名馬であれば馬のうち

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日本で観られるマンブルコア映画一覧

(2017年5月13日: 作家情報を最新のものに更新)

雑なあらすじとわたし

 余人には内緒だが、映画における雑なあらすじ探しを日々の暇つぶしにしている。wikipedia に載ってるようなあらすじもたいがい雑なのが多いが、金が絡んでるはずのところでも案外手を抜いてたりする。今日も iTunes でこんな雑なあらすじを見つけた。
f:id:Monomane:20160324212603p:plain


 いくらなんでもなげやりすぎる。
 『新しい夫婦の作り方』(Digging For Fire)はジョー・スワンバーグ監督の最新作で、スワンバーグは2013年の『ドリンキング・バディーズ』(Drinking Buddies)以降、2014年の『ハッピー・クリスマス』(Happy Christmas*1、そして2015年の本作とこのところ立て続けに紹介され、昨年には『ハンナだけど、生きていく!』(Hannah Takes the Stairs, 2007)がスワンバーグ作品として初の劇場公開と、これまでのマンブルコア勢の扱いからしてみれば異例ともいえる厚遇を享受している。
 

マンブルコアとはなにか

 マンブルコアといった。ジョー・スワンバーグはマンブルコアに属する作家の代表格とみなされている。属すると言われても所属先自体よくわからない。マンブルコアとはなにか。
 そこらへんは本邦におけるマンブルコアの第一人者である山崎まどか先生の説明に詳しい。
http://romanticaugogo.blogspot.jp/2009/08/blog-post.html
『ハンナだけど、生きていく!』とは?“マンブルコア”とは何か? – IndieTokyo

 基本的には同じようなデジカメでかつ低予算で、誰の力も借りずに映画を作っている。つまりお金がないのでみんなで協力しあって、その横の連帯があって「マンブルコア」が確立してきたと。ですので、志を同じくして集まったという訳ではないんです。それに関して、マーク・デュプラスは面白いことを言っています。「インディー映画における中産階級の死」と。中規模のインディー映画はもはや作れなくなってしまったのだと。少し前であればインディー映画はサンダンス映画祭とかでそれなりの俳優を集めて上映をされて、大手の配給会社に注目されて、それで日本にも入ってきたんですけど、そうした流れが途絶えてしまった。そのため、マンブルコアは入ってこなくなった。完全な自主制作・自主配給。正確には、配給ということはほとんどされていません。


 要するにここ十数年のあいだに出てきた自主制作のムーブメントであるらしい。
 wikipedia にも去年項目が立ち上がっていた。 
マンブルコア - Wikipedia


(追記)マンブルコア作家についてディープ掘り下げた映画ライターさんのブログ。詳細はここで学ぼう。
d.hatena.ne.jp


 見た感じ、二、三作品しか訳されていないように思われそうだが、上述のとおりスワンバーグだけで四作品も紹介済みだ。情報が古い。この一、二年でマンブルコア作品はだれも知らない間に日本へじわじわ進出しつつある。誰も知らないままに事態が進行しているので、ほとんど顧みられていないのが悲しいところではある。かくいう僕も『ドリンキング・バディーズ』とか『Computer Chess』とか買ったまま積んであるのでまるで観ていない。
 ちなみにマンブルコアの派生としてホラージャンルのマンブルゴアというのがあるらしい。こうなると言ったもん勝ちな世界な気がしなくもない。ホラーとか低予算でゴニョゴニョ聞き取りづらいのばっかだろ。


 というわけで、リスト作成もまた趣味であるのによって、現在日本でソフト化済みのマンブルコア(作家)作品リストを監督中心の視点でアップデートしてみた。 *2ドラマについてはクリエーター以上を務めたもののみ記載。
 参考:Mumblecore - Wikipedia


マンブルコア

アンドリュー・バジャルスキー(Andrew Bujalski)
・通称「マンブルコア界のゴッドファーザー*3

 『成果』(Results, 2015)*Netflix で独自配信。


ジョー・スワンバーグ(Joe Swanberg)
・日本で一番紹介されているマンブルコア作家。ラブな話が中心の人。弟のクリスもマンブルコア作家。俳優としてもウィンガード作品などに出演。2016年からはNetflix に地盤を得てますます絶好調。

 『ハンナだけど、生きていく!』(Hannah takes Stairs、2007)*未ソフト化、劇場公開のみ
 『ドリンキング・バディーズ』(Drinking Buddies、2013)
 『ハッピー・クリスマス』(Happy Christmas、2014)
 『新しい夫婦の作り方』(Digging For Fire、2015)
 『Easy』(Easy、2016〜)(ドラマ)*NETFLIX オリジナル
 『ギャンブル』(Win it all、2017)*NETFLIX オリジナル


デュプラス兄弟(Mark & Jay Duplass)
・出身こそマンブルコアながら、最近はリドリー・スコットジェイソン・ライトマンのヒキで比較的大きめの製作・配給会社(それでも予算数百万ドルでフォックス・サーチライトとかだけど)で作品を撮っているコメディ畑の兄弟監督。俳優としても『ゼロ・ダーク・サーティ』などに出演。出世頭の地位を利用してマンブルコアっぽいインディペンデンス映画のプロデュースもてがける。ハンナ・フィデルの『六年愛』とか、コリン・トレヴォロウ*4の『彼女はパートタイム・トラベラー』とか。ショーン・ベイカーの『タンジェリン』とか。

 『僕の大切な人と、そのクソガキ』(Cyrus, 2010)
 『ハッピーニート おちこぼれ兄弟の小さな奇跡』(Jeff, Who Lives at Home、2011)
 『ザ・ドゥ=デカ=パンタスロン』(The Do-Deca-Pentathlon、2012)


エヴァン・グローデル(Evan Glodel)

 『ベルフラワー』(Bellflower、2011)


ノア・バームバック(Noah Baumbach)
・もともとウェス・アンダーソン・ギャングの一員だったバームバックがマンブルコアなんてものに巻き込まれたのは、「マンブルコアのミューズ」グレタ・ガーウィグに惚れてしまったから。グレタと共同監督するまでの仲だったジョー・スワンバーグから彼女を強奪(多分)し、グレタイズム溢れる『フランシス・ハ』を撮り上げてしまった。

 『フランシス・ハ』(Francis Ha、2012)
 『ヤングアダルト・ニューヨーク』(When We're Young、2014)
 『ミストレス・アメリカ』(Mistress America、2015)


アレックス・ホルドリッジ(Alex Holdridge)
・日本へ比較的早い時期に紹介されたマンブルコア作家。

 『ミッドナイトキスをする前に』(In Search of a Midnight Kiss、2007)
 (共同脚本:)『フランクとシンディ』(Frank and Cindy、2015)*5

リン・シェルトン(Lynn Shelton)
・『マッド・メン』や『New Girl』といったドラマの監督回も日本に輸入されているといえばされている。*6

 『ラブ・トライアングル』(Your Sister's Sister、2011)



ブラッドリー・ラスト・グレイ(Bradley Rust Gray)
・リストに載ってるのはゾーイ・カザン主演の『エクスプローディング・ガール』のみ

  『エクスプローディング・ガール』(The Exploding Girl、2009)*東京フィルメックスでの上映のみ


エイミー・サイメッツ(Amy Seimetz)
・マンブルコア界隈で長らく俳優・監督として活躍してきたものの共同クリエイターを務めた2016年の amazon 製作ドラマ『ガールフレンド・エクスペリエンス*7まで作家としての彼女が日本で紹介されることはなかった。

 『ガールフレンド・エクスペリエンス』(The Girlfriend Experience)(ドラマ)*Amazon

 

備考
 ・「マンブルコアのテレンス・マリック」とアダ名されているアーロン・カッツwikipedia のマンブルコアリスト記載作品の紹介はないものの、同じくマンブルコア一派であるマーサ・スティーヴンスと共同監督した2014年の『ミッチとコリン 友情のランド・ホー!』(Land Ho!)がソフト化されている。
 ・ジョシュアとベンのサフディ兄弟は2015年に『神様なんかくそくらえ』が東京国際映画祭でグランプリを獲得し、日本でも劇場公開された。→2017年に『Good Time』でカンヌ国際映画祭コンペティションにノミネート。出世したもんだ。
 ・Medicine for Melancholy をてがけたバリー・ジェンキンスブラッド・ピットの製作会社である Plan B や『エクスマキナ』で高い評価を得たA24などと組んで『Moonlight』という作品に着手する模様。A24 Teams Up With Plan B to Produce Barry Jenkins’ ‘Moonlight’ | Deadline→ご存知の通り2016年度のアカデミー賞で作品賞を受賞。出世したもんだ。
 ・『Girls』などのレナ・ダラムも長編監督作の『Tiny Furniture』がリスト入り。俳優としてもタイ・ウエスト作品やジョー・スワンバーグ作品に出演している。→2017年現在、『Girls』が hulu などでも視聴可能に。あと山崎まどか氏の翻訳でエッセイ『ありがちな女じゃない』も出版された。
 ・The Color Wheel などのアレックス・ロス・ペリーは実写版『くまのプーさん』やクローネンバーグ監督予定のドン・デリーロ原作『The Names』の脚本を担当する予定。監督作も軒並み高評価を受ける、今アメリカで最もアツい若手映画人の一人。
 ・日本語版 wikipedia ではデイヴィッド・ゴードン・グリーンの All the Real Girl もマンブルコアとされているようだけれど。いちおう彼はアーロン・カッツの『ランド・ホー!』のエグゼクティブ・プロデューサーでもあるけれども。


マンブルゴア枠

 wikipedia のリストを観るかぎり、アダム・ウィンガード以後の米英インディペンデント・ホラー界のよさげなやつらを(「マンブルコア」がバズワード化したのをいいことに)片っ端からほうりこんでみました、って感じなのでどこまで信頼できるか。ただ、ウィンガードやタイ・ウエストあたりはマンブルコアとモロに交流あるし、スワンバーグやデュプラス兄弟もホラーをよく撮ってたりする。


アダム・ウィンガード(Adam Wingard)
・いまや押しもオサレもせぬインディペンデント・ホラーの若手ナンバーワン。一時期スワンバーグとツルんでいたらしく、彼と共同監督作品を撮ったり、『ビューティフル・ダイ』に出演させたりしていた。wikipedia でマンブルコア扱いされているのはそのせいなのか*8

 『ビューティフル・ダイ』(A Horrible Way To Die、2010)
 『サプライズ』(You're Next、2011)
 『ザ・ゲスト』(The Guest、2014)
 『ブレアウィッチ』(Blair Witch、2016)
 『デスノート*9(Deth Note、2017)*Netflix


タイ・ウエスト(Ti West)
・マンブルコアとマンブルゴアの結節点。ウィンガードの『サプライズ』に出演したり、スワンバーグとお互いの作品に出演しあったり。TV版『スクリーム』や『ウェイワード・パインズ』S2の監督も務めた。

 『キャビン・フィーバー2』(Cabin Fever 2: Spring Fever , 2009)
 『インキーパーズ』(The Innkeepers、2011)
 『サクラメント 死の楽園』(The Sacrament、2013)
 『バレー・オブ・バイオレンス』(In a Valley of Violence、2016)


パトリック・ブライス(Patrick Brice)
・デュプラス兄弟のプロデュースで『クリープ』を監督。

 『クリープ』(Creep、2014)*Netflix 独自配信
 

リー・ジャニアック(Leigh Janiak)
 『ハネムーン』(Honeymoon、2014)


ジェレミー・ソルニエ(Jeremy Saulnier)
・『ブルーリベンジ』で一躍名を挙げたインディペンデント界の新星。

 『ブルー・リベンジ』(Blue Ruin、2013)
 『グリーンルーム』(Green room、2016)


E.L.カッツ(E.L.Katz)
・兄ピーターとともに初期ウィンガード作品のプロデューサーや共同脚本を務めたウィンガードの盟友。アーロン・カッツとはどうやら親戚関係はないっぽい。

 『ザ・スリル』(Cheap Thrill、2013)
 『スモール・クライム』(Small Crimes、2017)*NETFLIX



メイコン・ブレア(Macon Balir)
 ・ジェレミー・ソルニエの全作品に出演している盟友。自身も脚本をてがけ、NETFLIX オリジナルの『この世に私の居場所なんてない』でサンダンス観客賞を受賞。2017~18年の出演待機作にソダーバーグ(『Logan Lucky』)、ショーン・ベイカー(『The Florida Project』)、ソルニエ(『Hold the Dark』)とマンブルコアに縁の深い監督たちが並んでいる。

 『この世に私の居場所なんてない』(I Don't Feel at Home in This World Anymore 、2017)*NETFLIX オリジナル
 (ELカッツとの共同脚本:)『スモール・クライム』(Small Crimes、2017)*NETFLIX


ベン・ウィートリー(Ben Wheatley)
・イギリスのインディペンデント・ホラー(といっていいのか)界の鬼才。すっかり大物感が出てきたようなそうでないような。

 『キルリスト』(Kill List、2011)
 『サイトシアーズ〜殺人者のための英国観光ガイド〜』(The Sightseers、2012)
 『ハイ-ライズ』(Hi-Rise、2015)
 『フリー・ファイヤー』(FreeFire、2017)


ジェレミー・ガードナー(Jeremy Gardner)
 『スウィング・オブ・ザ・デッド』(The battery、2012)


ショーン・ダーキン(Sean Durkin
カンヌ映画祭のある視点部門に出品された『マーサ、あるいはマーシー・メイ』とローリー・キニア主演の英ドラマ『Southcliffe』で一躍評価を高めた。2017年現在はジャニス・ジョップリンの伝記映画『Janis』をミシェル・ウィリアムズ主演で制作中

 『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(Martha Marcy May Marlene、2011)


ジョン・ヒューイット(Jon Hewitt)
 『バタフライエフェクト・イン・クライモリ』*10(Acolytes、2008)


デヴィッド・ブルックナー、ダン・ブッシュ、ジェイコブ・ジェントリー(David Bruckner, Dan Bush, Jacob Gentry)
 『地球最後の男たち The Signal』(The Signal、2007)
 

 他にも「他作品が日本で紹介されてるけどリストにあるやつは未訳」勢としては、
ゲーム『Until Dawn』をてがけたグラハム・レズニック(I Can See You)、
『ディスコード/ジ・アフター』のパトリック・ホーヴァス&ダラス・ハラム(Entrance)、
インディペンデント・ホラー界の知る人ぞ知る注目株、サイモン・ラムリー(ラムレイとも)(Red, White and Blue)
『モンスター』のジャスティン・ベンソン(Resolution)など


アンソロジー: マンブルゴア勢が大勢共演している。
『ABC・オブ・デス』
『V/H/S シンドローム』(V/H/S, 2012)
『V/H/S ネクスト・レベル』(V/H/S 2, 2013)


調べた雑感

 調べれば調べるほど、「次代のスター監督」と目されている勢がどんどんリンクされて出てくる……特にマンブルゴア。ウィートリーやソルニエなんかとりあえず目立っているので入れてみました感がパないんだけど、信頼してええんやろか。wikipedia の元記事からして、「新聞でマンブルコア呼ばわりされてたのでマンブルコアってことでいいよね」くらいのノリで放り込んでるっぽいし。
 まあ、それだけマンブルコアという用語が浸透している証ではあるんだろうけど。

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*1:ちなみにこの二作の iTunes でのあらすじはすこぶるまとも

*2:参考元のリストを眺めた感じ、2014年以降のラインアップがちょっと追いきれてないような印象。

*3:Wikipedia より

*4:ジュラシック・ワールド』の監督

*5:監督はG・J・エクターンキャンプ

*6:ドラマ監督は以下の通り、『New Girl ~ダサかわ女子と三銃士〜』(New Girl、2012〜)(各話監督)
『フアン家のアメリカ開拓記』(FRESH OFF THE BOAT、2015~)(各話監督:パイロットやシーズン2の第一話など)
シェイムレス 俺たちに恥はない』(Shameless、2011〜)(各話監督:シーズン6)
『マスター・オブ・ゼロ』(Master of None、2016〜)(各話監督)*NETFLIX オリジナル
『カジュアル』(Casual、2016)(各話監督)

*7:スティーヴン・ソダーバーグの09年の映画のリメイク

*8:マンブルコアの特徴のひとつに「仲間内で互いの作品に出演しあう」というのがある

*9:2017年5月時点では「予定」だけど、まあ日本にも即入ってくるでしょ

*10:ひでえ邦題だ