名馬であれば馬のうち

読書、映画、その他。


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映画

クリシェじゃないのよ。ーートレイ・エドワード・シュルツ監督『クリシャ』について

(Krisha, トレイ・エドワード・シュルツ監督、2015年、米) 『クリシャ』について Krisha (2015) Official Trailer 最近の、あるいはむかしからそうだったのかもしれないけれど、アメリカのインディー映画は一幕目で出した銃を三幕目で撃つより、銃がなぜそ…

原作をそのままやってもやれなくて。――リメイク版『ライオン・キング』について

(The Lion King, ジョン・ファヴロー監督、2019年、米) ふだんはあんまり愚痴っぽい感想を書かないようにしているんですが、今回だけは思い入れの強さが段違いなので許してください。 原作厨モードなので「オリジナル版」との比較ばかりとなっております。…

東京になる、あるいは少年は如何にして「大丈夫」になったか?――『天気の子』について

注意:本記事は新海誠『天気の子』の重大なネタバレを含みます。(『天気の子』、weathering with you、新海誠監督、日本、2019年) 彼はその海岸で、ひとにぎりの砂をすくう。それが「世界」だ。もちろんそれが現実に広大さをたずさえた世界であるはずがな…

2019年上半期に観た新作映画ベスト20

子供の頃に観たあの映画 あの夢と希望 現実なんて信じないで 私は映画が好き weyes blood, "Movies" こうして上半期の映画ベストをきめるのも死んだ魚を錐でついたときに起こるけいれんじみてきておりますですが、でもまあ、いってみればブログの記事なんて…

魔法の羽根としてのダンボーー実写リメイク版『ダンボ』に関する短い感想

「ダンボ」日本版予告編 ティム・バートン曰く「歪んだウォルト・ディズニー」*1であるところの興行師ヴァンデヴァー(マイケル・キートン)が自身の経営する遊園地〈夢の国〉から偽物のフリークスたち*2を叩き出す。ダンボの属していた弱小サーカスから移籍…

Youtube 時代のカルトの作り方ーー『ビハインド・ザ・カーブ 〜地球平面説〜』

(Behind the Curve、ダニエル・J・クラーク監督、米、2018) 中世の人々は、地球は平らだと信じていた。少なくともそれは自分たちの感覚という証拠に支えられていた。一方、われわれは地球は丸いと信じている。そのような奇妙な考えの物理的根拠を理解して…

映画かもしれない悪夢の技術ーーリメイク版『サスペリア』について

(『サスペリア』、Suspiria、ルカ・グァダニーノ監督、2018、米) ネタバレあり。 夢は映画においてもっとも描くのが難しいもののひとつです。なぜなら、映画はすでにして夢なのですから。 ーールカ・グァダニーノ*1 夢を調べることは特別な困難を伴います…

『フロントランナー』:目をそらし続ける私たちと、ジェイソン・ライトマンが救おうとした女性について

ジェイソン・ライトマン: 私は複雑な人物が好きです。その欠陥がどう表れてくるかにも興味があります。 https://www.reviewstl.com/interview-director-jason-reitman-front-runner-1121/ ヒュー・ジャックマン主演!映画『フロントランナー』予告 人は誰し…

2018年の新作映画ベスト30+α

風邪引いててつらいので簡単にいきます。proxia.hateblo.jp2015年に観た新作映画ベスト20とその他 - 名馬であれば馬のうち 2016年に観た新作映画ベスト25とその他 - 名馬であれば馬のうち 2017年の映画ベスト20選と+αと犬とドラマとアニメと - 名馬であれば…

第91回アカデミー賞の受賞予想全部門

予想の季節です。 ほんとうは各ギルドの授賞が出揃ってからやったほうが当たりやすいんでしょうけど、 そこまで固まってしまうとつまらないので。 作品賞 『ブラックパンサー』 『ブラック・クランズマン』 『ボヘミアン・ラプソディ』 『女王陛下のお気に入…

より深い『シュガー・ラッシュ:オンライン』理解のためのインターネット

あなたはより深い『シュガー・ラッシュ:オンライン』理解に至りたいと思ったことはありませんか? わたしはあります。 わたしはより深い『シュガー・ラッシュ:オンライン』理解に至りたいと思ったので至るための文章を書こうとしました。それを読んであな…

犬映画探訪――『禁じられた遊び』、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』、『遊星からの物体X』

マイ・ドッグ・デイズ・イン・キョート なんの因果かわかりませんが、今現在京都では示しわせたように各映画館がイヌ映画の古典作を上映しています。 京都シネマでは『禁じられた遊び』、河原町のMOVIXでは『遊星からの物体X』、二条のTOHOでは『マイライフ…

I KILL GIANTS ――『バーバラと心の巨人』

ピュアな魂があまりにもハードすぎる現実に耐えきれず、膜を隔てて世界と接することがある。『ベイビー・ドライバー』の場合、その膜とは音楽だった。そして、『バーバラと心の巨人』では巨人(ジャイアンツ)*1だった。 映画『バーバラと心の巨人』予告編 …

インディーゲームと映画の(雑な)関係――Disasterpeace、デイヴィッド・オライリー、アナプルナ

例によって動画リンクが多いので重いですが。 デイヴィッド・ロバート・ミッチェルと Disasterpeace 『イット・フォローズ』監督の新作『アンダー・ザ・シルバーレイク』日本版予告編 めずらしく音楽ネタから入ります(『ザ・プレデター』で『don't starve』…

ホラー映画における奪われやすい対象としての子どもたち――『クワイエット・プレイス』

微妙にネタバレ注意 「大きく存在する寓意は、いつかは子どもたちを外の暗く深い森へと出さなければいけないときがくる、ということだ。この映画で家族を襲う“何か”のようなものが外の世界にはいるものだ」 「クワイエット・プレイス」に隠された裏テーマと…

2018年に公開された Netflix オリジナルのSF映画全レビュー

遊星からの物体 NetfliX 2018年から「ネットフリックス・オリジナル」を冠した映画・ドラマが爆発的に増えましたね。すげえ増えましたね。ばかみたいに増えましたよ。年ごとに倍々になってなるんじゃないか? って勢い。https://en.wikipedia.org/wiki/List_…

誰が歴史と物語を描くのかーー『スターリンの葬送狂騒曲』

(The Death of Stalin、英・仏、ベルギー、アルマンド・イアヌッチ監督) ロシアで上映禁止のブラックコメディー『スターリンの葬送狂騒曲』予告編公開 - シネマトゥデイ 北野武の『アウトレイジ』シリーズにおける独特の緊張感、たとえばヤクザたちがあま…

2018年上半期の新作映画の思い出とベスト20作

対象作品数はだいたい90ちょっと。 頭がぼんやりするのでコメントは短く。 上半期ベスト20 1『ファントム・スレッド』(ポール・トーマス・アンダーソン監督、米) 2『リズと青い鳥』(山田尚子監督、日) 3『パディントン2』(ポール・キング監督、英…

まぼろしの糸による意図のまぼろし:『ファントム・スレッド』について

(Phantom Thread、ポール・トーマス・アンダーソン監督、2017年、米) (本記事はあらすじをほぼすべて割っています) 神へと捧げられた七つの編み込みのある、金髪と赤毛の重い髪の房が彼女の左手に握られているが、その髪にはそれまで一度もかみそりが当…

ウェス・アンダーソンにおける野生動物たち:『ファンタスティック Mr.FOX』(『犬ヶ島』について・その2)

proxia.hateblo.jp 前回書いた記事がその翌々日発売の『ユリイカ』のウェス・アンダーソン特集号に載っていた一部原稿とかぶり、しかも予告した野生の話も論者のみなさんが結構触れてられていたので、そりゃそうだよなあ、などと思いつつ、やる気は減衰し、…

なぜ『犬ヶ島』はつまらないのか。:『犬ヶ島』について・その1

野田洋次郎も参加!ウェス・アンダーソン最新作『犬ヶ島』日本オリジナル版予告 困ってしまってワンワンワワン、ワンワンワワン ――プロジェクトは犬ものをやろうという着想だったのですか? それとも最初からサムライ犬でやろうと? ウェス・アンダーソン:…

アメリカのピカレスクで多弁な娘たちの映画についてのメモ:『アイ、トーニャ』、『モリーズ・ゲーム』、『レイチェル:黒人と名乗った女性』

とりあえず、「この三作って似てるよね」という思いつきからはじまったものの、おもいついてから二週間経っても、あんまりうまく膨らみませんでした。後々のためのメモとしての残しておきます。 このところ、アメリカを騒がせたバッドアスな実在女性たちにつ…

尻のウサギが僕を呼んで:『ピーターラビット』の感想

(Peter Rabbit, ウィル・グラック監督、米、2018) (わりとネタバレを含みます) 映画『ピーターラビット』予告 野うさぎのふたつの身体 さあ、ご紹介しましょう。彼こそがピーターラビット。わたしたちの物語のヒーローです。 青いコートに身を包んだ若い…

二つの身体をもった心:『君の名前で僕を呼んで』について

もしだれかに、なぜ彼が好きだったのかと、しつこく聞かれても、「それは彼だったからだし、わたしだったから」と答える以外に、表現のしようがない気がしている。わたしの思惟を越えて、わたしが個別にいえることを越えて、そこには、なにかしら説明しがた…

アニメ作品の私選オールタイム・ベスト10

経緯と選定基準 『アニメ秘宝』発売をきっかけに、村長やななめちゃんさんに「おまえらのアニメベストを教えろ」と煽った結果、なんか自分も書かなきゃいけない空気になった。 私はアニメで育ったこどもではないのでアニメにはアニメを観るひとほど親しんで…

背中、背中を追うこと、そして孤独。:『リズと青い鳥』についての覚書その2

proxia.hateblo.jp 蹴りたくはない背中 真正面から抱き合う。なんと残酷な態勢なんだろうとおもいます。なぜなら、抱き合っている瞬間、ふたりの視線はすれ違わざるをえない。ハグは最高の愛情表現であると同時に、互いを最も遠くから見る(あるいは最も近い…

言葉の一致と感情の不一致について:『リズと青い鳥』についての覚書

(『リズと青い鳥』、山田尚子監督、2018年、日本。ネタバレを含みますが、そこまで詳細にはやらない) 山田:そうですね。物語は、ハッピーエンドがいいよ……。 ――劇場版パンフレットより 『リズと青い鳥』本予告 60秒ver. 『リズと青い鳥』を語ることの…

『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』の短いレビュー

(Killing of a Sacred Deer、ヨルゴス・ランティモス監督、英&アイルランド、2017) 開胸手術が施されている最中の心臓のアップではじまる。脈打つ心臓は脂肪に包まれていて、存外に白い。手術を終えたふたりの医師が、病院内の廊下を画面奥から向かっ…

「『スリー・ビルボード』は本当にフラナリー・オコナーなの?」を考える。

『善人はなかなかいない』を読む人 フラナリー・オコナー全短篇〈上〉 (ちくま文庫)作者: フラナリーオコナー,Flannery O'Connor,横山貞子出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2009/03/10メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (16件) …

一月の新作映画でおもしろかったやつ

『パディントン2』(ポール・キング監督、英)☆ 映画『パディントン2』予告篇 喋るクマ映画パート2.孤児が新しい家族に受け入れられるまでが1で、次いでご近所さんや友人といった共同体に受け入れられるまでが2。そういうストーリーを画で見せてくれる…