名馬であれば馬のうち

読書、映画、その他。


読書、映画、その他。


第92回アカデミー賞全部門の受賞予想

f:id:Monomane:20200114215837p:plain
短編アニメーション部門ノミネート作「kitbull」より

 ハリウッドスターはみんなうそつきだ。
 ハリウッド映画はすべてたわごとだ。
 リアルなのはオスカーの予想だけ。
 ノミネーション発表から各組合賞の結果が出るまでの間の今この瞬間に行われる予想だけがバチバチの本物なんだよ。


   ーーボノ(U2*1

全部門予想

作品: 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』


 f:id:Monomane:20200114214108p:plain
・安心と信頼のトロント映画祭勝者ジョジョ、視聴者のウケ狙いナンバーワンジョーカー 、格で勝負するならのワンハリとアイリッシュマン、品ならマリッジ、後出しじゃんけんで狙い通りGGをさらった1917、おっさんが好きそうなFvF、唯一社会的に訴求力がありそうな若草、とどの作品も「武器」を持っているが決定的なところでいまひとつ足りない。
・となると前哨戦での実績と社会現象化とのダブルパンチでパラサイトがノシてきそう……けれどネックはやはり外国語映画であること。
・ネトフリ二作もどちらかにプロモーションを集中させないとむずそう。
・ジョーカーはやっぱり映画としての評判がね……アメコミ映画だし。
・ワンハリは俳優ものだし、ノスタルジーだし、案外強いのでは。
・最初は1917と思ってたけど、ワンハリの気分になってきた。
・ワンハリです。監督賞レースでやや弱めなのが不安材料。

監督: ポン・ジュノ(『パラサイト』)

・フィリップス以外だったら誰に行ってもおかしくない。監督組合賞にもノミネートされていないのでまずフィリップスだけはない。
・もういいでしょ感が強いスコセッシだけれど、老人方から票が集まる可能性はある。でもさすがに『ディパーテッド』でさんざん「やっと取れてよかったね」やったしな……
タランティーノは個人的に全然アリな選択肢だと思うのだけれど、これまでの賞レース結果を見ると賭けの対象としてはスコセッシより弱い。混戦の年は作品賞と監督賞でバラける傾向もあるし。
・ポンジュノは批評家賞ばっかもらってるけど、アカデミー予想において批評家賞ほど信用ならないものはないしな……でも国籍を抜くと強いのは確か。
・メンデスは相対的に固め(全編ワンカットものはみんな好きだし)だと思うのだけれど、面白味がないんですよね。
・ノミネーション全体が too white であるという批判を浴びまくっているので、エクスキューズつけるならここというのもある。
・ほら、ちょっと前までメキシコの監督たちが続けて監督賞もらってたよね的な。そこでメッセージ出すんですよね、アカデミーは。
ポン・ジュノ、メンデス、タランティーノの順かな。

主演女優: レネー・ゼルヴィガー(『ジュディ』)

・前哨戦で食らいついていたルピタ・ニョンゴ(『アス』)が落ちたため、ゼルヴィガーかスカーレット・ヨハンソンの二択。
・近年の受賞者はほぼGG賞受賞者とかぶってるため、ドラマ部門でGGを獲ったゼルヴィガー優位と見た(ミュージカル・コメディ部門を受賞したオークワフィーナは既に落選)

主演男優: ホアキン・フェニックス(『ジョーカー』)

・事実上、ホアキンとカイロ・レンの一騎討ち。
・ここ十年はGG賞のドラマ部門の男優賞とオスカーの主演男優賞とで一致している。
・主演女優賞もだけど、どこまでネトフリが『マリッジ・ストーリー』を本気でプロモしてくれるのか、やや疑問。

助演男優: ブラッド・ピット(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)

・なんの面白味もない顔ぶれだけれど、ここは固いと思う。あとはブラピがどれだけ嫌われていないかの勝負。
・対抗はジョー・ペシ。その次がトム・ハンクス
助演女優賞よりはオッズが変動しやすいか。

助演女優: ローラ・ダーン(『マリッジ・ストーリー』)

・やはりここも固い。GG獲っている人が強い。
・最大の対抗馬だったジェニファー・ロペスがまさかの候補落ちだったため、フローレンス・ピューがダーンのライバル筆頭に。人気投票となるとペーペーのピューは不利か。まだキャシー・ベイツのが勝てそう。

長編アニメ: 『トイ・ストーリー4』

・混戦。どの候補作も得票的にポジティブな要素よりネガティブな要素のほうが強い。
・GG取ったとはいえ、伝統的にストップモーションが弱いオスカーで『ミッシング・リンク』がどこまで行けるか。ライカにそろそろ取らせてあげたい気持ちはありそう。
・なんだかんだでトイストーリーは強いだろうと思ってたけど、ピクサーの割にここまで圧倒的という感はない。3で獲ったとはいえ、続編ものに厳しいオスカーの傾向も不安材料。
・ヒクドラも"格"かあ? という疑問が。三作連続ノミネートに有終の美を飾らせたいという業界の温情が働く見込みはないでもない。
・『クラウス』? なんかの冗談だろ?
・前哨戦だけ見ると『失くした体』も悪くないチョイスなのだが、オスカーは基本的に外国語アニメ、というか大作以外に良い顔しないしな……。
・というわけで、最後には知名度が勝つと見込んでトイ・ストーリー4。
・こんだけ盛り上がらないメンツに一作も割り込めなかった日本アニメ映画のロビイングの脆弱さは深刻。
新海誠がアカデミーでここまで弱いとは。嫌われているのか?

撮影賞: ロジャー・ディーキンス(『1917』)

・撮影監督協会賞までは予断をゆるさないが、現時点ではディーキンスでまず間違い無い。長回し=勝ち。
・ワンハリの撮影とかふつうに好きなんだけどな。

衣装デザイン:アリアンヌ・フィリップス(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)

・本来なら『ルディ・レイ・ムーア』が獲るべき部門だとおもうが……
・若草も強そうに見えるんだけど、組合賞にノミネートされているのがワンハリとジョジョだけというのが気になる。
ジョジョはスカジョのお召替え勝負、ワンハリは……でも印象に残るってブラピのすっぽんぽんなんだよね。

長編ドキュメンタリー: 『娘は戦場で生まれた』

・アポロ11候補落ちが意外だった。
・SXSWの娘戦、サンダンスの honeyland、トロントのthe cave 、ネトフリのアメファクと消えゆく民主主義、と各自相応の看板をひっさげてきていてアツい。
・シリアものが二本。
アメリカ人に直結する題材を扱ってるのは『アメリカン・ファクトリー』くらいか。大統領選を睨んでいるのも強み。
・シリアものの票がバラけるかな、と思ったけれど、やはり娘戦の前評判の高さには抗いがたい。

短編ドキュメンタリー:LEARNING TO SKATEBOARD IN A WARZONE (IF YOU'RE A GIRL)

・タイトルがいいなと思いました。

編集:マイケル・マクスカー&アンドリュー・バックランド(『フォード vs フェラーリ』)

・『アイリッシュマン』とせめぎ合っている。わかりやすく評価されそうなのは『アイリッシュマン』のほうな気もするけど。
・まともに勝負すれば『パラサイト』が勝つと思うんですが、ここはアメリカです。

外国語映画: 『パラサイト』

・むしろこれ以外に何があるってくらい固い。今年一番の鉄板部門。作品賞と同時ノミネートされて外国語映画賞逃した作品ってたぶんなかったとおもうし。
・Portrait of a Lady on Fire や pain and glory が候補落ちしたのはちょっと驚いた。ポーランド勢の強さがあらためて印象づけられた格好。

メイクアップ&ヘアスタイリング:ジェレミー・ウッドヘッド(『ジュディ』)

・誰から見てもすさまじい仕事か、さもなくば実在著名人の再現度によって評価されやすい傾向にある。
・ので、ジュディ・ガーランドのジュディか。

作曲: ヒドゥナ・グドゥナトッティル(『ジョーカー』)

・前哨戦の結果があまり当てにできないカテゴリだけれど、作詞家作曲家協会賞を獲ったこのヨハン・ヨハンソンの秘蔵っ子はイケるのではないか。
・というか、他が「おまえら何度も貰ったろ」すぎる。

歌曲: (i'm gonna) love me again(『ロケットマン』)

・アナ雪のキャッチーさよりは老人のノスタルジーが勝つかな、と思って。

美術: バーバラ・リン&ナンシー・ヘイ(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)

・前哨戦実績からいうと圧倒的にワンアポ。

短編アニメ: hair love

・「Dcera / The Daughter」(現状予告編のみ)はストップモーションなのに実写のようなアップの多用とスピード感のある演出がかなり異色。
・「Hair Love」(ソニー・ピクチャーズの公式で全編視聴可能)は黒人家庭のお父さんが娘のくせ毛をセットするために奮闘するお話。アートによりがちなカテゴリにあって、ストレートに感動的でわかりやすい。
・「Kitbull」(ピクサー公式から全編視聴可能)は、野良の仔猫が人間に飼われているピットブルと交流を温める、アニマル感動物語。hair love より普遍性のあるわかりやすさを持つ分、逆にドメスティックなオスカーでは不利か。3Dアニメの御本尊ピクサーで作られた2Dアニメという異色作。
・「Memorable」(予告編のみ)は紙粘土で刻まれた皺が印象的なアヌシーグランプリ作品。予告編の印象ではフランス人だな〜〜〜という感じ。
・「SISTER」(作者の公式から全編視聴可能)は、中国人の少年に妹ができる物語。中国語。フェルトが織りなすとぼけた表情とマジックリアリズムな表現が魅力。ただテーマ的にはよくあるのでそこまで強くないか。
ストップモーションが過半を占めているけれど、それぞれ選んでいる素材が異なるのがおもしろい。
・賞的には、アメリカ独特の題材を扱ってお話的にも感動的な Hair Love が強いのでは。なにせバスケ選手の詩のアニメ化が獲るような賞だし。
・個人的にはDceraが観たい。

短編実写:A Ssiter

・トレイラーをざっと見たかんじ、ワンシチュエーションものの A Sister がわかりやすいかな、と思った。
・Nefta Football Club, The Neigbor’s Window, Brotherhood の三作は公式でネットにアップされている。時間があったら観ます。

録音:マーク・テイラー&スチュワート・ウィルソン(『1917』)

・わからん。音楽ものと戦争ものが強い分野なので、1917有利か。あるいはオーガニックさでFFかな。宇宙ものとの相性も悪くない分野だし、アド・アストラに獲ってほしいけれど。

音響編集:オリヴァー・ターニー&レイチェル・テイト(『1917』)

・同上。録音よりはSF的な作品が若干評価されやすいので、スター・ウォーズもありかなと思う。
・録音と音響で合わせておけば、どっちかは当たるだろうという算段。

視覚効果: ロバート・レガトー他(『ライオンキング』)

インパクトという点ではエンドゲームやスターウォーズ凌いでたでしょう。

脚本: クエンティン・タランティーノ(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)

・ワンハリとマリッジとパラサイトで割れている模様。個人的にはせめてここくらいはマリッジに獲ってもらいたいけれど、レース的にはワンハリが頭ひとつ抜けてる。
・パラサイトはわかりやすく脚本家好きする映画でもあるので、ふつうにあり得るライン。作品賞よりは言語の壁は低いのでは。

脚色: スティーヴン・ジリアン(『アイリッシュマン』)

・ここも結構割れてる。
・「次は頑張ってください(私たちはちゃんと見てますよ)賞」的な脚本・脚色賞の性格にハマるのはグレタ・ガーヴィグなんだけど。ジェンダー公平の観点(オスカーにとっての言い訳)からしても。
・人情でいえば、ここでジョジョラビットにあげときたいという人も多そう。
アイリッシュマンはチョイスとしては面白みに欠けているけれど、たぶんこの中では一番技巧的なので、脚本家好きはするかな、といった点で推します。


複数部門受賞作品予想まとめ

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(作品賞、助演男優賞、衣装デザイン賞、美術賞脚本賞):5部門
『1917』(撮影賞、録音賞、音響編集賞):3部門
『パラサイト』(監督賞、外国語映画賞):2部門
『ジュディ』(主演女優賞、メイク&ヘア):2部門
『ジョーカー』(主演男優賞、作曲賞):2部門

・やはり俳優賞がバラけてしまうと、なにか一つの作品がスウィープする事態は起こりにくい。
・主演賞でフロントランナー張っている『ジュディ』も『ジョーカー』も作品の評価自体はそこまで高くない。去年の『ボヘミアン・ラプソディ』同様、混戦を引き起こす原因。
・『ジョジョ・ラビット』や『若草物語』の暴れ具合次第では完全に予想が崩壊してしまう。美術や編集部門での『パラサイト』もどう動くか予想がつかない。

*1:ボノはそんなこと言ってません