名馬であれば馬のうち

読書、映画、ゲーム、その他。


読書、映画、その他。


2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ロベルト・ボラーニョ、野谷文昭・訳『アメリカ大陸のナチ文学』(1996, 訳2015)

書き出し エデルミラ・トンプソン・デ・メンディルセ 一八九四年ブエノスアイレス生まれ――一九九三年ブエノスアイレス没 十五歳のときに処女詩集『パパへ』を出版、これによりブエノスアイレスの上流社会の並み居る女流詩人のなかでささやかな地位を得た。以…

2015年8月の新刊チェックリスト

盛り上がってまいりました [from 藤原編集室] シェリー・ディクスン・カー*1『ザ・リッパー 切り裂きジャックの秘密 上・下』扶桑社ミステリー ジャック・カーリイ『髑髏の檻』文春文庫 フランク・ブレイディー『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの…

最終試験

何の科目だったかは忘れたがテストを受ける。どうやらジャンプマンガに関わることらしい。学生たちはひとりずつ教官の部屋に呼び出されて最終試験を受けさせられる。僕はその科目の授業に(珍しく)毎回欠かさず出席していたので、パスできる自信を持ってい…

大森望、中村融、柳下毅一郎、磯達雄「殊能将之ができるまで」

ニコニコの映画かなにかに金をはらったことはあってもニコ生に金を払うというのは初めての屈辱でありまして、まあでも殊能だししょうがないよな、これも香典あるいはご焼香みたいなもんだよなと自分をごまかしながら1000円払って観るわけです。 内容は『S-F…

ニコラ・ド・クレシー『プロレス狂想曲』

日本でもめっちゃ評価されてる部類に入るはずだけれど具体的な仕事となると『天空のビバンドム』以外になかなかまとまったものの読みにくい天才BD作家、ニコラ・ド・クレシー。 そんなド・クレシーが日本のジャンプスクエアかどっかに月一で連載していた作品…

トレヴェニアン、江國香織・訳『パール・ストリートのクレイジー女たち』(集英社)

いわゆる自伝的小説を読まされる際に作者作品における虚実の距離をいかに測るかという難問がありまして、基本的にはそういうことを考えだすとめんどくさい。いっそ、各々が感じる「それっぽさ」で測ればいいと思います。 妹と母と僕は、ノースパールストリー…

名探偵マックス〜『犬神家の一族 怒りのゴクモン・アイランド』

・『マッドマックス 怒りのデスロード』の褒め言葉で多いのが「セリフに頼らない脚本づくり」です。 ・これからの本格探偵もセリフに頼らない推理が求められるのではないか。 ・サムズアップと作図とカーアクションだけでコミュニケーションを図るボサボサ頭…

『キング・オブ・ザ・ヒル』と『ファミリー・ガイ』

hulu では「アメリカで大人気(シンプソンズやサウスパークほどじゃないけど)なのに、日本では全然紹介されてないアニメ」をなぜか一シーズンだけ配信している。 上の画像は『キング・オブ・ザ・ヒル』*1。ランタイム一話二十数分のうち五分の一から三分の…

藤田祥代『女性推理小説家の伝統 ―A. K. Green から P. D. James まで―』

金城学院大学大学院での博士論文。pdfはここから。 ネットで公開されているミステリ関連の論文はそれなりにあるけれど、博士論文まんまとはめずらしい。 内容はアン・キャサリン・グリーン、アガサ・クリスティー、ドロシー・L・セイヤーズ、P・D・ジェイム…

クリスチアナ・ブランド『薔薇の輪』

トラの子供は基本 cub である。 ブランドについて語るときわたしたちが語ること クリスチアナ・ブランドは英国黄金期本格の最右翼とかいいますか、本格オブ本格みたいなものを求められてはそういうもの以外を訳されると「こんなの私たちのブランドじゃない!…

時系列逆順物語のミステリ性

枕 孔田さんがブログでミステリっぽいMVを紹介されておられて、そういえばさいきんってか結構前にミステリっぽいMVみたなあ、っつって。 それがこれ。 時系列逆順物語とは何か。と、ぼくの考えるミステリーの基本構造 Maroon 5 の「Maps」のMV(監督はぼくら…

J・P・マンシェット、野崎歓・訳『殺戮の天使』

淫蕩にして冷徹な女たちよ、この書物をあなたたちに捧げる。 p166 その女は自転車に乗ってやってくる。自転車でもバイクでもなく自転車なのが重要だ。 彼女は美貌と巧言を手管に街の上流階級へと潜りこみ、じっと息を潜める。揉め事を探す。誰かが誰かを殺し…

つくしあきひと『メイド・イン・アビス』1〜3

・後輩から押し貸しされたので読んだ。 ・緻密に組んだ設定から話が湧き出ている。 ・冒険行の末に行方不明となった母親を求めて奈落へ潜る、という『ハンターハンター』の母娘ヴァージョンみたいな話。そこに世界の秘密や相方の半ロボ少年のアイデンティテ…

佐藤哲也『シンドローム』福音館書店

つまりB級映画が本質的に無用で、時間つぶしにもならないような存在だとすれば、これは本質的に無用で、時間つぶしにもならないような状況であり、言うなれば頭の悪い映画製作者や頭の悪い脚本家が思いついたような状況なので、そこでは誰もが頭の悪い映画製…

2015年7月の新刊チェック

柴田元幸編訳 『ブリティッシュ&アイリッシュ・マスターピース』スイッチ・パブリッシング 久生十蘭 『内地へよろしく』河出文庫 レオ・ペルッツ 『第三の魔弾』uブックス 法月綸太郎 『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』講談社 マルグリット・ユルスナー…

2015年上半期の新作映画ベスト10

・特に公的に何かしらのランキング投票に関わっているわけでもなく、したがって新作映画の序列についてなど何の義務も背負っていないのだが、区切りや境界というのはおそらく大切な仁義で、そういうのがないと人間の内臓は四散してしまうこと必至。「2015年1…