名馬であれば馬のうち

読書、映画、その他。


読書、映画、その他。


今週のトップ5:『ゼロヴィル』、『ワイルド・ギャンブル』、『デッドプール』、『サウスポー』、『神様メール』、『夢酔独言』、『マコちゃんのリップクリーム』、『ごっつぁんです』、『ドリフターズ』五巻、『おかか』二巻

スティーヴ・エリクソン『ゼロヴィル』

ゼロヴィル

ゼロヴィル

 おもしろすぎて何を言えばいいのかすらわからない。

アンナ・ボーデン&ライアン・フレック監督『ワイルド・ギャンブル』

 ベン・メンデルソーン演じるギャンブル狂いの中年クズ野郎とライアン・レイノルズ演じるアイオワに落ちてきた天使が一発逆転人生を目指してアイオワからニューオリンズまで旅するBL(「ボーイズがロードムービーする」の略)映画。元ネタはほぼ確実にアルトマンの『ジャックポット』。

 メインの題材であるギャンブルを活かして、二人の表情の読み合いとごかまし合い(騙し合いでないのがにくい)に映像の時間的リソースをつぎこんだ結果、ベン・メンデルソーンの繊細な表情演技を愛でるベン・メンデルソーン映画になってしまった。
 そういうところが良し悪しで、僕なんかベン・メンデルソーン大好きで生きているわけですからたいそうな傑作だななどと思うわけですが、世間的にはベン・メンデルソーンを小汚いおっさんとしか認識していないらしく、映画感想サイト界隈での評価は展開のオフビートさもあいまって絶望的に低い。
 仔猫を後生大事そうに扱うベン・メンデルソーンなんてこの先で生きているうちに観られるかどうかわからないカットなのだし、そういう可能性を素通りしてどうして映画なんか観ていられるのか理解に苦しむ。

ティム・ミラー監督『デッドプール

proxia.hateblo.jp

 ジョージ・ミラーベネット・ミラー、クリス・ミラー(『シュレック3』)、クリス・ミラー(『21ジャンプストリート』)ときてティム・ミラーと来たもんだ。『We're the Millers』*1。平均すればアンダーソン一族より強いんじゃないか?

真利子哲也監督『ディストラクション・ベイビーズ


映画『ディストラクション・ベイビーズ』予告編

 ときたまこっ恥ずかしくなるショットも散見されるけれども、理由もなく人を殴りまくる映画はいいものです。

アントワーヌ・フークア監督『サウスポー』


ジェイク・ギレンホール驚異の肉体改造!『サウスポー』予告編

 こっちは家族のため、というちゃんとした理由で人を殴りまくる映画。
 そんなに悪い作品でもない。ただ、多すぎる要素を削って30分短くするか、あるいはもう30分長くして説明を付け足すかしてほしかった、という松江哲明の言葉がこのうえなく正しくはまるのも確かなわけで。
 全体的に散漫な物語をジェイク・ギレンホールが『ナイトクローラー』にひきつづき破格の迫力でなんとかつなぎとめているけれども、いかんせんカメラが彼の熱演を十全に捉えきれてなくて、もっとなんというか、肉の生々しさとかみずみずしさを活かしてほしかったな。ボクシング映画ってそれでしょう。特訓シーンの儀礼的なモンタージュなどではなく。

ジャコ・ヴァン・ドルマル監督『神様メール』


映画『神様メール』予告編

 大筋としては聖書をリベラルで現代的な観点からアップデートしたいなあ、みたいな話で、いまさらそういうこと言ってみたってはじまらないんじゃないのと思わないでもないんだけれども、まあ別に何を語るかは監督の自由なのでいいんじゃないかと思います。

勝小吉『夢酔独言』

夢酔独言 (講談社学術文庫)

夢酔独言 (講談社学術文庫)

 幕末版の『ディストラクション・ベイビーズ』みたいな勝海舟のオヤジの自伝。

尾玉なみえマコちゃんのリップクリーム

 いつのまにか全巻 kindle に落ちてたのでガバッと買ってガバッと読んだ。
 姉漫画でしたね。姉フィクションを何が姉フィクションたらしめているか、というのはあんまりみんな考えなくてほとんど感性に頼るから、シスコンとマザコンを取り違えた母性姉漫画が氾濫しているわけですが、尾玉なみえ先生はちゃんとそこの手続きを踏んでいる。ケヴィン・ウィルソンの「今は亡き姉ハンドブック」に値する作品を描きうるのは日本どころか世界で尾玉なみえ先生だけというこの現状。

 ところで、この人は意外にシリアスな恋愛を描くのがべらぼうに上手い。『よい子のための尾玉なみえ童話集』は何も偶発的な事故ではなかったんですね。

ドリフターズ』五巻

 だんだん状況が『クルセイダー・キングス』のモンゴル帝国来襲みたくなってきた。

 それにしてもほとんど密室での会話劇ですよね。
 なんか人とか吸血鬼とかがめっちゃ死んでるんで平野耕太は基本的にアクションの人だと思われているふしがあるけれども、どちらかといえば、シェイクスピア的な長台詞を中心にリズムを組み立てていく作風で、舞台劇ならともかく、そういうのをアニメ化するのってナチュラルなようでいて案外キッツイんじゃないかなあ。

まつだこうた『おかか』二巻

おかか(2)<完> (ヤンマガKCスペシャル)

おかか(2)<完> (ヤンマガKCスペシャル)

 完結してしまった。
 大人のための夏休みノスタルジー漫画というポジションに落ち着いた感はある。

岡村賢二『ごっつあんです』

ごっつあんです(1) (ニチブンコミックス)

ごっつあんです(1) (ニチブンコミックス)

相撲版『グラゼニ』。
野球と違って相撲界の経済ってあまり知らないので、「へー知らなかったなー」と感心することしきり。
意外と複雑な年金積立制度とか。

*1:ローソン・マーシャル・サーバーの『なんちゃって家族』の原題