名馬であれば馬のうち

読書、映画、その他。


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7月の読書まとめ

59冊
ジャンル別で五選

【SF】

氷

『ロリータ』のうらかえしといいましょうか、逃げる少女と追う男。文体が氷と戦争で覆われた終末世界にマッチしててとてもいい。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

やはり表題作を推したい。退屈な講義のあとに明かされる物語構造、それはとても探偵小説的なものです。

11 eleven

11 eleven

はじめに言っとくと、どの短編も高水準。
年間傑作選にもピカップされた「五色の舟」はそんなあんまり好きじゃなくて、どれがベストかといえば「クラーケン」。それと同率で「土の枕」。

三津田信三京極夏彦が戦後直後あたりに時代を持っていきたがるのは、間違いなく魔術が解けてないない、ぬめりとした湿気のある幻想というのをイメージとして時代に仮託しているからでしょう。そこにあるのは一種のオリエンタリズムで、現代人の単線的な傲慢さが透けるようであまり僕は好きな趣味じゃない。それに、日本の小説家が外国を舞台にしても本国人の手になる作品にくらべて(出来のよしあしはべつにして)醤油臭くなってしまうように、今の時代の人があの時代を舞台にしたミステリ書いたって、狩久や宮龍や夢久のナチュナルボーンな質感には勝てるはずはないのだ。でも、そのへんはたぶん、今の人たちもわかってて、今の時代にしか書けない視点を持った別種の作品を作ろうと頑張っている。悪趣味だろうがなんだろうが、おもしろい小説は、姑息な詐術なんか突き抜けて、どうしようもなくおもしろいのであって、指ぬきグローブや刀城言耶やヤスミンは間違いなくそのへん十全にクリアしている。
可能性。可能性をもった作家は愉快だ。
ヤスミンは単なる幻想趣味やノスタルジーの方便としての「昭和」を書かない。可能性として、時代を使っている。SFを書いている。ミステリ作家で、ある。
テルミン嬢」に「もうちょっと鮮やかに塗れただろう」と文句つけたくなるのも、もちろんヤスミンの可能性を信じているから。

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

混沌のワイドスクリーン・バロック。ディック長編にしては、まだわかりやすい。

ぼくのゾンビ・ライフ

ぼくのゾンビ・ライフ

公民権運動をはじめとした「エスニシティ」「マイノリティ」の歴史を背負ったアメリカでないと差別文学、あるいはカーストちゃぶ台返し一発逆転としてのゾンビ物語は書けなくて、日本だと打ち倒すべきピラミッドが会社だったり学校だったりすごい狭い範囲になっちゃうから『オブザデッド・マニアクス』のような自意識ですっぽり覆われたウィンプの妄想にしかなりえなくて、そこが限界なのかとも思う。
ただ、もちろん作者自身の技倆の問題でもあって、その点ブラウンは「その先」を行って実にユニークなゾンビ小説を完成させた。

【ミステリ】
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夜よ鼠たちのために (新潮文庫)

夜よ鼠たちのために (新潮文庫)

四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫)

四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫)

【ネコ】

猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫)

猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫)

【漫画】
47冊

フランケン・ふらん 1 (チャンピオンREDコミックス)

フランケン・ふらん 1 (チャンピオンREDコミックス)

さんかれあ』のトラウマから表紙で「どうせどうしようもない、萌え漫画なんだろ……」とふんでたら意外や意外のウィットの効いたフリークス連作短編集でした。ギャグ漫画は評価基準がシンプルでいい。笑えるか、笑えないかでキメられるから。
で、昔から「笑えた」ギャグ漫画家が最近どうも寂しい。
『まかまか』おわっちゃうらしいし、中村光も最近パンチ不足だし、柴田亜美にいたってはどこにいるのやら。ギャグ漫画で笑えなくなるっていうのは大人になった証かしら、と思ってところで『Fellows!』ではじまったのが『ヒナまつり』。オススメです。
Miss Don't Touch Me

Miss Don't Touch Me

星を継ぐもの 1 (ビッグコミックススペシャル)

星を継ぐもの 1 (ビッグコミックススペシャル)

ストレニュアス・ライフ (ビームコミックス)

ストレニュアス・ライフ (ビームコミックス)