.jp
厳密には書いてはいない。話したことのログが書き起こされたもの。
経緯は複雑だ。大戸又さんのサークルでハイファンタジー小説合同が企画され、その過程でさまざまに神妙な出来事が生じ、フィルムアート社から「合同誌で執筆中の小説を使って、ル・グィンの創作指南本『文体の舵を取れ』に即した合評会をやり、そのログを本にしないか」という流れになった。どこがどうなればそのような流れになるのか、とおもわれそうだが、なったものはしようがない。そうして、そのような本が出た。
わたしの小説についても合評会のログが載っている。けれども、実際に頒布されたハイファンタジー小説合同本誌のほうにそのタイトルは載っていない。どういうことなのかは察しのいいおとなならわかってくれることとおもう。わからないのなら、はやく成長しておとなになってほしい。
大戸さんには申し訳なさしかない。ダメだな、とおもいます。

SFマガジン 2025年8月号/ウィリアム・ギブスン特集』(早川書房

www.hayakawa-online.co.jp
ギブスン特集ということで〈スプロール三部作〉のひとつ『カウント・ゼロ』のガイドを書いた。ギブスンについてはぼんやりとした理解しかなかったのでガイドを書くためにいろいろ調べて、結果、ギブスンについてみんなぼんやりとした理解をしているのだな、ということがわかった。

ユリイカ/特集=宮崎夏次系』(青土社

www.seidosha.co.jp
宮崎夏次系の全作解題を半分担当した。もともと、紙月真魚氏のほうへ依頼されていた案件だったのけれど、ちょうど氏のプライベートが大変な時期だった*3ので、ヘルプに呼ばれたという形。宮崎夏次系はデビュー時から読んできて好きな作家だったのだけれど、その作家性についてちゃんと向き合って考えたことがなかったので、よい機会になった。

『Philosofur 6』(Philosofur編集部)

alice-books.com
ケモノ/furry系をメインに扱う評論誌。評論界隈から見ればケモを対象にすることが、ケモ界隈から評論を扱うことがそれぞれ稀なことで、ユニークな試みだとおもう。わたしはvol.4で初めてお誘いを受けて、そのときはチップとデールの成立史を書いた。日本語で書かれたチップとデールに関するテキストとしては史上最も真剣な代物であるだろうけれど、そもそもチップとデールに真剣な人間が日本にこれまでどれだけいたものかは知らない。
proxia.hateblo.jp
で、Vol.5では書けずじまいになって、Vol.6で復帰した。中身は映画『北極百貨店のコンシェルジュ』の評論。ちょうど、別件でパリ万博について調べたあとだったので、なんかそれなりにするりと書けた。

にゃるら氏インタビュー(interacrit)

note.com
noteで〈ゲームゼミ〉を主宰しているJini氏が、〈ゲームゼミ〉をベースに新しいメディアに衣替えするというのでその実質的な布石として出たインタビュー記事、という認識で多分合ってるはず。インタビュアーと序文はJini氏で、こちらはインタビュー本文の記事化を担当した。
なぜこれをやることになったかについては、複雑怪奇な経緯があるのだけれど、あまりにこんがらがっており、ところどころ不明瞭で情報不足なので文字で説明するのがめんどうくさい。いつか説明する気になったらします。利害関係者か知り合いなら直接お問い合わせください。


【小説】

・「千葉集」という名は創元SF短編賞の応募時にこしらえられたもので、受賞以来、いちおう小説を書くひとということになっている。小説のほうがわたしに書かれているかという意識を持ってくれているかはさだかでない。ないのだが、ちょうど今日、Kaguya Planetから新作短編がリリースされてくれた

『TOKI anthology』(展葉社)

「おばけとよふかし」という掌編を寄稿した。『TOKI anthology』は京都を拠点とするライフスタイルブランド、ANONYMの発行した文芸アンソロジー。ANONYMは特定の時刻をモチーフにしたハーブティーとコーヒーを販売しており、それをベースにしたお話を書かないかということで声がかかった。内容としては、三条京阪のスタバで幽霊(ハロウィンの仮装とかで見る白いシーツをかぶったような形態のやつ)に会うというやつ。三条京阪のスタバには半地下がある。

『ドンキーアーカイヴ vol.3 〈特集:異国〉』(V&R BOOKS)

「公爵の二つの領土」という短編を寄稿した。出生の関係で国際法上、身体=領土になってしまった公爵の話。わたしの書くものなので、公爵の体内には公国民であるネズミの書記官が棲んでいる。体内に孕まれた語り手というのは好きなモチーフで、その昔、米国防総省に使役され、時空間を超越して拒食症をばらまきまくる生物ミサイルにされたキツネの中に孕まれたその仔を語り手にした(途中で生まれる)話を書いたことがある。某社の編集者から「独りよがりすぎる」とコメントされたことをよくおぼえている。
『ドンキーアーカイヴ』は暴力と破滅の運び手氏が主宰している同人誌。坂永雄一氏、稲田一声氏、春眠蛙氏、藤見みのり氏といった面々が参加している。

『おとなの自由研究① 万博』(V&R BOOKS)

booth.pm
「聖ジャンボ伝」という翻訳ということになっている小説を寄稿した。19世紀のパリに〈バスチーユのゾウ〉という巨大なゾウの像*4が実在した*5のだけれど、それが実はほんとうは実際に生きたゾウで、ナポレオン帝政期の英雄に祭り上げられたけれど時代の変転でなんやかんのあった挙げ句、アメリカへと渡りP・T・バーナムの〈地上最大のショウ〉で有名なジャンボ(こちらも実在)というゾウになったという話。『Philosofur 6』のときに書いた「別件」とはこれのこと。
『おとなの自由研究① 万博』は暴力と破滅の運び手氏が主宰した合同アンソロ同人誌。19世紀のパリ万博にまつわる小説とか評論とかがいっぱい載っている。



 

*1:外見には分かりづらいが、リアルサウンドは扱う分野ごとに三部門くらいに分かれている。

*2:とはいえ、英語圏でも誰でも知っていたり厳密に定義されたことばかといえば、けっこうブレたりもしていてそこまででもない

*3:氏のプライベートが大変でなかった時期をわたしは知らないが

*4:ダジャレ

*5:レ・ミゼラブル』なんかにも出てくる

2025年の新作映画ベスト20+α




「女の子が好きなの?……それとも、男の子?」
「たぶん、テレビ番組が好きなんだと思う。」


 ――ジェーン・シェーンブルン監督『テレビの中に入りたい』


年々、「今年はこういう年だったね」といえるようなことがなくなっていきます。自分にとって映画とはアメリカのことであり、そのアメリカがあらゆる極、あらゆる層においていえることがなくなってきた、ということでもある気がする。
そんな趨勢のなかでも映画は公開され、観られていきます。

以下去年観た新作映画(24年公開含む)のランキング。対象作は120本ほど。土日に一回ずつ映画館に行った計算ですね。この数字から分かることは、こいつは新作をあらかじめ選別したうえで映画館に行っている、ということです。年間ランキングというのは対象を選ばない修羅が出すからこそ誠実さの保証がつくのであって、観る前からおもしろいとわかっている映画しか観ないようなやつの書くランキングを、読み物としてはともかく、なにかの価値を表すものとしては信用してならない。
以下のリストは、そのような貧しい土壌からやっと収穫された信用ならないテキストです。

proxia.hateblo.jp

本来なら『テレビの中に入りたい』が一位になるはずだったんですが、去年観てランキングに入れちゃったので除外します。
それでは始めましょう。

1.『SKINAMARINK/スキナマリンク』(カイル・エドワード・ボール監督)

映画というのは夢のようなもので、夢とはおぼろげな思い出のようです。そして、夢に近づけば近づくほどよい。
そういう意味では、去年の一位にした『テレビの中に入りたい』にも通じます。最近はそういう映画ばかりを求めてしまいますね。
監督の実家で撮られたLiminal Space的なイメージが不穏につるべうちされていく映画で、暗い廊下、おもちゃの散らばった子ども部屋、古いカートゥーンの映しだされた真夜中のテレビなどなど幼いころに観たプライマリーな悪夢のようで、居心地の良さと居心地の悪さが同時にせりあがってくる。
オススメはしません。映画.comのスコアは驚きの1・8です。Filmarksも2点台だったかな。ただ不安を煽るカットが重ねられていき、ストーリーらしいストーリー、ダイアログらしいダイアログもないこの映画を好きになろうとするのはすこしばかりの忍耐を要します。
しかし、確実に重要な作品ではある。かんたんにリミナルスペース的とはいいますが、リミナルスペースは一枚の画像に語りをとどめることで、背景となる情報を極限まで削ぎ落とすことで普遍的な不気味さを得ているのに対し、映像では連続しなければならないという枷が与えられます。バックルームズの映像作品の多くが結局のところ何かが追いかけてくるような、ありきたりのホラーの文脈に回収されてしまうのも単なる怠惰とは切り捨てがたい。
『スキナマリンク』はそんな困難な領域に100分もとどまろうとした。偉大なことではないですか。たとえ、それが三割がた事故っているようなものだとしても、やってはのけているのです。
近年日本に溢れるモキュメンタリーホラーが忘れたしまった、あるいは最初から向き合うことを拒絶してきた、不気味なもの/おぞましいものへの真摯さがある。
そして、その達成はすでに波及してもいる。海外での公開は2022年だったらしいのですが、ゲームの『mouthwash』が影響を公言しています。今後も増えていくでしょう。

2. 『名もなき者 A Complete Unknown』(ジェームズ・マンゴールド監督)


ボブ・ディランの伝記映画。監督は「アメリカ映画」の生き残り、ジェイムズ・マンゴールド。ティモシー・シャラメの扮するボブ・ディランがほんとうにまあ心底カスなわけですけれど、カスならではのすがすがしさというものはあります。カットも曲の入るタイミングもなにもかもほれぼれするぐらいにキマっている。
いまいましい生きものを、このうえなく美しく撮る。それは映画に許されたある種の特権であったわけですが、近頃ではそのようなドメインは縮小しつつある。
ちなみに去年は似たようなカスミュージシャン映画で『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』もありました。こちらも監督はアメリカ映画を撮ることを諦めない数少ないひとり、スコット・クーパー。『名もなき者』はいうてシャラメの愛嬌と若さでカス具合が口当たりよくなっているのですが、こっちはジェレミー・アレン・ホワイトなので、ちょっと憎々しさが残る。こちらもジェレミー・ストロングの甲斐甲斐しさでなんとか中和されてる印象はあります。
『名もなき者』に戻ると、エドワード・ノートンはこの年になってほんとうに良い味が出てきた。ここ十年はウェス・アンダーソン映画のアンサンブル俳優というイメージ(そういや、『ザ・ザ・コルダ』には出てなかったな)が強いですが、やはり傍に置くと独特の渋みが出る。なんとなく同じカゴに入れている俳優にはジョセフ・ゴードン=レヴィットがいて、こちらは近年『ナイブス・アウト』シリーズに出ずっぱりですね。あ、ナイブス・アウトの新作観忘れてた。

3.『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』(木頭/MTJJ&顧傑監督)

1は正直そんなにおぼえていなかったわけですけれど、2で度肝を抜かれました。
まずアクションがすごい。アニメでアクションがすごいってまあなんか画面を止めたときの絵面がすごいみたいな話になりがちなんですけれども、これは組み立てがすごい。なぜだか知らんのですが、異能バトルなのに実写のような重量感がある。
そして、バトル以外ではラスト、ラストね。あれはね、泣くよ。
そういえば、中国コンテンツが世界に浸透していくと仙俠ものが世界のオタクの常識になっていくということでもあり、なかなかすさまじいことだな、とおもいます。さんざんローカルなネタを文化の暴力で一般教養化してきた日本人が思いを馳せることでもないんでしょうけれども。
あとなんか”外敵”は結局あの国になるんだな、とおもったけれど、便利使いされているという点では日本のオタクコンテンツでもそんな変わらないかもしれません。

4.『レベル・リッジ』(ジェレミー・ソルニエ監督)

最近ではもう新作を無理にその年のうちに観るようなことにあんまり固執しなくなったのですけれど、その内訳を観ると、なんということはない、配信の新作をあとまわしにしているだけです。『ミーガン2』くらいなら、まあ観逃していいかという気分にもなるのですが、去年はビグローの『ハウス・オブ・ダイナマイト』があった、デルトロの『フランケンシュタイン』があった、バームバックの『ジェイ・ケリー』があった、グァダニーノの『アフター・ザ・ハント』があった。いずれも見逃せない名前です。ネトフリのものは劇場でいちおうかかりはするのですが、アップリンクで一週間二週間だけかかって配信にくるような映画を「劇場公開作」と呼んでいいものか。
そのようにして、ジェレミー・ソルニエの『レベル・リッジ』もありました。2024年のネトフリ作品です。要するになめてたやつが最強だった系映画なのですが、主人公の最強具合が半端ではない。銃を持った腐敗警官たちを相手に素手で立ち向かって圧勝していく。なんか、軍でそういう特殊な訓練を受けていたという設定なので、特殊な訓練さえ受けていればどんな事態でもなんとかなるというのが映画です。
そういうふうにいうと、80年代のご機嫌な暴力映画っぽいようですが、そこはソルニエなので、暴力に対する厭わしさがついてまわる。

5.『ワン・バトル・アフター・アナザー』(ポール・トーマス・アンダーソン監督)

https://note.com/schiva/n/n4c9c4871ccf8

おもしろいことには同年の新作群で比類ないほどおもしろいのですが、ポール・トーマス・アンダーソンのフィルモグラフィでは真ん中くらいの印象。おなじピンチョン原作なら『インヒアレント・ヴァイス』のほうが断然好きで、そらはまあPTAが「大人」になってしまったからでしょう。ずっと歪んだ父子関係*1を描いてきた作家が完全に『ファントム・スレッド』『リコリス・ピザ』と破壊的な男女関係を経たのちに、完全に父の側に振った映画を作った。ピンチョンを原作にしながら陰謀論大国アメリカにノレないというかズレまくる主人公を描くのは、PTAなりの社会批評なんだろうな、と観た時はおもいましたが、まあでも『インヒアレント・ヴァイス』もそんな話だったかもしれない。
そういえば、寓話的なアメリカ映画でいえば『スウィート・イースト』もそれなりに好ましかったです。『エディントン』は……まあ、アスターはパーソナルな不安によってドライブするタイプなので社会不安みたいなものを描くのにあんま向いてないんじゃないかな、って。

6.『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』(ニック・パーク&マーリン・クロシンガム監督)

問答無用におもしろいアニメーション。年始に観たのでよくおぼえてないですが、とにかくおもしろかった記憶があります。ストップモーションストップモーションらしいぎこちなさとなめらかさで動くのは、それだけでよいものです。
グルミットの甲斐甲斐しさはもはや世話焼き妻の域です。

7.『ブラックドッグ』(グアン・フー監督)

https://note.com/schiva/n/nf8fe752fef4f

北京五輪直前の中国の田舎を舞台にした、なんというのかな、菅原文太みたいな顔のシブい男とイヌが出てきて、高倉健みたいことをする映画です。
わたしは西部劇でもないくせに監督が「西部劇を撮りたかったんですよ」という映画がきらいなんですが、これはもうファーストカットから圧倒的で、なんかだだっぴろい平原でちんたらバスが走ってるさまをロングショットで撮っているかとおもっていたら、画面の手前からイヌが出てくる。イヌの群れが。ここまで群れられるのか、というくらい大量の野犬たちが大挙してバスへ押し寄せて、車体をひっくりかえす。
意味がわからない。
でも、すごい。
こんな西部劇はひとつも観たことがないのだけれど、すごくウエスタンを感じる。
これを西部劇だと言い張られたら、もう降参するしかないですよ。
やっぱり映画にはだだっぴろい大地が必要なんだよな。イヌ映画オブザイヤーです。

8.『ANORA/アノーラ』(ショーン・ベイカー監督)

人探し映画って集団でやるとおもしろいんですよね。ハードボイルドだと、リュウ・アーチャーだのマーロウだのが辛気臭く孤独に聞いてまわるじゃないですか。小説の時点であんなのなにがおもしろいのかとなってしまうんですが、個性豊かで利害関係の一致しない複数人がひとつの目標に向けてヨンボリと動くとこんなにも楽しい。海辺でバットを放り投げるところの謎の清々しさといったらないですよ。
ショーン・ベイカーはネトフリで『タンジェリン』を観て以来、なんかこう、芯にある湿っぽい生真面目さがいまいち好きになりきれない監督だったのですけれど、『レッドロケット』でどうしようもない人間のどうしようもなさを徹底的にカラッと描いてくれて大好きになりました。『アノーラ』はその発展系ですね。
アカデミー賞の御祝儀なのか、去年は京都シネマで初期作の特集もありまして、こちらもどれもおもしろかった。香港系密入国者がニューヨークの中華料理屋の出前配達担当としてひたすら自転車を駆って店と出前先を往復する『テイクアウト』はミニマリスティックで心地よく、題材をまんまUber Eatsに置き換えても通用しそうなアクチュアリティがありましたし、ポルノ女優と老婆の不思議な交流を描いた『スターレット』はベイカーの美点である美しくないけど逞しいひとびとの楽しさがよく出ていました。ある意味で印象的だったのはデビュー作の『フォー・レター・ワーズ』。いかにも90年代らしい(発表は2000年ジャスト)大学生スラッカームービーで、ベイカーも若手のころは大学生みたいな映画撮ってたんだなあ、とほんわかした気持ちになれました。

9.『ニッツアイランド 非人間のレポート』(エキエム・バルビエ&ギレム・コース&カンタン・ヘルグアルク監督)

終わりかけた大規模オンラインゲームで最後の日々を過ごすひとびとの群像。かなり映画的に撮っていて、おそらくそのせいで、ゲーマーたちからの評判はかならずしも芳しいものではない。
でも、わたしたちが仮想世界に求めている幻想のすべてが刻印されています。滅びゆく世界、猟奇カルト集団を作って人間狩りを行うひとびと、地に足についた生活との二重性、重力から解き放ってくれるグリッチバグ、「世界の果て」まで歩く旅……実際にプレイしたいかは別にして、実際にそんなものが存在したのかは傍に置いて、わたしたちがゲームに夢見るもう一つの現実がそこには映し出されている。その魅力には抗いがたい。
MMOでのリアルを別の角度から映したドキュメンタリーとしては『イベリン:彼が生きた証』もよかったですね。こちらは直球に感動ストーリー。わたしはMMOの経験には乏しいのですが、あの感動は覚えている、この画面の向こうには生きた人間が存在して、こうして対話してくれているのだという、あの感動を。

10.『ブラックバッグ』(スティーブン・ソダーバーグ監督)

https://note.com/schiva/n/n2a1db3565e52

ヘンテコなスパイ陰謀劇。マイケル・ファスベンダーケイト・ブランシェットのMI6夫婦が組織の内部に潜む裏切り者を探す……というあらすじよりだいぶ変な映画で、雰囲気の暗さに反して実質ラブコメというかスクリューボールコメディみたいなところはある。
ソダーバーグの変さは当たり外れが大きくて、前作の『プレゼンス』はハズレのほうで、こっちはアタリのほうですね。
ダルいところはところどころ、というか、かなりある映画ではあるんですけど、ふしぎと観た後に残るというか、やっぱり愛の物語というのはスウィートなもののりも、クレイジーで破壊的なほうがよい。
変な映画でいえば、去年は『スムース・トーク』と『サターン・ボーリング』でしたね。『サスカッチ・サンセット』やその他A24映画は……悪くないけど狙いすぎ!

11.『何も知らない夜』(パヤル・カパーリヤー監督)

モキュメンタリーなどとはまた違う文脈で、フィクションなんだけどドキュメンタリーで、ドキュメンタリーなんだけどフィクションというインドの政治状況のあいまいさそのもののようなスタイル。『私たちが光と想うすべて』のほうはなんかだるかった。
インド映画といえば、去年は生まれて初めてサタジット・レイを観ました。作品自体はあんまり楽しくないのに後世の映画に影響与えすぎだろ、とおもいました。ウェス・アンダーソンもそうだし、バームバックにいたっては『ジェイ・ケリー』なんて『主人公』まんまの映画出してくるし。

12.『教皇選挙』(エドワード・ベルガー監督

広義のデスゲームもの、は、やはりキャラと会話のおもしろさがすべてで、あの繊細さがかけられもみられなかった『西部戦線〜』の監督がこれを取るとは驚かされます。

13.『サブスタンス』(コラリー・ファルジャ監督)

観ているあいだはおもしろい。それでいいんだとおもう。それにしても昨年度のアカデミー賞作品賞はめずらしくどれもおもしろかったですね。この記事のおもしろかったリストには『ブルータリスト』などは含まれていませんが、ふつうに好意的に観ました。あれはオープニングのタイトルシーケンスが120点すぎたんだよな。身体をめぐる妬み嫉みの映画としては『顔を捨てた男』がありまして、これもあんまりびっくりはしないのですけれど、楽しみました。

14.『ズートピア2』(ジャレッド・ブッシュ監督&バイロン・ハワード監督)

proxia.hateblo.jp

続編としてはこれ以上望みうるものはない。背景なども含めた所感は↑の記事に、脚本における反復の分析については今月18日の京都文フリで出る同人誌に書いてるからよろしくな!(唐突な宣伝)


よかった2でいえば、『ブラック・フォン2』もありましたね。羅小黒の2といい、2とはついてなかったけれど『シャッフル・フライデー』も好きだった。ツーイヤーでしたね。

15.『リアルペイン〜心の旅〜』(ジェシー・アイゼンバーグ監督)

集団でそぞろ歩く様を捉えた映画って実はあんまりないような気がして、そこでの巧さが『アノーラ』とならんでよかった。前作も好きだったし、アイゼンバーグはよい監督だとおもいます。

16.『28年後…』(ダニー・ボイル監督)

シェイクスピアの引用ってえのはこうやるんですよ、スカーレットさん。『ビー・キーパー』(観たのは一昨年)といい、レイフ・ファインズの類稀さが痛感される今日この頃です。

17.『野生の島のロズ』(クリス・サンダース監督)

キャラ描写の古臭さは鼻につくものの、感情をつかむ技術はマエストロ。そして、映画というのは常に後者が勝つのだ。
去年はなにかとクリス・サンダースに縁のある映画がヒットした年で、『ヒックとドラゴン』が監督コンビの片割れデュボアの手で実写映画化し、『リロ・アンド・スティッチ』も実写化でスティッチ役をそのままサンダースがやっていました。偉大なディズニー・レジェンドのひとりです。もうディズニー・レジェンドなってたんでしたっけ?

18.『ドールハウス』(矢口史靖監督)

ドラム式洗濯機に死体が詰められたフィクションにハズレなし。たとえば、『劇光仮面』最新巻とかさ。

19.『ミッションインポッシブル:ファイナルレコニング』(クリストファー・マッカリー監督)

おもしろさの方向性としては『メガロポリス』と似てるんだよな。なんというか、「これに1億ドルかかってる事実そのものがおもしろい」みたいな。でも、『メガロポリス』よりは確実におもしろいです。『メガロポリス』をおもしろいとかつまらないとかいう軸で測る行為自体がもはや間違いなのだとしても。主演スターの名前を出す前に『メガロポリス』って三回もいっちゃった。トム・クルーズ

20.『スーパーマン』(ジェームズ・ガン監督)

犬映画オブザイヤーその2。今年のイヌ映画オブザイヤーノミネート作は以下の通りです:『ブラックドッグ』、『スーパーマン』、『チョッキン!』、『犬の裁判』、『Flow』。グルミット? あいつは立派なニンゲンですよ。
去年のヒーロー映画・ドラマでおもしろかったやつというと、これの次に『Dispatch』が来てしまいます。『サンダーボルツ』もあたいは好きだよ。

その他良かったなっておもった映画

『満ち足りた家族』、『バレリーナ』、『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』、『顔を捨てた男』、『罪人たち』、『サンダーボルツ』、『プロフェッショナル』、『ノーアザーランド』、『ロングレッグス』
、『オーダー』、『トワイライトウォリアーズ』、『ひゃくえむ。』、『星つなぎのエリオ』、『ドリーミン・ワイルド』、『シャッフル・フライデー』


noteに書いて案の定3日で飽きたんですが、その日に見た映画の感想を記事に起こしておくと、こういうまとめ記事つくるとき便利! ということに気づきました。いまさら? いまさらね。

*1:本人はその由来を不気味なまでに語ろうとしないのですが