名馬であれば馬のうち

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死に場所を選ぶ:Ori and the Blind Forest のセーブシステムについて

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 Celeste がそのままモチーフに用いていることからわかるように、死に覚えプラットフォームアクションは登山行為に近い。
 Ori and the Blind forest がとりわけ登山めいて感じられるのは、おそらくセーブシステムのせいだろう。
 スキルポイントを消費してセーブポイント作る。死んだら即その地点からリスタートだ。体力等の状況も保存されるため、自分で状況を判断して、的確なタイミング、的確な場所に設置しなければならない。下手にセーブすると、半端な体力で難局に当たらなければならなくなり、ことによったら詰んでしまう。


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 さらに悩ましいのが、スキルポイントはセーブのためだけに使われるわけではない点だ。必殺技でも消費するし、扉を開けるのに費やすこともある。リソースの割り振りの判断を誤れば、森は容赦なく君を殺す。何度も。何度でも。
 そう、だからそれは、絶壁にザイルを打つ行為に似ている。慎重さと思慮と勘と経験でもって、命がけでコンマを打つのだ。
 そこでセーブしてしまったら、次にスキルポイントを補給できるのは十回死ぬような難所を三つほど越えたところかもしれない。残りライフ一つの状態でいやらしく配置されたトラップと敵の迷路をノーミスで突破することを要求してくるかもしれない。
 置かれた状況の理不尽さはすべてプレイヤーの責任だ。オートセーブなら制作者を責められもしよう。でもそこにザイルを打つと決めたのは自分なのだ。だからこそ、滑落したときの後悔も絶望も死そのものさえ、すべて君のものになる。


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 死が自分の掌中に在る感覚。それはほかの死に覚えプラットフォーマーにはない、 Ori and the Blind Forest 独特の体験だといってもいいだろう。*1自分のものであるからといって、自在なわけではないのだけれど。


Ori and the Blind Forest (Original Soundtrack)

Ori and the Blind Forest (Original Soundtrack)

  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: MP3 ダウンロード



死に覚えプラットフォーマーゲームについての記事シリーズ。シリーズにしたおぼえはない。
proxia.hateblo.jp
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*1:ちなみに続編である Ori and the Will of the Wisps ではオートセーブ方式が採用されている。まあこの作品はこの作品でおもしろい。 というか、the Will of the wisps やってて the Blind Forest のこと思い出して今回書いたんだけれども。