名馬であれば馬のうち

読書、映画、ゲーム、その他。


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ミステリ

ケネス・ブラナー版『オリエント急行殺人事件』について

『オリエント急行殺人事件』*1の映像化と呼ばれる作品は世界にだいたい五つくらいありまして、ここではシドニー・ルメット監督&アルバート・フィニー主演版(映画、1974年、以下「ルメット版」)、フィリップ・マーティン監督*2&デイヴィッド・スーシ…

ポスト・トゥルース時代のミステリと高井忍の歴史ミステリと。

0. これまでのあらすじ タイトル:「歴史ミステリの墓標にして道標――高井忍の歴史ミステリ作品群について」 1.略歴 2. 作風 3. 作品個別紹介 3-1.『漂流巌流島』――Like a Virgin. 3-2.『本能寺遊戯』――Girls Just Want to Have Fun. 3-3.『蜃気楼の王国』――…

今週のトップ5:『第三の魔弾』、『世紀の空売り』、『死刑台のエレベーター』、本格ミステリ大賞評論賞部門、『キャロル』、『Empire』

レオ・ペルッツ『第三の魔弾』 第三の魔弾 (白水Uブックス)作者: レオ・ペルッツ,前川道介出版社/メーカー: 白水社発売日: 2015/07/08メディア: 新書この商品を含むブログ (3件) を見る 呪いめいた予言の出てくる話が好きだ。たぶんシェイクスピアによって植…

エラリーベイベーは死んだのか

去年のいつだったかエラリー・クイーン『ギリシャ棺』の読書会を担当した。 そのとき資料として参照したフランシス・M・ネヴィンズによる伝記『エラリイ・クイーンの世界』の増補改訂版『Ellery Queen: The Art of Detection』の最後のほうに、「なぜアメリ…

藤田祥代『女性推理小説家の伝統 ―A. K. Green から P. D. James まで―』

金城学院大学大学院での博士論文。pdfはここから。 ネットで公開されているミステリ関連の論文はそれなりにあるけれど、博士論文まんまとはめずらしい。 内容はアン・キャサリン・グリーン、アガサ・クリスティー、ドロシー・L・セイヤーズ、P・D・ジェイム…

クリスチアナ・ブランド『薔薇の輪』

トラの子供は基本 cub である。 ブランドについて語るときわたしたちが語ること クリスチアナ・ブランドは英国黄金期本格の最右翼とかいいますか、本格オブ本格みたいなものを求められてはそういうもの以外を訳されると「こんなの私たちのブランドじゃない!…

J・P・マンシェット、野崎歓・訳『殺戮の天使』

淫蕩にして冷徹な女たちよ、この書物をあなたたちに捧げる。 p166 その女は自転車に乗ってやってくる。自転車でもバイクでもなく自転車なのが重要だ。 彼女は美貌と巧言を手管に街の上流階級へと潜りこみ、じっと息を潜める。揉め事を探す。誰かが誰かを殺し…

J・P・マンシェット、岡村孝一・訳『地下組織ナーダ』ハヤカワ・ポケット・ミステリ

「希望なんて持ってられやしねえ。そんな奴らのために俺は飲むんだよ。政治的に正しいとか下らねえとか、そんなことはかまっちゃいられねえ。ともかくな、歴史ってやつが俺たちみてえな人間をこさえたんだ。てえことは文明なんてもなあ、いずれにしろ滅びつ…

麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』新潮社

「やっぱり。叔父さんは優しいね。じゃあね。今日は本当にありがとう」 p.310 ・読書会の課題本。読書会では田舎って最悪だねトーク*1に花が咲いた。 ・これは最初に言っておいたほうがいいと思うのですが、麻耶信者です。考察とかしないタイプの。否定神学…