名馬であれば馬のうち

読書、映画、ゲーム、その他。


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一月に出た新刊マンガでおもしろかったやつベスト10

 年末にいちいち思い出してまとめるのは大変で、適宜、所感の記録をとっておいたほうがいいだろう、ということになった。
 書き上げたあとで作者名は頭ではなく、カッコ内に配したほうがよかったな、とおもってちょっぴりおちこみました。

とりあえずタイトルだけ確認したいときの目次

今月の十冊

1.コージィ城倉『チェイサー』(5巻、ビッグコミックス

csbs.shogakukan.co.jp


 ・この瞬間に『チェイサー』は「手塚治虫まんが」のテッペンを獲りました。
 ・とかく偽史制作は窮屈ですね。ガンバレガンバレ俺TUEEEが過ぎると鼻白むし、かといって行儀がよすぎてもノリきれない。
 その点『チェイサー』は「手塚治虫」という偉大な歴史に適度な間合いをずっと取り続けてきました。が、ここで大きく一歩踏みこんできた。つまり、オリキャラである漫画家を手塚治虫相手に(かなりの数の留保をつけつつも)「勝たせて」しまった。
 時は折しも『週刊少年ジャンプ』創刊〜『ブラックジャック』前夜。少年漫画家としての手塚治虫がどんどん打ち切りを食らい、「終わった漫画家」とみなされていた時代のこと。
 たしかにここで一度オリキャラに勝たせておいたほうが展開は盛り上がるし、『ジャンプ』を組み込まない手はないし、必然といえば必然の一手なんだけれども、ここで攻めきれる人もなかなかいないんじゃないんでしょうか。結果的にこれ以上ないベストなタイミングで、ベストな仕掛けが発動できたのだとおもいます。コージィ先生を信じていてよかった。
 この五巻ラストページのヒキのために『チェイサー』という漫画が存在しているのだと言っても過言ではない。


2.panpanya『二匹目の金魚』(短編集、楽園コミックス

二匹目の金魚

二匹目の金魚

www.hakusensha.co.jp


 ・マジックかリアリズムかのスペクトラムでいうなら、panpanya先生の初期作はマジックの風景にリアリズムが散在しているかんじだったと思うんですが、近作はリアリズムに穴をうがってマジックをのぞき見ている感覚があります。
 本短編集ではそこからさらに発展して、いや、改めて怪しい非日常的な世界を創り上げなくたって、今われわれのいるこの日常にいくらでもファンタジーの種はあるんだ、と訴えてきます。
 日常に潜んで黄金色に輝く死角を狩る作家を、わたしたちはエッセイストと呼び習わします。本作で言うなら「今年を振り返って」や「知恵」、「小物入れの世界」といったところがどこに出してもするりと通る、いい意味でエッセイっぽい作品です。
 それでいて、わたしたちが夢見たころの panpanya 先生がそのままの姿でそこにいる安心もうしなわれてはいません。なぜでしょうね。おそらく、先生が日常の死角を収穫するだけではなくて、日常と日常のすきまにある暗黒空間を非日常的な想像力で埋めて現実として均していく、そんな営みをおこなっているからではないでしょうか。

・一巻に一話は謎プロレタリア文学回をはさむくせは健在なものの、いちばんマス受けしやすいかんじに仕上がった本作。そしてこのタイミングでの既刊 kindle 化。これはもう、売れということですね。panpanya 先生は百万部売れる作家だし白泉社としても強力に売り込んでいくという意思表示ですよね? そうですよね?

・今回も傑作ぞろいです。特に個人的なお気に入りは謎どうぶつペットブームが起きる「シンプルアニマル」、かくれんぼに関する考察「かくれんぼの心得」、一つの街の驚異的な発展の歴史がすさまじい時間感覚で捉えられた「開発」の三点あたりでしょうか。


3.町田翠『ようことよしなに』(2巻、ビッグコミックス

ようことよしなに 2 (ビッグコミックス)

ようことよしなに 2 (ビッグコミックス)

comics.shogakukan.co.jp


 自由奔放だけれど決して無神経ではない女と引っ込み思案で色々考えすぎてしまう女との関係性のビルドアンドスクラップ実験が快楽的に継続されており、このまま永遠でいてほしい。


4.コナリミサト『凪のお暇』(3巻、A. L. C. DX)

凪のお暇 3 (A.L.C. DX)

凪のお暇 3 (A.L.C. DX)

tap.akitashoten.co.jp


 ・あいかわらずの凪さん地獄めぐり。物語世界にガンガン奥行きが出ている。
 ・ふたりで同一の光景を眺めているのに捉え方や出てくるセリフがまったく異なって、それが二者の人生に裏打ちされた価値観から発しているもので、しかもそれを通じたコミュニケーションで決定的に齟齬が起きてしまう、っていうのはいいですよね、百点。
 ・モラハラ男から逃れて、自分にやさしくしてくれる新しい男を見つけたとおもったらそいつが無自覚な快楽主義的八方美人だったと判明し、やはり自分が大切にされている肯定感が得られずどんどん病んでいく、ってのもすばらしいですよね、百億兆点。


5.近藤聡乃『ニューヨークで考え中』(2巻、亜紀書房

ニューヨークで考え中(2)

ニューヨークで考え中(2)

ニューヨークで考え中 - もうすぐ十年 | ウェブマガジン「あき地」


 ・一貫してる作家なんていくらでもいるんだけど、近藤聡乃先生の一貫性はカーボンファイバーなみで、それが二ページエッセイの連載でさえ美しいリズム感として発揮されておる。
 ・「クリスマスイブに地下鉄で号泣している女の人を見てなんとなくいいなあと思ってしまう近藤先生」を見てなんとなくいいなあと思ってしまう読者。感情のシェアですよ。


6.仲川麻子『飼育少女』(1巻、モーニングコミックス

飼育少女 (1) (モーニングコミックス)

飼育少女 (1) (モーニングコミックス)

babymofu.tokyo

・高校の実験室で科学教師と女子高生がヒドラやナマコやイソギンチャクといった地味ないきものたちを飼育するギャグ漫画。派遣OL日常マンガと思わせといてからのまさかの虫マニアマンガだった、という叙述トリックで衝撃の一巻打ち切りを食らった『ハケンの麻生さん』仲川先生起死回生の快作。適材適所という言葉が浮かびます。
 ・『麻生さん』とは売って変わり、キャラの表情のつくりかたやギャグの打ち方から強い濃度の沙村広明臭を感じます。別にサブカルネタとか、憂いを帯びた顔のクールな殺人マシン女とか、憂いを帯びた顔のクールな殺人マシンスラヴ系女とかは出てこないんですけれど、文体としてとても近いものを感じる。違っていたらすいません。
 ・飼育ネタのマンガであんまり笑った経験はないんですけれど、これはウケた。


7.谷口菜津子『彼女は宇宙一』(短編集、ビームコミックス

彼女は宇宙一 (ビームコミックス)

彼女は宇宙一 (ビームコミックス)

comic.pixiv.net

 ・一月はサブカルマンガの月と決まっていて、去年も『魔術師A』や『春と盆暗』といったサブカルクソ野郎大好きオブザイヤー級のサブカルマンガが連発されていたわけですけれど、今年もサブカルクソ野郎大好きマンガを占う上で基準となるマンガが出ました。ヴィレヴァン山積みにしてくれ頼むッ!(頼む前から山積みにされてる)
 ・ポップな絵柄でキャラの希望(というか愛)をへし折る嗜虐的な作風……とおもわせといてギリギリで救いを残すところに良心があります。その救いがおためごかしではなくて、たしかに明日につながりそうな愛とは別種の未来をかかげてくれているのが今日的ですね。サディスティックになりすぎず、セラピーにも傾きすぎない、このバランス感覚は貴重。


8.仲谷鳰やがて君になる』(5巻、電撃コミックスNEXT)

daioh.dengeki.com

 ・これは七海先輩が一個の人格を持った人間になるまでのお話だったんだなあ、だから対等な恋愛関係がこれまで結べなかったんだなあ、といよいよ明らかになる。
 人間でなかったものが人間になる話によわいです。


9.山田芳裕へうげもの』(25巻、モーニングコミックス

morning.moae.jp


 ・マジで古田織部切腹まで描き切りやがったよ……。第一話の伏線回収までこなしがった……。
 ・後半から登場人物全員が宗匠に堕ちていくハーレムマンガというラインで考えると当然最後は最難関ヒロインの攻略&トゥルーヒロインの決定ということになるはずで、果たしてそうなりました。
 ・あらゆる誘惑に抗って、最終話で「出さない」選択をできたのはやはりこれだけのマンガを描いた漫画家であるなあと。
 ・まちがいなく人生の一作です。ありがとう宗匠、フォーエバー山田芳裕


10.猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(3巻、週刊少年マガジンミックス

kc.kodansha.co.jp

 ・まちがいなく今一番「走ってる」連載作のひとつ。
 ・来ました新しい天才キャラ。ファション業界の分業制と育人の未熟さもあって、ライバルや壁といった役割ではないんですが、そういうこととは別のパースペクティブから攻めてくるのでほんとうに飽きない。単に題材が新鮮なだけではあたらしいマンガが産まれるとはかぎらないわけですが、『ランウェイ』はちゃんと展開もフレッシュに持っていこうという気概がある。力がある。引力が……。




その他おもしろかった新刊マンガ

 単純におもしろかったやつというより、回顧するとき用のメモとして残しておきたいタイトルですかね。

水上悟志『放浪世界 水上悟志短編集』(短編集、コミックガーデン

・まあーーーーーーーーーーー、「虚無をゆく」ですよね。少年が宇宙でロボットで戦う。なにはともあれ。なにはなくとも姉がある。
・『アフタヌーン』最新号(17年3月号)の「もう、しませんから。」で石黒正数先生が「姉マンガ革命を起こしたい」旨を強く主張なされていましたが、水上先生もまた運動を牽引する立場におられるのではないでしょうか。ぜひ二人で姉革命を起こして、強力な二頭独裁体制を敷いてほしい。そしてお互いの姉革命観や姉ドクトリンの相違によってケンカ別れしてほしい。レーニンとトロツキーのように。

水上悟志『二本松兄妹と木造渓谷の冒険』(単発長編、ヤングキングミックス

・ものすごい勢いではじまってものすごい勢いで終わる、嵐か通り魔のような犯行ですが、まあ騙されたとおもって刺されてみると案外良かった。
・少ない手数でキャラをビンビンに立たせることに関しては水上先生は達人です。


ハトポポコ『みなくず with 男子校系男子』(連作短編集、電撃コミックスEX)

・クズを描かせたら世界一のハトポポコ先生がもし登場人物全員クズのマンガの描いたらどうなる? という夢のような企画。
・「男子校系男子」のほうは読み始めでは「いらねえな」と舌打ちしていたのですが良い姉が出てきたので優勝です。姉マンガ・オブ・ザ・マンス。


いけだたかし『時計じかけの姉』(2巻、バーズコミックス

 ・色んな意味でひどい話であるのに、どこか温かいのは、倫理も道徳も家族も性欲も人間も何もかも壊れてしまったあとで、それらをギリギリで支えようとするひとたちを描けているからなのでしょう。次で最終巻らしいです。いくらも続く話じゃないとわかっていても、かなしい。


『星色ガールドロップ コミックアンソロジー』(アンソロジー、バンブーコミックス

星色ガールドロップコミックアンソロジー (バンブーコミックス WINセレクション)

星色ガールドロップコミックアンソロジー (バンブーコミックス WINセレクション)

 ・メンツの豪華さだけでいったら書房が建つレベル。なのですが。
 ・500年後の人類のために説明しておくと、『星色ガールドロップ』っていうのは『ポプテピピック』という四コマギャグ漫画の……もういい、わたしは酒のんで寝る!!!!
 ・要するに必要最低限以下の設定だけを渡された作家たちが、各人が想像するかぎりにおいての『星色ガールドロップ』を創造する話で、それはいわば麻雀のルールを知らないやつに麻雀牌だけ渡して麻雀をやれと命令するような蛮行であり、もちろん成立するわけないのですが、不揃いな手配を四人でなんとなくツモっている様子を外から眺めていると、絵ヅラ的にはギリギリ成立しているかのような不思議があります。
 ・マジで作家間のコンセンサスがとれてない。絶望的にすれちがいまくっている。たぶん打ち合わせとか何もなかったんでしょう。
 そこらへん顕著にあらわれているのが、キャラクターごとの口調で、ある作家はAというキャラを丁寧語で喋られているかと思えば、別の作家はAを関西弁で喋らせている。幸いなことにマンガは外見である程度キャラづけを規定される表現であるため、メインキャラ三人のポジションは意外とそこまで齟齬が生じないのですが、むしろそこだけ収まりがいいのがきもちわるさを増幅させている。そう考えると、オリキャラを主軸に据えた今井哲也先生なんかは最もクレバーな選択をしたのかも。
 ・大川ぶくぶ先生御本人も参加されているのですが、ここまで御本人登場感が薄い人もいないだろうといいますか、「他作家作品のアンソロに参加してるときのぶくぶ先生」っぽさのが勝っていて、混乱に拍車をかけている。


武富智『ロマンスの騎士』(1巻、スポーツもの、裏サンデーミックス

・近世のヨーロッパ騎士が現代の少年の身体に転生してフェンシングをやる……というあらすじを聞いて「逆『ビロードの悪魔』かよ」と興味を惹かれましたが、読んでみると真っ当にアツい青春スポーツもの。フェンシングのスタイリッシュな絵面と武富智先生の躍動感あふれる画作りが幸福にマッチしています。


交田稜『ブランク・アーカイヴス』(1巻、アフタヌーンミックス

ブランクアーカイヴズ(1) (アフタヌーンKC)

ブランクアーカイヴズ(1) (アフタヌーンKC)

・「認知拡張症候群」という奇病によって脳の機能を「拡張」されてしまった人々(他人から視認されなくなったり、他人の思考を読むことができたり、他人に強制的に幻覚を見せることができたり)のゴタゴタを解決していく……ぶっちゃけていえば異能ミステリですね。
・(認知拡張症候群ゆえに)社会から排除されてしまった人々をどう救うのか、といった話を軸に展開していく様子。まだ序盤ということもあるのでしょうが、あるエピソードでこの事件解決したからこの話はもうおしまい、ではなく有機的に個々のエピソードや人物を絡ませていく意欲が伺えます。
・交田先生は『ビブリア古書堂の事件手帖』のコミカライズをしていた人ですね。オリジナルは初かな。
・『good! アフタヌーン』からのSF新連載では『バタフライ・ストレージ』も出ましたね。作者の欲望がストレートに反映されているところは好みです。


大谷アキラ、原案・夏原武、脚本/水野光博『正直不動産』(1巻、ビッグコミックス

・本自体は去年出ましたが、Kindle版は今月。
・ありがたい祠を蹴り飛ばしたたたりで本音しか喋られなくなった凄腕不動産営業マン(ヤなやつ)が逆に本音しか言えないことを武器にしてなんとか業界で生き残っていこうと頑張るお話。
・こういう設定が成り立つということは、不動産業界でそれだけ「不正直」がまかり通っていることの裏返しでもあって*1、そういう「意外と知らない豆知識」を拾っていくだけでも知的好奇心が満たされます。
 悪徳不動産業者のケーススタディを紹介するまんが、といえばそれまでなところもありますが。


五宝『MIA 雲上のネバーランド』(単発長編、ジャンプ・コミックス

MIA 雲上のネバーランド (ジャンプコミックス)

MIA 雲上のネバーランド (ジャンプコミックス)

・たまにジャンプ・コミックスがどこからから拾ってくる海外コミック翻訳もの。今回の出処は中国だそう。よいものです。



原作・村田真哉、作画・柳井伸彦『ヒメノスピア』(1巻、ヒーローズコミックス

ヒメノスピア 1(ヒーローズコミックス)

ヒメノスピア 1(ヒーローズコミックス)

 ・最近、過剰に酷使されすぎな感がある村田真哉先生。以前から続いているキリングバイツはともかくも、村田版山風忍法帖『蝶撫の忍』まで始まったし……過労が心配です。
 ・『蝶撫』がいつもの生物(昆虫)ネタバトルで展開的にもマンネリ感を免れていない一方で、「女王蜂」となったぼっち女子高生がどんどん他人を洗脳してユートピアを作り上げる『ヒメノスピア』は好感触。わりと重たい過去設定をキャラにつけたがるわりに現在軸でさほど活かされる印象のなかった村田作品にあって、ヤバい状況に陥りつつあると認識していながら「他人とつながりたい」という欲望に負けてドライブしていく元いじめられっ子の悪堕ちオブセッションは際立っています。
 ・生物学バトルといえば『楽園の神娘』という植物系のやつも出ましたけれど、こっちはどうなるか。


ステファン・セジク『サンストーン』(1巻、G-NOVELS)

サンストーン vol.1

サンストーン vol.1


・マジでホットなレズビアンがボンテージセックスするだけの話です。
・「だけ」は言いすぎですね。顔はいいが何かと考え詰めすぎるせいで繊細なコミュニケーションの要求される場になると一人相撲にあたふたしてしまう女ふたりがボンテージセックスを通じて真の和合へと至るゼンの教えです。


川浪いずみ『籠の少女は恋をする』(1巻、電撃コミックスNEXT)

 ・可憐で品格のある優秀な少女たちの集うお嬢様学校――そこは富裕層の男に「買われて」引き取られていくことが「卒業」である、という残酷なシステムに支配された地獄だった。そんな地獄で少女たち百合をやる話。愛されることについての物語です。
・主人公こそまっすぐでピュアなんですけど、それ以外のキャラがだいたい性根腐っていて、その腐り具合がちょうどいいかんじです。愛で人を食い物にするクズが出てくるマンガは大概良いものです。


田村由美『ミステリという勿れ』(1巻、フラワーコミックスアルファ)

・クソムカつく面構えのクソムカつく大学生がクソムカつく口調でクソムカつくトークをかましつつ、なんとなく周囲の人を巻き込んでミステリ的にいいかんじの話へと落ち着かせるマンガです。
・読者のなんとなく想定している「なんとなくのプロット」を適度に外しつつ、でも最終的に物語としてちゃんとまとめてくるあたり、構成力は万民の光であり貴様を黙らせる暴力〜〜〜〜〜〜〜〜〜というかんじがしてよいです。

・ミステリと言えば『金田一少年の事件簿』の樹林伸先生が原作を務めた島耕作の事件簿』なんてのもありましたが、あれも変な意味ですごかった。
 島耕作がいつも通り女をこましたベッドでめざめると、その女が死んでいる。このまま警察に通報したら確実に捕まる! と判断した島はなんと自ら捜査に乗り出すことに。当然、会社には出勤できません。そこでどうするかといえば、上司に直接電話をかけて洗いざらい状況を白状するのです。普通の会社ならふざけんなぼけで即通報ですが、さずが天下の初芝は違います。上司は通報どころか「事情はわかった!行って来い!」と島を励まし欠勤を認めるのです。社員的にはホワイトですが、世間的には反社会的という意味でブラックですね……。


人生負組『ぼくらのペットフレンズ』(1巻、電撃コミックスEX)

 ・また電撃コミックスは人権が終わった世界のマンガを出す……。
 ・人権が始まるマンガを読みたいなら村山慶先生の新連載『荒野の花嫁』を読みましょう。


徳弘正也『もっこり半兵衛』(1巻、ヤングジャンプミックス

 ・余裕のあるコマ割りをとりつつもきっちり単話ごとにいいかんじに話をまとめてくる器量は週刊少年マンガ家のあるべき最終形態という感じがします。


菅野文『薔薇王の葬列』(9巻、プリンセス・コミックス

薔薇王の葬列 9 (プリンセス・コミックス)

薔薇王の葬列 9 (プリンセス・コミックス)

 ・ついにジョージが死ぬあたり(『リチャード三世』は一般常識であるのでネタバレではない)。いきなり王様ゲームがはじまったときはどうしようかとおもった。
 ・『リチャード三世』本編突入以後はもう文先生に眼球をゆだねるだけでハッピーが約束されていますよね。

涼川りんあそびあそばせ』(5巻、ヤングアニマルミックス

 ・アニメ化おめでとうございます。やはり今巻はFPS対戦ゲーム回でしょう。あと弟回と先生のタイムカプセル回。


五十嵐大介『ディザインズ』(3巻、アフタヌーンミックス

 ・読むドラッグ。
 ・ゆうきまさみ先生のでぃす×こみ最終巻(3巻)にもこっそり五十嵐大介先生塗り回がありましたね。


河部真道『バンデット』(6巻、完結、モーニングコミックス

バンデット(6) (モーニングコミックス)

バンデット(6) (モーニングコミックス)

 ・『太平記』で扱う年代(鎌倉幕府末期から南北朝時代まで)を題材にしたマンガってわりあい希少価値あったとおもうんですけれど、魅力的な伏線をばらまくだけばらまいて終わってしまいました。
 ・歴史マンガの必須条件である「フレッシュで魅力的なキャラクター解釈」、「その時代特有のエグい倫理や価値観」、「群像劇におけるキャラ転がしの巧さ」、「迫力あるチャンバラ・合戦シーン」はどれも高水準でクリアしてたはずですが、いかんせん「扱ってる時代がマイナーすぎる」の枷には打ち勝てなかったか。『応仁の乱』がブームになるなら南北朝もいけるでしょ、楠木正成だぜこっちは、楽勝楽勝……とはいきませんでした。
 ・そういえば、ゆうきまさみ先生の新作は応仁の乱を舞台にしたお話だそうで、やっぱりベテランはどこかで時代劇を描きたくなるものかしら。


美代マチ子『ぶっきんぐ!!』(1巻、裏少年サンデーコミックス

ぶっきんぐ!! 1 (裏少年サンデーコミックス)

ぶっきんぐ!! 1 (裏少年サンデーコミックス)

 ・書店員ものってわるい意味でブッキッシュな作品が多い印象があるんですけれど、『ぶっきんぐ!!』はちゃんと「書店員の話」をしてくれるので好印象です。とはいっても変に業務についての細部を羅列するわけでもなくて、ちゃんと作劇のパースを取りつつ書店員の世界観で話を進行させていくかんじ。
・時代設定が絶妙ですよね。2006年。電子書籍以前で、amazonなどに押されつつもぎりぎり個人書店文化が残っていた時期。その時代に対するノスタルジーが発端となったようですが、その思いをどこまで理性的にコントロールできるかで今後の展開もまた変わってくるのかも。


宮永麻也『ニコラのおゆるり魔界紀行』(1巻、ハルタミックス

 ・獣人や魔法の存在する魔界に迷い込んだ少女とその道連れというか保護者的な立場の悪魔のロードストーリー。一話一話マァー丁寧です。

平川哲弘『ヒマワリ』(1巻、チャンピオンコミックス

・田舎の男子高校生がアイドルを目指すマンガ。
・なんですけど、描いてるのが『クローバー』や『クローズZEROII』の平川哲弘先生なんですよね。タッチがやはり不良マンガのそれというか、一巻までの話作りは手堅いんですが、ちょっと追ってみたくなるような、あたらしい予感をおぼえさせてくれます。


漫☆画太郎『星の☆王子さま』(1巻、ジャンプ・コミックス

星の王子さま 1 (ジャンプコミックス)

星の王子さま 1 (ジャンプコミックス)

・最悪なことに、ちゃんと『星の王子さま』をやってしまっている。

*1:法律のからんだ業界なんてどこもそうだと思いますが