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『おそ松さん』2期OP曲=『スター・ウォーズ:最後のジェダイ』説

前回までのあらすじ

 引っ越しの準備で映画を観ている時間がない。



君子危うくも最後のジェダイ

 「君氏危うくも近うよれ」を朝から晩まで聴いています。『おそ松さん』二期のオープニング・ソングです。この曲を十回、二十回、三百四十二回、千九十六回、とヘビイにリピートしていくうち、宇宙に関する真理を少しずつ悟っていきます。
 啓示を得ます。この曲はわたしたちになにかを伝えようとしている。全貌までは垣間見えません。しかし、そこでは『おそ松さん』というアニメについて以上のことが語られている。わたしたちはそう感じる。「それ」は何か。



【MV】A応P「君氏危うくも近うよれ」Short Ver.



 こうして、十二月十五日が来ます。『スター・ウォーズ』のエピソード8『最後のジェダイ』の公開日です。
 その日、IMAXスクリーンの前でわたしたちは直感するのです。
『おそまつさん』のOPソングが伝えたかったのは「これ」だったのだと。
 『スター・ウォーズ:フォースの覚醒』から『最後のジェダイ』に至るまでの物語こそ、歌詞に込められたメッセージだったのだと。
 なぜJJエイブラムスが日本の深夜アニメのOPにスター・ウォーズの物語を忍ばせようとしたのか、その意図は不明ですけれども、まあわたしたちがJJの意図を理解したためしなどない。


 ただ在るものは在るのです。


 稲妻によって石板に刻まれた十個の戒律のように、片田舎の駅に建つ地元マイナー偉人の銅像に付せられた短歌碑のように、なぜかは知らないけどそこに歌われている。そういうものです。


 と、いうわけで。
 これから「君氏危うくも近うよれ」に隠されたSW秘話を解き明かしていきましょう。
 と思いましたが、歌詞を全文引用するとどうも怒られるらしい。といわけで、元の歌を独自に翻訳した文をテキストとして用いたいと思います。
 もっとも世の中には翻訳権というものもあるようです。『平家物語』や『源氏物語』といった古典が矢継ぎ早に「現代語訳」されている現状的にはどうやら日本語を別の日本語に移し替えるのも「翻訳」であるとみなされる危険もある。ダメじゃん。
 というわけで、以下の引用文は『おそ松さん』二期のOPとはなんの関係もない、完全創作による詩です。そういうことにしておいてください。そういうことにしてしまったらそもそもの企画意図が破綻してしまう感じもしますが、破綻なら最初からだ、なにもかも。 


 以下『スター・ウォーズ:最後のジェダイ』のネタバレが含まれます。あと、同作についての感想その他ではありません。
 

1番の歌詞解説〜『フォースの覚醒』制作秘話〜

1番の歌詞は主にエピソード7『フォースの覚醒』の成功が歌われています。『プロジェクトX』みたいなノリなので、JJエイブラムス的には歌手に中島みゆきを想定したものとされています。

すいません、通してください
本心から言ってるのではないのですが……
でもまあ、そういうものでしょう?
午前六時に愛想をふりまけと?

解説:ファンからの大反対を受けつつSW新作製作権を得たディズニー。「六つ」のエピソードのファンたちを納得させ、新時代の幕開け(明け)を呼ぶ新作となれるのか? という出だし。


迷子になってもむしろ絶好調です。
自慢じゃないんですが
負ける気がしませんね
こっちには松竹梅がございますので

解説:新三部作の舵取りを任されたプロデューサーのキャスリーン・ケネディ、ならびにJ・J・エイブラムスはさまざまな試行錯誤をおこなったに違いない。
 しかし、それは行き当たりばったりの手探りによるものではなく、ディズニー資本の協力なバックアップと豊富な人材、そしてSWへの熱意(まさに松竹梅である)に裏打ちされたアドベンチャーであったので、成功を疑うものはいなかった。


酔ってきたようです あなたという酒に酔ったのですよ?
「最初の一撃で決めましょう。砲弾よーい」
あとは待つだけです

解説:JJらの熱意は現場へと伝染し、チーム一丸となって”開幕全力一発”、まさに乾坤一擲の大勝負である『フォースの覚醒』を完成させた。
 満腔の確信のもと、彼らは最初の吉報を待ったのである。


 ふわふわしたファジーさはなるべく抑えました
 顔をあわせて透き通っていつもどおり
 毎度毎度総集編みたいなものですね
 あたりまえですが

解説:JJはいつものJJ演出(フレアの多用とか)を封印し、『フォースの覚醒』では旧作のキャストを揃えて馴染みのあるプロットで透明な演出に徹した。
その手法が「まるでエピソード4の焼き直し」などとも非難されたが、その総集編感がいいんじゃないか。いうたら、SW映画って、てんこもりすぎて毎回総集編みたいなもんでしょ? と主張。


うるわしの貴方に会いたいです
でも貴方は言います「危うきには酔わず」
なんとなれば難易度エクストリーム
もういっかい やらなきゃですよね

解説:プロデューサーと監督の一人二役では自らの手に余ると判断したJJはエピソード8以降の監督を探す。しかし、監督候補たちはプロジェクトのあまりの無謀さ、責任の重大さに尻込みしてしまう。
 あくまでクオリティを求めてやまないJJ。無理を承知でエピソード8も自分がやるか……? そんな思いつめる彼の前に現れたのが――。


常時ぶっ飛んでいます
(回転)翼なんかなくても飛べます
「いつからそんなことできるように?」なんて聞かないで
いつだって最後までフルパワーです

解説:ライアン・ジョンソン。『LOOPER』という「トン」でもない名作SF映画を撮ったこの若手にJJはプロジェクトを託します。
 この人選にファンはもとより業界人たちも大ショック。低予算の長編を三作しか撮ってない若造にこんなビッグバジェット大作を任せるなんて……「いつからそんな」実力を?
 各所からあがる疑問の声を「ぷろぺら」のように受け流し、全力小僧ライアンは我が道をつきすすんだ。そうして、『最後のジェダイ』を完成させた。


二番〜『最後のジェダイ』の内容解説〜

ここから二番。『最後のジェダイ』の内容を歌った歌詞になります。同作の重大なネタバレが含まれます。

貴方の言うとおりです
本心ではありません
でもまあ、そういうものじゃないですか
午後六時にまたよろしくお願いします

解説:『最後のジェダイ』の台本を読んだマーク・ハミルは演じることに気乗りしなかったらしいが、映画とはそういうものだと割り切ったに違いない。彼もまた、「六つ」の旧い作品を「愛顧」する人々へ別れを告げるときであることを認識していたのであろう。


肩の力がぬけてていいかんじじゃないですか
悪くないですよ
悪くないですけど自信を持てなくて……
松竹梅があるはずでは?

解説:ルーク・スカイウォーカーのもとで修行に励むレイを描写している。レイの圧倒的才能を前にしてもなかなか師匠になってくれいルーク。切迫した状況下で松竹梅(ここではフォースのことです)を求めるレイに対し、彼は「自信ないの」になってしまった過去を「実はね」と明かすのだった。

揺れている貴方も素敵
弾幕を調整するので、弾込めはすこし待ってください」
あとは待つだけです

解説:解釈が分かれるパートであるが、一般的にはファースト・オーダーの驍将ハックス将軍を歌った部分とされる。いつも上司やカイロ・レンにしぼられて地に突っ伏したり首しめられたりでぐらぐらしてる彼も、戦場では一軍を率いる指揮官。
 冷静沈着な将である彼は敗走する反乱軍の偽計を見抜き、「弾幕」の方向を「調整」するのである。すくなくとも、ファースト・オーダーの戦史ではそう記述されていることだろう。


大志ある少年よ! 貴方は想像以上に
ぼんやりしてて掴みどころがないですね
全速力で走って栄光に手を伸ばして
それがチャレンジというものです

解説:言うまでもなく、カイロ・レンくんのことを歌った箇所。レンくんはエピソード7から立ち位置が「曖昧」でどこに「ふち」があるか見えないキャラである。
エピソード8は、そんな彼が「超Q」で「駆け上が」る「挑戦」を行う野望の物語でもある。


早く大人になりたいあまりに
危険なことを他に押しつけてしまってすいません
でもわたしにも信義があります
話し合えば、わかってもらえるはずです

解説:新キャラ・ローズのパートであろうと推測される。反乱軍の一員として早く「大人になりたい」若き整備兵は、英雄フィンと手を組んでファースト・オーダーの追撃を止めるある秘密作戦に参加する。
そのために「危うきを任せ」られる人物を探すが、やっと見つけたその人に参加報酬として彼女の大切なアクセサリーを要求される。しかし、まあ意外と話せばわかってくれるわけである。


一日中
「突撃だ!」
と心臓を早鐘のように鳴らします
あまりに高くて硬くて震えがとまらない
会敵したら、ジャミングでOK

解説:ローズとフィンがある星で繰り広げるドタバタを活写している。たぶん。


「宇宙の果てまでだって飛びますとも」
膨れ上がるエントロピーを夢で除きましょう
するといつかはお望み通りに反転するはずです

解説:当初はレイア姫「宙の果てまでだってトンでるぜー!」なシーンのことと解釈されてきたが、近年の研究ではむしろレンくんとのバトル前後におけるルークの心情を表したものという解釈が有力。


 ふわふわしたファジーさはなるべく抑えました
 顔をあわせて透き通っていつもどおり
 毎度毎度総集編みたいなものですね
 あたりまえですが

解説:一番の繰り返し。つまり、エピ8もエピ7と同じ志のもとで作られたということ。わりにジョンソン色が出ているけれど。


大志ある少年よ! 貴方は想像以上に
ぼんやりしてて掴みどころがないですね ぱやぱや
毎回リトライしてばかり
そういうものだと悟りました

解説:ここの「少年!」は前述のレンくんではなく、ルークのこと。彼がラストバトルにおいて「曖昧 透明でふちのなし」的な「ぱやぱや」存在になってしまったことは観賞済みの諸兄の知るところである。
 ルークの遺志を継ぎ、ファースト・オーダーに「サイチョーセン」する反乱軍。それはエピソード9に対する製作陣の心意気ともシンクロしている。心あるものならばここで涙が溢れてくるはず。


常時ぶっ飛んでいます
(回転)翼なんかなくても飛べます
「いつからそんなことできるように?」なんて聞かないで
いつだって最後までフルパワーです

解説:レイア姫のあのシーンである。
「えっ、フォースっていつからそんなことが?」などとは聞かないでほしい。キャリー・フィッシャーは常に「気が済むまで絶好調」であった。R.I.P.


何事も完璧なことなんてありえないんですよ
お相撲さん*1

解説:エピソード8の出来に関しては、いろいろ文句もあるだろうが、誰もが納得できる、完全な続編などありえないんだよ、というJJからのファンへの伝言……
 かと思いきや、最後の最後で驚天動地の反転が起きる。
 実はこの歌を捧げる対象はSWファンでなく、力士だったのだ。
 ここからは、現在の日本を揺るがす角界の騒動を憂慮するJJの心情がうかがえる。あるいはこれこそまさに彼が深夜アニメにSWからのメッセージを託した動機なのかもしれない。スモウ・レスラーたちよ、まずは落ち着いてくれ、と。とりあえず俺たちのSW新作を観てほしい。そして、世代交代と相互理解の重要性について思いを馳せてほしい。そうJJは言いたかったのだ。
 JJの視野の広さと慈愛の深さには感服するばかりである。
 がんばれ、JJ.
 銀河と土俵に平和がもたらされるその日まで!



君氏危うくも近うよれ

君氏危うくも近うよれ

*1:各種歌詞サイトでは「おそまつさん!」と表記されているが、どう聴いても「お相撲さん!」としか聞き取れない