名馬であれば馬のうち

読書、映画、ゲーム、その他。


読書、映画、その他。


一月の新作映画でおもしろかったやつ

パディントン2』(ポール・キング監督、英)☆


映画『パディントン2』予告篇


 喋るクマ映画パート2.孤児が新しい家族に受け入れられるまでが1で、次いでご近所さんや友人といった共同体に受け入れられるまでが2。そういうストーリーを画で見せてくれるからすばらしい。
 脚本も伏線芸もパディントンのかわいさも前作からパワーアップしていて、これだけ続編であることに意義のある続編は最近ではめずらしい。

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嘘八百』(武正晴監督、日)☆


映画『嘘八百』予告編 2018年1月5日(金)公開

 零細骨董商と詐欺作陶家がチームを組んで悪徳骨董商を退治する大阪版『スティング』。中井貴一佐々木蔵之介の連れ立って歩く後ろ姿ふたつ、これに尽きる。最高のブロマンス。


キングスマン:ゴールデン・サークル』(マシュー・ヴォーン監督、英)


映画「キングスマン:ゴールデン・サークル」予告B

 イギリス紳士スパイ&スウェーデン国辱映画パート2。エンタメという方面ではむしろわかりやすく悪趣味でビザールだった前作に対して、いよいよわけのわからないような逆にわかるようなやっぱりわからない方面に振り切れてしまっている。マシュー・ヴォーンはどこへ向かうのか。
 とりあえず、『ローガン・ラッキー』につづいて、「キャラが『カントリーロード』を唐突にうたいだす映画は名作」の法則が完成されつつある。

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『バーフバリ 王の凱旋』(S・S・ラージャマウリ監督、インド)


「バーフバリ 王の凱旋」予告編


 インドすごい映画の後編。みんな大好きなケレン味といい、「渡し」の構図の反復といい、映画の妙味にあふれた映画です。隣国のダメ王子が父バーフバリさんの薫陶を受けて一人前の男として成長するシーンはフツーに泣きそうになりました。ターメリックをかければゾウがおとなしくなるってほんとうなんでしょうか。


デトロイト』(キャスリン・ビグロー監督、米)


『デトロイト』予告編/シネマトクラス


 デトロイト暴動下で起こった警官による黒人虐殺事件を扱ったドキュメンタリー。違法酒場検挙のときのちょっとした不手際が発火点となってついに街一つを破壊し尽くす大暴動へと発展してしまったように、誰もが最初から完全な悪人だったわけじゃなくて、ちょっとしたボタンの掛け違いからズルズル自身の抱えていた底なしの闇に呑まれていってしまう。冒頭のナレーションであったように「あとはいつ爆発するかの問題でしかなかった」としても、やはり「なぜそこで」「この人たちが」という問いは常についてまわるわけで、そこに悲劇を撮る意味が生じる。
 悪役である警官三人組(『おバカンス家族』のニセ息子役ウィル・ポールターに、『シング・ストリート』のお兄ちゃん役ジャック・レイナー、『ハクソー・リッジ』のジェソップ伍長役ベン・オトゥール)にボンクラフェイスを揃えてきたのは大正解で、実在する悲劇や悪というのはそんなにシャープでかっこよいものではなく、ひたすらグダグダなのだな、とおもいます。


女の一生』(ステファヌ・ブリゼ監督、仏)


映画『女の一生』予告編


 ひたすら女がひどい目にあう話。数十年スパンの物語を四季のうつろいに凝縮して語る手法で湯浅版『夜は短し歩けよ乙女』をおもいだしたりなんかもした。スタンダードサイズでのドキュメンタリックな撮影は人物のナチュラルさを観客に意識させるのだけれど、光の具合で主人公の状態を表現するあたりは巧まれた繊細さ。
 原作との違いでいえば、放蕩息子の少年時代があきらかにADHDとかそのへんの現代的な不登校児をイメージされている*1ところで、ここに母親の過剰な保護感情が反映されるといかにも今日的なダメな親子関係といったおもむきで、静謐なみてくれに反して古典をリバイバルしてやろうというブリゼ監督の野心が見え隠れする。

 ところで原作でも野村芳太郎版でも本作でもラストは「奥様、人生ってあなたが思ってるよりも良いものでも悪いものでもないのかもしれませんねえ」という元召使のなんだか普遍っぽいセリフで〆られるんだけれども、フツーにこの人の人生は一般的な基準から鑑みても最悪だとおもいます。


猫が教えてくれたこと』(ジェイダ・トルン監督、米)


全米で1館→130館の大ヒット!『猫が教えてくれたこと』予告編

 イスタンブールに住む野良ネコたちを追うドキュメンタリー。開発に伴って都市の相貌が変化するにつれてネコたちもまた変わりつつあるみたいな問題意識が設定されてはいるんだけど、まあ実際そんなことはどだいどうでもよくて、ネコがネコやってる姿をひたすら眺める映画です。

*1:大人になって会社潰すくだりで「会社が火災で燃えて破産しました」と報告したときは「未来の国からはるばると」ののび太くんかよ……とおもった