名馬であれば馬のうち

読書、映画、ゲーム、その他。


読書、映画、その他。


2015-01-01から1年間の記事一覧

ニコラ・ド・クレシー『プロレス狂想曲』

日本でもめっちゃ評価されてる部類に入るはずだけれど具体的な仕事となると『天空のビバンドム』以外になかなかまとまったものの読みにくい天才BD作家、ニコラ・ド・クレシー。 そんなド・クレシーが日本のジャンプスクエアかどっかに月一で連載していた作品…

トレヴェニアン、江國香織・訳『パール・ストリートのクレイジー女たち』(集英社)

いわゆる自伝的小説を読まされる際に作者作品における虚実の距離をいかに測るかという難問がありまして、基本的にはそういうことを考えだすとめんどくさい。いっそ、各々が感じる「それっぽさ」で測ればいいと思います。 妹と母と僕は、ノースパールストリー…

名探偵マックス〜『犬神家の一族 怒りのゴクモン・アイランド』

・『マッドマックス 怒りのデスロード』の褒め言葉で多いのが「セリフに頼らない脚本づくり」です。 ・これからの本格探偵もセリフに頼らない推理が求められるのではないか。 ・サムズアップと作図とカーアクションだけでコミュニケーションを図るボサボサ頭…

『キング・オブ・ザ・ヒル』と『ファミリー・ガイ』

hulu では「アメリカで大人気(シンプソンズやサウスパークほどじゃないけど)なのに、日本では全然紹介されてないアニメ」をなぜか一シーズンだけ配信している。 上の画像は『キング・オブ・ザ・ヒル』*1。ランタイム一話二十数分のうち五分の一から三分の…

藤田祥代『女性推理小説家の伝統 ―A. K. Green から P. D. James まで―』

金城学院大学大学院での博士論文。pdfはここから。 ネットで公開されているミステリ関連の論文はそれなりにあるけれど、博士論文まんまとはめずらしい。 内容はアン・キャサリン・グリーン、アガサ・クリスティー、ドロシー・L・セイヤーズ、P・D・ジェイム…

クリスチアナ・ブランド『薔薇の輪』

トラの子供は基本 cub である。 ブランドについて語るときわたしたちが語ること クリスチアナ・ブランドは英国黄金期本格の最右翼とかいいますか、本格オブ本格みたいなものを求められてはそういうもの以外を訳されると「こんなの私たちのブランドじゃない!…

時系列逆順物語のミステリ性

枕 孔田さんがブログでミステリっぽいMVを紹介されておられて、そういえばさいきんってか結構前にミステリっぽいMVみたなあ、っつって。 それがこれ。 時系列逆順物語とは何か。と、ぼくの考えるミステリーの基本構造 Maroon 5 の「Maps」のMV(監督はぼくら…

J・P・マンシェット、野崎歓・訳『殺戮の天使』

淫蕩にして冷徹な女たちよ、この書物をあなたたちに捧げる。 p166 その女は自転車に乗ってやってくる。自転車でもバイクでもなく自転車なのが重要だ。 彼女は美貌と巧言を手管に街の上流階級へと潜りこみ、じっと息を潜める。揉め事を探す。誰かが誰かを殺し…

つくしあきひと『メイド・イン・アビス』1〜3

・後輩から押し貸しされたので読んだ。 ・緻密に組んだ設定から話が湧き出ている。 ・冒険行の末に行方不明となった母親を求めて奈落へ潜る、という『ハンターハンター』の母娘ヴァージョンみたいな話。そこに世界の秘密や相方の半ロボ少年のアイデンティテ…

佐藤哲也『シンドローム』福音館書店

つまりB級映画が本質的に無用で、時間つぶしにもならないような存在だとすれば、これは本質的に無用で、時間つぶしにもならないような状況であり、言うなれば頭の悪い映画製作者や頭の悪い脚本家が思いついたような状況なので、そこでは誰もが頭の悪い映画製…

2015年7月の新刊チェック

柴田元幸編訳 『ブリティッシュ&アイリッシュ・マスターピース』スイッチ・パブリッシング 久生十蘭 『内地へよろしく』河出文庫 レオ・ペルッツ 『第三の魔弾』uブックス 法月綸太郎 『怪盗グリフィン対ラトウィッジ機関』講談社 マルグリット・ユルスナー…

2015年上半期の新作映画ベスト10

・特に公的に何かしらのランキング投票に関わっているわけでもなく、したがって新作映画の序列についてなど何の義務も背負っていないのだが、区切りや境界というのはおそらく大切な仁義で、そういうのがないと人間の内臓は四散してしまうこと必至。「2015年1…

J・P・マンシェット、岡村孝一・訳『地下組織ナーダ』ハヤカワ・ポケット・ミステリ

「希望なんて持ってられやしねえ。そんな奴らのために俺は飲むんだよ。政治的に正しいとか下らねえとか、そんなことはかまっちゃいられねえ。ともかくな、歴史ってやつが俺たちみてえな人間をこさえたんだ。てえことは文明なんてもなあ、いずれにしろ滅びつ…

麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』新潮社

「やっぱり。叔父さんは優しいね。じゃあね。今日は本当にありがとう」 p.310 ・読書会の課題本。読書会では田舎って最悪だねトーク*1に花が咲いた。 ・これは最初に言っておいたほうがいいと思うのですが、麻耶信者です。考察とかしないタイプの。否定神学…

小島アジコ、麻草郁『アリス イン デッドリースクール』

・俺たちは人間性を証明するために新刊チェック以外の活動をしなければならない。 ・四コマ漫画が苦手だ、とする必要もない告白をすると「またきららdisか……」みたいな受けとられ方をして甚だ不本意なんでありますれけど、どこの会社が、とか、だれの作品が…

2015年5月-6月の新刊

スティーヴン・キング『ドクター・スリープ 上・下』文藝春秋 ロベルト・ボラーニョ『アメリカ大陸のナチス文学』白水社 『増補改訂版 ウィリアム・ギブスン』彩流社 ハリー・スティーヴン・キーラー 『ワシントン・スクエアの謎』*1論創社 ジョルジュ・ペレ…

2015年4月の新刊チェック

エドゥアール・ルイ 『エディに別れを告げて』東京創元社 カズオ・イシグロ 『忘れられた巨人』早川書房 ジェニファー・イーガン 『ならずものがやってくる』ハヤカワepi ハーマン・G・ワインバーグ 『ルビッチ・タッチ』国書刊行会 ジーン・ウルフ 『ジーン…

2015年3月の新刊チェック

month of 珠玉 [藤原編集室より] ☆デニス・ルヘイン『ザ・ドロップ』ポケミス ブレイク・クラウチ『ウェイワード 逸脱者たち』ハヤカワNV 復アンナ・カヴァン 『氷』ちくま文庫 ◎ジェフリー・ディーヴァー 『限界点』文藝春秋 復イーデン・フィルポッツ 『だ…

2014年度新本格新刊本屋大将大賞

概要: 2014年に読んだ新刊ベストです。 ベスト◯◯形式って毎年やってると飽きるもので、年ごとに野球やサッカーのベストオーダー形式にしたり目先を変えているんですがどうもしっくりこない。今年、今年はね、長谷川町蔵がこんなことを言っていたので、映画…

2015年2月の新刊チェック

ゆゆ式に目覚めて七時間で眠りに落ちた。 藤原編集室より 『アンドレ・ジッド集成 I』ちくま書房 高山宏 責任総編集『ユリイカ 3月臨時増刊号 総特集=150年目の 『不思議の国のアリス』』青土社 ジョージェット・ヘイヤー『グレイストーンズ屋敷殺人事件』論…

2015年1月の新刊チェック

あけおめ。 去年読んだ新刊で面白かったやつ? フィクションならイアン・マキューアンの『甘美なる作戦』(新潮クレスト・ブックス)、ノンフィクションならマイケル・ルイスの『フラッシュ・ボーイズ』ですね。 今年もよろしくお願いします。 藤原編集室よ…