名馬であれば馬のうち

読書、映画、ゲーム、その他。


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ネトフリに入った『サウスパーク』S15〜S21の入門用エピソード10選

オープニングソング「サウスパークを観るのうた」

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(オ〜オ〜オ〜〜〜)
ネトフリにサウスパークが やってきた(やってきた)
サウスパークを観よう
サウスパークを観よう
チャンネルまわせば顔なじみ
どこかで見たおぼえはあるけれど
実際に視聴したことはなかったね
サウスパークを観よう
サウスパークを観よう
十回に一回はドンで引く
コミケに行くな サウスパークを観ろ
コミケに行くな サウスパークを観ろ
今夜は合法だ



これまでのあらすじ

 現代の怒れる神、ネットフリックスはそのときどきの気まぐれで想像もしなかったコンテンツを追加したり、永遠とも思えた番組を予告なく消去することがあります。
そんなネトフリからの十二月最大の贈り物といえば『サウス・パーク』。シーズン15(2011年)〜21(2017年)までが現在絶賛配信中です。
しかし開始して十五年経過した作品にいきなり入るのも難易度が高い。こち亀でいえば、70巻代から読み出すようなものです。意外とハードル低くないか? なんかいきなりシーズン15から観出しても大丈夫な気がしてきた。
ウオーッ
おれたちはシーズン15からサウスパークを観るぞッ!!


番組の主な登場人物

・どこから始めても、だいたい観てて五分くらいで主要メンツのポジションを把握できる。


青いニット帽(スタン):劇中ではよく常識人ヅラしてデブを説教したりしているが、行動だけ見ればこいつも大概である。


緑の帽子(カイル):ニット帽とあまり見分けがつかない。演説が巧い。カナダ生まれの弟(養子)がいる。


デブ(カートマン):劇中随一の悪役。


オレンジのジャンパー(ケニー):昔はよく死んでいたらしいけれど、今はただの無口なガキ。


金髪のチビ(バターズ):かわいそうだね?



オススメ入門用エピソード十選

s15ep1 「ムカデ人間パッド(HumancentiPad)」

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いきなり最悪な絵面です。

 iTunes のアップデート後の規約をよく読まずに同意してしまったために、緑の帽子がスティーブ・ジョブズに拉致され、新型 iPad であるムカデ人間パッドの実験台にされてしまう。ちなみにムカデ人間パッドとはカルト映画『ムカデ人間』に出てくるムカデ人間(人間の口を別の人間の肛門に縫い合わせて作る夢の生命体)に iPad を取り付けただけの目を疑うお下劣な製品です。
 シーズン15の第1話にして、時事ネタ、カルチャーネタ、下ネタ、グロネタ、ウンコネタ、有名人・ブランドいじり、カートマンの人格破綻っぷりと以降の『サウスパーク』のエッセンスが詰まった入門編のようなお話です。まずはこれを観て、自分と『サウスパーク』の相性を確かめましょう。合わなかったらお気の毒。

s15ep7「立派な大人(You're Getting Old)」

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手塚治虫の『火の鳥』に出てくる周囲の人間がすべて石に見える男の話っぽい。

 思春期を迎えて観るもの聴くものすべてがクソ(比喩ではなくマジで人の口からウンコが出てくる)に思えてくるようになったスタン。口をつけば厭世めいたセリフしか出てこない彼に友人たちはうんざりしはじめ……というお話。
 英語圏では思春期少年少女の苦闘を描いたドラマを「カミングエイジもの」と呼びまして、本エピソードはまさにその傑作。無限に湧き出るウンコを通じて思春期の痛切な揺らぎをえぐり出す物語は、マジックソリアリズムともいうべきか。言わなくても良い気がしますが。
永遠の小学生たちの楽園であるサウスパークでは「成長」という切り札を切れる機会は少ないわけですが、使うときは効果的に使い潰してきます。
 ウンコネタだったらep8の「ケツバーガー」も必見。
 
 

s15ep5「クラックベイビー選手権(Crack Baby Athletic Association)」

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南部の農場主の装いでコロラド大学に現れたカートマン

 資本主義に手厳しい『サウスパーク』中でもスポーツ産業風刺は度々大きなパートを占めます。
 この話でも、コカイン中毒の赤ちゃんにコカインのボールをもてあそばせるスポーツで一儲けしようと企むカートマンが相談先としてコロラド大学が登場。
 カートマンは大学の学長に対して「おたくのスポーツチームみたいに『奴隷』を上手く扱う方法を教えてほしいんだけど」ともちかけます。大学スポーツをビジネス化する風潮への皮肉ですね。
 他にもスポーツゲームで有名なEAスポーツ社にハメられりたりと、様々なプレイヤーから食い物にされているスポーツ業界の現状が浮き彫りにされていきます。
 そういうお勉強になりつつも、むちゃくちゃなスポーツを考案してメイクマネーしていくカートマンのハスラーっぷりも痛快です。

s16ep11「バターズ故郷へ帰る(Going Native)」

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”ハワイ先住民”の方々。

 もちろん人種差別ネタも『サウスパーク』におけるコアの一つ。
 わけても本エピソードはポスト-ポストコロニアル文学の領域に達した傑作といえるでしょう。
 なぜだか急にキレやすくなっていたバターズはあるとき、両親から一家の出自の秘密を告げられます。
「バターズ、実は私たちはネイティブ・ハワイアンなんだ。一定に年齢に達したお前はふるさとへ帰ってハワイの伝統に則った成人の儀式を行わないといけない……」
 ちなみにバターズもその両親も思いっきり白人。ハワイ人の血が混じっているようには見えません。
 視聴者を混乱に突き落としつつ、バターズは彼の身を案じたケニーを共連れにカウアイ島へ到着します。すると彼を出迎えた「両親の部族」の人々は、これまたアロハシャツを着た白人ばかり……。彼らは言います。「私は十年も前から毎年夏の間ここにいるネイティブハワイアンだ」「私は三年前からネイティブハワイアンだ」
 要するにリゾート客です。
 彼らはバターズを”村”ーーリゾート客向けのゲーテッド・コミュニティへと連れていき、立派な「ハワイ人」になるための試練を課そうとしますが、事態は思わぬ方向に……。
 全編が皮肉で出来た、秀抜なエピソードです。

s16ep12「ハロウィーンの悪夢(A Nightmare on Face Time)」

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もちろんオチはこれ。『ドクター・スリープ』ちょうどやってるし、時期的にもヨシ。

 ハロウィン回はアメリカ製カートゥーンにとっての温泉回のようなものです。『シンプソンズ』では毎年決まったタイトルにナンバリングを通してハロウィン回を流すほど。サウスパークでもちょくちょくハロウィンが催されます。
 本エピソードは、スタンの父親のランディが潰れかけたレンタルビデオチェーンの店舗*1を買い取るところから始まります。
 一国一城の主となって浮かれるランディですが、家族の反応は後ろ向きです。それもそのはず、ネットフリックスを始めとした映画配信サービスの隆盛により、レンタルビデオ店など誰も利用しなくなっているからです。
 それでもノスタルジーに毒されてレンタルビデオ店の復活を信じるランディでしたが、店は閑古鳥が鳴くばかり。陰気な店内で彼は徐々に精神を病みだし、亡霊が見えだすように……そう、『シャイニング』のオマージュですね。
 アメリカ人がどうしてここまで自分たちのコンテンツに映画ネタ引用に執着するのかは大いなる謎とされますが、ともかくも題材的にも映画ネタを使う必然があって実にハーモニアス。
 ちなみにかつて世界9000店舗を誇ったビデオレンタルチェーン「ブロックバスター」は本エピソード放映に先立って2010年に破産し、2019年末現在はオレゴン州に一店舗がほそぼそと残るのみ。逆に希少価値があがって「生ける歴史博物館」として観光スポットになっているのだそう。
 

s17ep6「赤毛の牛(Ginger Cow)」

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赤毛の牛。赤毛にどういう意味が込められているかは各自で調べてください。

 資本主義、人種差別、ときたら当然宗教ネタも外せません。クリエイターコンビはなにせモルモン教を題材にしたミュージカル*2トニー賞を獲っていますしね。
 カートマンが赤毛の牛を捏造するイタズラをしたことがなぜか聖書の予言にある「赤毛の牛の出現」の奇跡に繋がり、いがみあっていたユダヤ教キリスト教イスラム教が和解して一つになる方向へと動きます。
 はじめは赤毛の牛の存在を不快に思っていたカイルでしたが、宗教間対立を収めるカギとなるとしるや、一転していたずらであったことを隠し通そうとします。
 それを知ったカートマンは当然カイルを徹底的になぶろうとするわけで……というお話。
 最後のツイストが効いてます。
 ちなみにS17はこの後のep7から始まる四話ひとつながりの『ゲーム・オブ・スローンズ』リスペクトエピソードが白眉なのですが、選定の基準から外れるのでここではメンションにとどめておきます。

s18ep6「フリーミアムは無料じゃない(Freemium Isn't Free)」

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末路がある。

 ソシャゲやってる日本人は全員が視聴すべき神回。
 ちなみに海外ではガチャは法的に規制されているので、まだ日本より良心的なのかもしれません。

s19ep4「食べるログお断り(You're Not Yelping)」

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レビュワー様のお通りだ。

 日本でも評論家気取りの食べログレビュアーは忌み嫌われて揶揄の対象にされていますが、アメリカにも似たようなレビューサイトと文化があります。Yelpです。
 サウスパークの街中がにわか美食評論家となり、レビューの星をネタに飲食店を脅迫して過度なサービスをせびりまくる。彼らの横暴に絶えられなくなった店側は「Yelpレビュワー入店お断り!」の張り紙を出し、一時的に平和を取り戻しますが、本当のカタストロフはそこから始まるのでした……。
 エミー賞も受賞した名エピソードです。ネット文化なんてどこの国でもクソしか生み出さないことがよくわかる。

s20ep2「スカンクハント(Skunk Hunt)」

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おれたちの話その三。

 2016年の大統領選挙の真っ只中に放映されたS20はトランプ当選の混沌のあおりをモロに喰らいました。ヒラリー当選を前提にして作っていたエピソードを一日で差し替える羽目に陥ったのです。


www.excite.co.jp


S20はシーズンを通して大統領選ネタが展開され、ほとんど全話が続きものとなっているので、一話完結が基本の他シーズンと比べて単話ごとの評価がむずかしい。そんななかで一本選ぶとしたら、「SNS自殺」と荒らしを扱ったこのep2でしょう。
SNSで辛いとき、かなしいとき、アカウントを消したくなったときに思い出したいエピソードです。

s21ep5「フンメル人形の秘密(Hummels & Heroin)」

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こういうネタは無条件で好きになってしまう。

S20の後遺症か、S21はインパクトに欠ける話が多い気がします。それでも一話ピックアップするのなら、老人ギャング回のep5で決まりでしょう。
老人介護施設が社会の暗部と繋がっているのは『チャイナタウン』のころから常識です。

教訓

 97年の放映開始から20余年を経た現在でも、『サウスパーク』が時代の最先端を行く最高に先鋭的で実験的な風刺コメディの地位を保ち続けているのか?
 と問われれば、肯定はしづらいのが正直なところです。フォーマットが定まっているがゆえのマンネリズムからは逃れえませんし、特に近年の政治・社会的状況の変化にキャッチアップできていない部分も見られます。

 ですが、少なくともクリエイターたちは最高に先鋭的であろうとする努力を続けてはいる。時代の波を真正面から受け止めようと試みている。
 それこそが彼らの偉大さであり、今なお観られるべきコンテンツの座にある理由なのです。
 そういう教訓を胸に刻んで、君たちも明日から立派なサウスパーク町民として生きてもらいたい。
 そしてこう叫ぼう。
 Make Star Wars Great Again.

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サウスパークを見ればなぜSWがああなってしまったのかも全部わかる。すべての陰謀はつながっているんだよ。


サウスパーク 無修正映画版(字幕版)

サウスパーク 無修正映画版(字幕版)

  • 発売日: 2015/03/15
  • メディア: Prime Video
名作。

*1:キャプテン・マーベル』でも出てきた「ブロックバスター」

*2:“Book of Mormon"

そんなところで何してるんだい、文学フリマ野郎?




 これからしばらく文学について何かと書かなければならない。その実物はともかく、文学という言葉は今日よく行き渡っているようで、文学と言えば相手は何か解った風な表情になる。これは外国では余りないことらしいから、そのことから直ぐに、日本人というものはとやりたくなる所であるが、考えて見ると、日本も戦前まではこんなことはなかった。その頃はむしろ、文学をやるなどと子供が言えば、親が泣いたり、怒ったりし始めるのが常識で、そういうひどいことにならなくても、そうどこへ行っても文学、文学ではなかったのに対して、文学の方はいいものが沢山あったという感じがする。


 ーー「文学の楽しみ」吉田健一



 そこは文学の自由市場だと謳われているが、実際には文学の奴隷市場だ。*1 書店とはまた異なる法や規範で律せられていて、きみはそこでも創造的に振る舞うことができない。でも、どういう場であれ、きみが自由で創造的だったことなど一度でもあっただろうか? 文学が文学だったことなど、あっただろうか?



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 11月24日、日曜日。

 きみはきみの可能性ではなく、きみの有限性を確認するためにそこへ出かける。

 東京駅からなら山手線で浜松町でモノレールに乗り換えて、流通センター駅まで21分。片道510円。*2 駅で降りれば、すぐに東京流通センターが見える。

 流通センター。なにが流通しているのだろう。幻想だ。

 売り手も書い手も、「小説」や「評論」になってくれているはずの不安で不穏な文字の集まりを紙に印刷して束にすれば、それが「本」になると信じている。その思い込みを売ったり買ったりしている。

 みんなわかっていると思うけれど、文学フリマに流通している貨幣は円ではない。そういう、共同幻想だ。祈りだ。だからこそ、人は読む。F I N A L F A N T A S Y。



 もし文学フリマに参加するのが初めてであれば、入り口付近では足元に気をつけてほしい。まあ、においで気づくとは思うけど、大量のゲロの海になっているだろうから。

 どこであれ、文フリ会場に選ばれた場所は臨時のサウスパークと化してしまう。文フリ参加者の七割が嘔吐を経験するという。理由はさまざまだ。視界に大勢の人が映るのがとにかく気持ちわるいという人、参加者の体臭(コミケとはまた違う類の悪臭)に耐えられない人、その行為が文学的であると思うから吐く人(バカか?)、会場内でひろった菓子パンをつまみぐいしてお腹をこわす人、思いがけずブースで他者とのコミュニケーションを強いられてストレスに晒される人、その他人同士の会話を見て実存的不安を催す人、他人のゲロを経口摂取して気持ち悪くなってる人、乗り物酔いしたイヌ、サム・”ポーター”・ブリッジス、他にもいろいろ。

 だから、来るならなるべく早い時間帯がオススメだ。開場直後の11時に着くにこしたことはないけれど、やんごとない身分であると察せられるきみの日曜はおそらく午後から始まるだろう。1時2時の到着でも問題はない。

 お昼アラウンドの時間帯に来れば、文フリ名物おいしいインドカレーライスが食べられる。このカレーライスと、会場入口でひとつの意志を持ちつつある大量のゲロはなんの関係もない。おいしく食べてほしい。



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ここのチェーンが毎回出前出店している。



 信じられるだろうか。文学フリマで売られる本は、基本的に売り手が自ら価格を設定している。

 たとえば、『あたらしいサハリンの静止点』と題されたこの本は「第十回創元SF短編賞日下三蔵賞、宮内悠介賞を受賞した二作を含む、最終候補作品三作+新作を掲載!」などと称して1冊1000円で売られるわけだが、つまり、これの売り手は自分たちの本に1000円の価値があるものとみなしていることになる。

 デフレが深刻化する現代日本で1000円といったらそうとうな大金だ。戦後の大阪の闇市では揚げパンが1個5円だったから、それが200個も買える計算になる。戦後の大阪にどれだけ腹をすかせた子どもたちがいたかを考えれば、1冊1000円で同人誌を売るなどという行為は想像力の欠如でしかない。

 そして、なお狂ったことに、この1冊1000円というのは文学フリマにおける中央値だ。千円札は文フリの公用語といってもいい。大抵の売り子は多言語に堪能だから、一万円札や五千円でも話くらい通じるかもしれないが、千円札を用意するにこしたことはない。だから、きみは大量の千円札を財布にしのばせて会場へ向かうことになる。

 見たことない枚数の千円札が財布にはさまっているのを見て、きみは金銭感覚および現実感覚は崩壊し、喉のおくから吐き気がこみあげてくるかもしれない。そんなときは入り口で吐けばいい。ただし、エチケット袋を忘れないことだ。床に吐くのは文学である人間以外にゆるされない決まりになっている。



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これはうちのイヌヌワン。



 そろそろ書くのにも飽きてきた。本来ならここらへんで「文学フリマの回り方」を紹介するはずだったが、どうでもいい、きみは好きに回るといい。文学だろうが評論だろうがエッセイだろうが、なんでも買うといい。



c.bunfree.net



 どうせすべての本を買うことなどできやしないのだ。きみがアラブの石油王だというなら話は別だが、きみがアラブの石油王であるならなんで文フリなんかにいるんだい? コミティアに行け。コミティアにはアラブ中から集まった石油王が一冊の同人誌を巡ってクリスティーズ顔負けの札束乱舞オークションを開催しているという噂だ。噂でしかないので事実かどうかはわからない。うそだったら、実に悪質だと思う。でもコミティアに石油王が集うのは、いかにもありえそうなことだ。

 文学フリマにいそうな王といえば、舞城王太郎くらいで、それだって昔の話だ(知らない人は「タンデムローターの方法論」でググろう)。*3

 文学フリマ設立当初の大塚英志の理念はとうに失われ、私たちはもはや文学に「生き残る意志」があるなどと微塵も考えておらず、始まって十数年を経た文学フリマの会場内ですら文学は秘儀としての仮面をかぶってとりすましたまま、文芸誌や書店とはまた違う類の「不良債権」を弁済するはめになっている。そんな文フリに誰がしたかというと、私たちなのだが、まあ人間が実地に集ってやる以上、しょうがない有様だと思います。

 問題は永遠に完済できない「不良債権」にどうつきあっていくかで、なんとなれば、24日の文フリのテーブルにならんでいるのはそれに対する各々なりの処方箋であると思ってもいい。そう考えるとなんとも偉大なものを売り買いしている気分じゃないか?

 あるいは何も思わないこともできる。

 問題など存在せず、文学だけが在り、東京流通センター内の約39万平方メートルだけがリアルで、そこから外はすべて悪い夢にすぎないと、そういう虚構を崇めてもいい。誰も責めはしない。

 きみの文学的良心と、ついに超知性を得て現生人類とあらゆる文学を滅ぼし新たなポストヒューマンーーゲロ・サピエンスーーを創造すべきと結論した巨大危険文学破壊モンスター(元・会場入口のゲロの集合体)以外は。
 


 助けてくれ。
 






〜保護者のみなさまへ〜

 私どものサークル第三象限はお子さまの文学的感性や情緒をうるわしく涵養することを目的に、日々良質の文学を生産しております。


c.bunfree.net


 各自の作中にはお子さまにはふさわしくない物語、表現などがしばし出てくることがありますが、作者たちの生まれた平成、そしてお子さまたちがこれから生きることになる令和という時代環境を鑑み、あえて発表当時の文章を残すことにしております。

 ご意見・苦情などがある場合は、文学フリマにご来場の際に、ク-16*4へお立ち寄りくだされば1部1000円『あたらしいサハリンの静止点』を提供いたします。内容の詳細は以下のリンクを参照。


note.mu


 表紙イラストはあの今井哲也先生(『アリスと蔵六』、『ハックス!』などの)。
 すごい。

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表紙。いい。


 取り置き依頼はわたしの twitter までお願いします (谷林さん織戸さんのほうでも可)(twitter アカウントをおもちでない方は monomanemano@gmail.com まで。件名「同人誌取り置き希望」で以下のフォーマットに沿ってお申し込みください。)。
 取り置きは「1. 当日会場にいらっしゃる方のみ受け付け可能」で、「2. 当日14時までに受け取りに来てください」(それより遅れる場合は事前に連絡をいただけると幸いです)。なお、勝手ながら「3. お一人さま二冊まで」とさせていただきます。あらかじめ、ご了承ください。取り置き受付締切は文フリ前日の23日(土)17時までです。とりあえず。
 申し込み用フォーマットもつけておきます。

(メールの場合のみ:件名「同人誌取り置き希望」)
 お名前:
 冊数 :


 あと個人的に『Re-Clam』さん(ヌ-19)で、『Re-Clam 第3号』に「オススメのアントニイ・バークリー三冊」を寄せています。入門者向けの紹介ということなので、比較的エッセンシャルな三冊をセレクトしました。

deep-place.hatenablog.com

*1:フリーマケットの本来のつづりは flea market ですが

*2:紙のきっぷ購入時

*3:当時の会場に舞城王太郎がいたかどうかは知らない

*4:大人気サークル「ねじれ双角錘群」の裏です。→「 ねじれ双角錐群」でした、ごめんね。https://c.bunfree.net/c/tokyo27/2F/ア/16

2010年代のTVアニメ/海外アニメ/アニメ映画の年別ベスト

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highlandさんが「テン年代のTVアニメベスト10」という企画? をやっていたので便乗していろいろ考えます。考えるうち、海外のやつも映画もやりたいなー分けたいなーとおもったので、全部やることにしました。
わたしはそんなにTVアニメを見る人ではありません。通しで視聴するのはピーク時でもせいぜい年に二桁をやっと超えるくらい。しかも最近は減少傾向にあります。そもそも2010年くらいまでは深夜アニメを見る文化を持っておらず、というか、だからこそ、まがりなりにもその上っ面に振れるようになってからの2010年代アニメ群に自分なりの愛着を抱くのでしょう。だからここにあるのは批評的な態度ではなく、個人的な思い入れです。ご了承ください。
海外アニメの視聴本数は輪をかけて少ないわけですが、人生に与えた影響では同等なので枠を分けました。
アニメ映画のほうは、全体の本数における視聴済みの割合ではTVアニメより多いハズ。
以下、海外アニメは製作国での発表年に準じます。
2019年のものはいずれも暫定。

TVアニメ

10 探偵オペラ ミルキィホームズ
11 ジュエルペット サンシャイン
12 人類は衰退しました
13 ゆゆ式
14 ガンダム Gのレコンギスタ
15 ユリ熊嵐
16 フリップフラッバーズ
17 少女終末旅行
18 宇宙よりも遠い場所
19 さらざんまい

こうして眺めてみると、スラップスティックというか、アホな話が好きなんだなあ、という感想です。

2010年は『四畳半神話大系』と『STAR DRIVER』という名作もあったわけですが、選ぶにあたっては迷いませんでした。『ミルキィホームズ』がなかったら、わたしはTVアニメを観ていなかったでしょうし、少なくともその時期に進んで探偵小説を読もうという気にならなかったでしょうし、なんとなればいまもこうして生きていなかったでしょう。ミルキィホームズはわたしに探偵とは何か、人生とは何かを教えてくれました。

2011年は一番難しい年ですよね。ここに選者ごとのアニメ観が出るといっても過言ではないと思います。なにせ、『魔法少女まどか☆マギカ』、『輪るピングドラム』、『放浪息子』、『TIGER & BUNNY』、『UN-GO』、『THE IDOLM@STER』、『FATE/ZERO』、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』等々が並び立つのです。素人目にみてもコレなのですから、深夜アニメファンならきっとさらに頭を悩ませることでしょう。で、そんな名作たちから己のたましいに最も正直なひとつを選ぶなると、『ジュエルペット サンシャイン』ということになります。なってしまうのですね。

ひるがえって、2012年は違う意味で選ぶのに困る。比較的観ていた時期に入るはずなのですが、思い入れのある作品がない。世間的には『ガルパン』とか『アイカツ!』とか『坂道のアポロン』とかなのでしょうが……。『人衰』を選んだのは原作を好きだったのが八割な気もしますが、アニメもよくできていたとおもいます。原作を損なわないアニメ化というのはそれだけで偉業なのです。あとOPとEDがすばらしくいい。オリジナルなら『AKB0048』でしょうか。わたしは人道主義者なのでアイドル文化というものがきらいなのですが、アニメになると人権侵害が免責されるのでオッケーということになる。アンチ回がすき。

2013年、あるいは『たまこマーケット』か『てーきゅう』か。実は『キルラキル』全話見通したことないんですよね。これまで五回くらい挑戦してるんですけど、だいたい三話くらいでなんか満足してそのままになってしまう。一話ごとのカロリーが高いせいかもしれません。目の食が細い。


2014年はSFに良作がそろっていた印象ですけれど、まあ〜〜〜〜〜〜……Gレコか。ガンダムというかロボットアニメはそもそもあまり観ないのですが、なんかこれはスルッと入った。

2015年は『ユリ熊嵐』か『シンデレラガールズ』かということになる。『ユーフォニアム』でも良かったけれど、リアルタイムでは観ていなかった。『ユリ熊嵐』は幾原アニメのなかでもそんなに評価の高いほうではないと思うのですが、個人的には、演出がいちばんシュッとしてて好きなほうです。ピンドラより上にくるくらい。今でもたまに見返します。世評に反して、という点では翌年の『鉄血のオルフェンズ』も嫌いではない。

2016年は渋い作品が多いですね。『落語心中』が一番人気らしいですけれど、わたしは観てはいません。原作を読んでいる作品はその原作が格別に好きというケース以外、あんまり積極的に観ないんですよね。『だがしかし』とか『甘々と稲妻』とかもその枠。せっかくならオリジナルアニメを評価したいという気持ちもあります。となると『ルル子』か……『フリップフラッパーズ』。フリフラですね。百合に疎いわたしが綾奈ゆにこという狂気を知るきっかけになった作品です*1

2017年、オリジナルを評価したいなどと抜かした舌の根も乾かぬうちに原作つきの『少女終末旅行』を挙げたわけですが、いやだってこれはしょうがなくないですか。エンディングを原作者が描いてるアニメがどれだけあるっていうんです?

2018年、『プラネット・ウィズ』のことはうつくしい思い出として胸に留めましょう。たとえ『惑星のさみだれ』がアニメ化されることがなくなったとしても、わたしたちは水上先生から十分以上のプレゼントをもらったのです。『あそびあそばせ』、『ハクメイとミコチ』、『三ツ星カラーズ』、『ヒナまつり』、『ポプテピピック』と好きな漫画原作をちゃんとしたアニメにしてくれて嬉しかった記憶のある2018年ですけれど、なんといっても『宇宙よりも遠い場所』。ここ十年でもベストなストーリーだと思います。

2019年はあんまりアニメ観る気になりませんでした。こうやって人は朽ちていくのかもしれません。


海外

10 レギュラーSHOW
11 おかしなガムボール
12 グラビティ・フォールズ
13 リック・アンド・モーティ
14 ボージャック・ホースマン
15 ぼくらベアベアーズ
16 アニマルズ
17 ビッグ・マウス
18 サマー・キャンプ・アイランド
19 トゥカ&バーティ

どれもめむちゃくちゃおもしろいんですけれど、とりわけ10〜11年に個人的な傑作が集中しているんですよね。人生に影響を与えたアニメランキングではトップ10に入りそうな『マイ・リトル・ポニー〜トモダチは魔法〜』や『アドベンチャー・タイム』なんかも2010年ですし。『スティーブン・ユニバース』は2013年か。単によく観ていた時期がそこっていうこともあるんでしょうけれど。
アメリカの大人向けアニメは長寿プログラムが安定して抜群におもしろくてチャレンジングという美点があり、『シンプソンズ』とか『サウスパーク』とかそういう感じなんですけど、あんまり日本じゃ配信してくれない。『シンプソンズ』は一時期 Hulu でやってましたし、『サウスパーク』は今ネトフリで観られますけれど。
近年はネット配信のオリジナルにイイのが多いですね。『ヒルダ』(ネトフリ)とか『アンダン』{アマゾン)とか。
わたしが好きになる海外アニメの傾向はわりにはっきりしていて、ダメな人間(人間でない場合が多いですが)が主人公です。
『レギュラーSHOW』や『ぼくらベアベアーズ』を観ていると、ああ、人間ダメでも愉快に暮らせるもんなんだな、という心持ちになります。一方で『ボージャック・ホースマン』や『トゥカ&バーティ』を観ているとやっぱりダメじゃいけないんだな、ともおもいます。なったりおもったりしたところで今日明日の生き方に影響はでないわけですが、まあ作品として心には残りますね。愛という感情が。


映画

10 トイ・ストーリー
11 ランゴ
12 おおかみこどもの雨と雪
13 風立ちぬ
14 LEGOムービー
15 映画 ひつじのショーン 〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜
16 ズートピア
17 夜は短し歩けよ乙女
18 リズと青い鳥
19 天気の子

特にいうことはありません。ただ、新海誠映画が自分のなにかしらのベストリストに入ることになるとは去年まで予想もしていなかった。『スパイダーバース』が2019年だったなら(アメリカでは2018年公開)もうちょっと悩んだかと思いますが。リズ鳥となら迷わない。
この前観てすげーよかった『ロング・ウェイ・ノース』も2015年なんですよね。罪作りなことです。公開されないよりはいいか。

*1:きんモザ』もよく考えたら狂ってたな、と思い返したりもした